フランスからグローバリゼーションとオルタナティブを考える新しいフランス学

湖畔のバカンス

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15年ぶりに知り合いのフランス人の夫婦にアヌシー湖を臨む山間の別荘に遊びに行った。パリからアヌシーまで TGV で3時間半。スイスとイタリアの国境の付近、サヴォワ地方に位置する。パリに着いたときはすでに夏が終わってしまかったかのような寒い日だったが、翌日から太陽がさんさんと降り注ぎ、絶好のバカンス日和になった。

パリ・リヨン駅で朝一の TGV に乗り込み、午前中にアヌシーに到着。SNCF の駅まで車で迎えにきてもらい、アヌシー湖湖畔を奥へ走ること30分。夏の家に着くと15年前の光景がクリアによみがえる。昼食がすでに準備されていて、最後のコーヒーまで2時間たっぷりかけて食事をとる。日が少し陰ったころ、芝生に敷いて寝そべるための大き目のバスタオルをリュックに詰め、市営のビーチまで降りていく。それが毎日の日課になる。ビーチは子供であふれかえっていて、子供の向けのアメニティも充実している。妊婦さんたちの大きなお腹もさりげなく目につく。以前はそんな印象がなかったが、今回自分の子供と一緒にきたので目の付けどころが変わったのだろう。何だか出産率ヨーロッパ No.1 の国の現実を見せつけられている気がした。(一方で煙草を吸っている母親や妊婦も多かったのも気になった。フランスの鳴り物入りの煙草規制は全く功を奏していない)。

お世話になった夫婦には子供が5人いて孫は全部で14人。確実に家族を増やしている。フランスでは子供が多いと、子供手当てが増えるだけでなく、美術館や鉄道の割引など、famille nombreuse (=子供が多い家族)割引も活用できる。もちろん子供手当てがあるからと言っても、すべてがまかなえるわけではない。経済的に2人目、3人目は無理と言っている友だちも多いので、フランスでもそれなりの経済的な余裕がなければ子供を何人も作れないのだろう。

うちの親に子供が3人いるが、孫はうちの子だけ。私自身、日本での子育て環境では子供1人が限界だった。私の周囲には孫の数が子供の数に及ばないどころか、ゼロか1人というケースも多い。今や若い世代においてはお金がないと結婚もできないし、子供も作れない状況にある。日本の子供手当は満額で支給されることが一度もないまま廃止されてしまった。昔多産は貧しさの象徴だったが、今は富裕層でなければ大家族を維持できないのだろう。 フランス人の夫婦の兄弟や親類もそろってこのあたりにセカンドハウスを持っていて、夏になると一族が結集する。孫たちが順々におじいちゃんとおばあちゃんの家に夏を過ごしに来る。また毎日、夕食の前のアペリティフの時間に親戚宅や友人宅を互いに訪問する。それに何度か同伴させてもらった。軽くビールやワインを飲みながら、手入れが行き届き、花に溢れた庭や、庭と切れ目なく続く、山と森と湖が織り成す風景を眺めながら歓談する。

重要なのは家族の物語をつむぎ、反復することだ。彼らはとても記憶力がいい。あのときは大変だったとか、あの子の名前は何て言ったっけなどと、回想し、繰り返し語ることで家族の物語を反芻する。そして絆を強固なものにしていく。1年に1度、親類一同が会するのだが、そのときのために一族のメンバーを全員リストアップし、名簿作りにいそしむ人物がいるのだそうだ。客間には Livre d’or =記念帳があり、滞在者が滞在の記録を残していく。私たちが90年代に2度訪れたときに拙いフランス語で書いた記録もちゃんと残っていた。 ちょうど着いた日、欧州株が大暴落した日で、サロンに置かれていたフィガロ紙の1面の見出しは「仏銀行ソシエテ・ジェネラルの株が30%下落」だった。「ソジェンは第二のリーマンか」という Twitter 上のうわさが株の連鎖的な売りを煽ったという記述もあった。そして今もギリシャのデフォルト危機が続き、EU加盟国の首脳たちはギリギリの選択を迫られている。フランスは階層間の流動性が低いが、一族が孫の代までこの水準を維持できるのかは別の問題だろう。フランスでも世代間格差が問題になり、すでに年金制度に手を入れる必要に迫られ、もはや優雅なバカンスを過ごせるのも一部の人々だ。子供や孫たちの行く末は心配のネタだ。

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