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満月PUB – 月を見上げることの意味

満月は月に一度、どこに住んでいても必ずやってくる。見上げれば皆、同じ月を見てるんだ。空は繋がっているんだ。

普段はどんなに忘れっぽくても、どんなに無関心でも、満月が来たら一緒に思い出しませんか?『今、一番考えなくてはならないことを。』 私も毎日を生きていくことだけで精いっぱいです。24時間考え続けることなんてできないでしょう。だから、月に一度。数時間だけでいいんです。関心を持ち続けましょうよ。 (ワインショップ FUJIMARU さんのブログからの抜粋)というコンセプトで始まった、満月 PUB。阪神淡路大震災を経験し、東日本大震災の惨状を目の当たりにしてきた FUJIMARU さん企画のメモリアル・イベントは今回で12回目を迎える。

普段月暦など見る機会はあまりないが、満月パブが始まってからは次の満月はいつだろうと月暦を調べるようになった。仕事のルーティーンを支配する1週間や1カ月のリズムと、満月がやって来るリズムはずれている。満月は気まぐれで、平日だろうがおかまいなしにやってくるのだが、今回はほぼ週末と言える、金曜日の夜だった。加えて、ずっと大阪のお店が舞台だったのが、今回は阪神間の芦屋に移動。芦屋のイタリアン Pur Pur さん、Vert さんとの共催であった。

阪神芦屋駅近くの閑静な住宅街の一角にあり、お店を見つけるのにあたりをぐるぐる周回してしまった。 5時半くらいに到着したが、まだお客さんはまばらで、音楽担当の米沢 @wineNadja さんがジョアン・ジルベルトの『3月の水』をかけていた。「このアルバムの録音レベル、低過ぎますよね」という話から始まり、お盆に見学に行ってきた奥能登のワイナリー計画の報告などをしながら、米澤さんセレクトのブルゴーニュの白をいただいた(写真1は米沢さんのブース:米沢さんには当ブログの『エルブリの秘密』の記事にご登場いただいた)。6時半を過ぎたころから、会社帰りのお客さんが増え、ずいぶん混んできたなと思ったら、あっというまに身動きがとれないほどに。しかしわいわいがやがやと人が集まってきて、夏の最後の日を共有する状況は悪くない。

料理はどれも美味しかったが、彩りも美しかったケークサレとクスクスのサラダの写真を撮り損ねた。Vert ではコンセプトにしたがって、お皿はリサイクル=再利用だったので、写真があまりきれいに撮れていない(写真2:もちろんコンセプトには賛同)。また特別粉のお好み焼きが供され、吹田のシュクレクールというパン屋さんも出店していた。このパンも美味しくて、小さなバゲットを Pur Pur でゲットした豚肉のリエットをたっぷり塗っていただいた。

シュクレクールの綴りを見ると、Sucré-Coeur (甘い心)となっていて、サクレクール Sacré-Coeur とひっかけてあるわけですね。Vert (緑)、Pur Pur (純粋)とお店の名前はフランス語尽くし。ワイン=フランスというわけではないが、ワインを楽しみ、ワインを生活の豊かさの中に位置づけるという意味では、確実にフランスや南欧のノリであろう。 今回は子連れのお客が多かった。米沢さんに聞いたら、こういう状況は初めてだそうだ。会場のお店がオーガニック雑貨屋&カフェで、そこの常連さんが多かったからかもしれない。

子育てでいっぱいいっぱいの時期は、多少迷惑をかけても楽しんじゃえという気持ちは、自分もそうだったからよくわかる。それを受け止めるキャパが少子化社会には欲しいものである。未来を支えてくれる子供がいないとワインを楽しむ場も華やぎ続けることはないのだから。とはいえ、親の方もそういう場所に気持ち良く参加するには、日ごろから最低の TPO をわきまえるように子供をしつけなくしゃいけない(自戒をこめて)。まあ、そういうときに限って子供は思い通りにふるまってくれず、カタストロフィックなことをやらかすのだが。

ふと、このイベントが満月 PUB であることを思い出し、店の外に出る。外に漂う空気はまだ生暖かいが、夏盛りの勢いはなく、夏の終わりを確実に感じさせる。屋内の光が闇に漏れ、かすかなざわめきが届いてくる。(写真3:Vert の外観)。 ふと大事なことを思い出すように、私たちは立ち止まって、月を見上げる。FUJIMARU さんの言葉のように、月を見上げるとはそういう行為だ。忙殺されているときは月を見ること忘れてしまう。月はそういう存在だ。311以前、私たちは月を見上げることを忘れてしまっていた。満月 PUB はそのことを思い出させてくれる。先回参加したのとき(GW の最終日)は満月などお構いなしだったが、今回はときどきふらりと人ごみを離れてひとりで月を見上げた。冷たい月の光を心の底まで染み渡らせて内省的な瞬間を抱く。これが正しい満月PUB の作法なのだ。

Discography

JOAO GILBERTO (Aguas de Marco)MoondawnMoonmadness (w/ bonus track)



posted date: 2012/Sep/05 / category: ライフスタイル食・レシピ
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当サイト の管理人。大学でフランス語を教えています。
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