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FBN読書会始まりました!

text by / category : 本・文学

フランス文学やフランス映画がかつて持っていた影響力が衰え、それとともに文化的・歴史的な文脈を踏まえてきちんと文学や映画を論じるという、かつて当たり前であった作法が劣化してきているのではないか、と強い危機感を覚えた FBN の女性ライターたちが、FBN 読書会を立ち上げました!

今のところクローズドな会ですが、フランス文学やフランス映画に勢いがあり、私たちがリアルタイムで体験した1980年代から90年代にかけてのフランス文学やフランス映画を皮切りに、徐々に対象を広げていきたいと思っています。

扱うテーマは、ズバリ「愛と死」!多岐にわたり、しかも深いテーマなので、それを大前提としつつも、テーマを絞った読書会数回分を1クールとして開催し、それなりに決着をつけた上で、次のクールに進もうと目論んでいます。

まず第1クールのテーマは「日本のバブル期に当たる80年代から90年代前半のフランス文学を読みなおす」です。

そして私たちは記念すべき第1クール・第1回目のFBN読書会の課題本にエルヴェ・ギベールの『ぼくの命を救ってくれなかった友へ』を選びました。最近、映画『BPM ビート・パー・ミニット』でも取り上げられたように、当時のエイズを巡る人々の動向が、エイズ・パニックを知らない若い世代に新鮮な驚きを持って受けとめられているようです。

個人的には、エイズといえばクラウス・ノミやフーコーが亡くなった時の衝撃を思い出します。彼らがゲイであったことが衝撃の大きな原因でしたが、ギベールの『ぼくの命を救ってくれなかった友へ』が出版された時も、とてもセンセーショナルでした。今にして思うと不謹慎極まりないのですが、『汚れた血』の「愛の無いセックスで感染する病」というテーマに魅了されたように、そのタイトルにロマンティシズムを感じていたのだと思います。

2000年に入って、正確には1996年を境になのですが(注)、少なくとも先進国ではエイズは薬によって抑え込める病になり、急速に本や映画の中心テーマではなくなっていきました。

でも、あのエイズの衝撃を含め、80年代90年代という時代はどういう時代だったのか、文学や映画を通した検証作業を、あの時代をリアルタイムで過ごした世代がアラフォー、アラフィフとなった今、してみたくなったのです。あの時代に青春時代を過ごした人間がそれなりの時を経て改めて読み、見直せば、私たちが生きたこの一時代にどういう意味があったのかがわかるかもしれません。また、それはもしかしたら、年齢に関わらず今巷で盛んに推奨されている終活というものなのかもしれません。

FBN 読書会としては、議論しっ放しではなく読書会で出た意見をきちんとまとめ、書評として FBN のサイトにフィードバックしていく試みをしようと考えています。

現時点では女子会的様相を呈していますが、第1クールでの成果を踏まえた後、第2クールより参加してくださる方を広く募集していく予定です!ご興味のある方は、ぜひFBNお問い合わせフォームかTwitterまでお知らせください。読書会の開催場所は神戸、参加には課題本の読了が必須となります。(文責:武内)

注:ウイルス研究で名高い畑中正一氏によれば、「エイズの病気が発見されて15年、病原体が発見されて12年も経った1995年までは誰もエイズが治る可能性のある病気だとは正直思っていなかった。ところが1996年を境にして状況は一転した。」『エイズ発見から治療最前線まで』(1999)






posted date: 2018/Aug/05 / category: 本・文学
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