いつもならば夏に長めの旅行に行くのだけれど今回はなんやかやで行きそびれ、円安で全くお得感はないのだけれど厳冬の日本からとにかく脱出したい―。というので懐具合と日程とを照らし合わせた結果、日本から三時間で行ける隣国、台湾に行ってみることに。初台湾だし、余裕で五日間あるのだが台北一都市滞在ということで。台湾に詳しい友人とそのまた友人と一日合流するがその他は気ままな一人旅、どうなることやら。
寒いところから脱出。といっても常夏のタイやベトナムと違って暑いとまではいかない。それはわかっていた。わかってはいたけど、滞在中全て曇天に冷風、時には氷雨までーなんてことは予期していなかった。格安LCCのJetstar、荷物を預けるにもお金がかかるし、四泊だけ、かさばる荷物はなし。がらがらと小ぶりのスーツケースを転がして降りる。(写真2)
予定より早い到着に気を良くして別便で先についていた友人Aと合流。「いろいろ声かけてくるけど私についてきて」と先導を決め込む彼女について白タクの呼びかけを無視し、正規のタクシーへ。定宿の五つ星ホテルに向かう彼女(リッチなのさ)より先に、三つ星半のビジネスホテルで降りる。周囲はレストランやホテル、カフェもあり、路地に入ると個人のおうちもあった。
ちょっと感じは古いが部屋は広くて清潔だし、シャワーブースとバスタブが洗面台とトイレを挟んで両端に位置する浴室も広々している。ただなんか妙に寒いんですけど! 10度台でエアコンはいらんでしょ。ベッドサイドテーブルのパネルで調整してもオフにならない。微妙な冷風が吹き出し続けている。しかも床は冷たい石張り。冷えが足から上がってくる。
なんでまた台湾まで来て自分のうちより寒い部屋でお金払って寝なきゃいかんのか。いや、それはこの私が許さない。
まずはフロントに電話して「寒くてたまらんわ、こんなん凍えるわ」(英語でよ)というと、フロントの真っ赤な口紅に黒い制服がいささか怪しいものの、英語はよくわかるお姉ちゃんが「わかった。誰かにヒーターを持って行かせるわ」との返事。持って行かせる??の意味がやや不明だがまあよしとして、その間に日本で買って飲みかけたお茶のペットボトルを空にする。つぎに備え付きの湯沸かしで湯を沸かすーと。それから後は綺麗な靴下を片方用意するでしょ。
ペットボトルに熱湯を入れきっちり蓋をして念のためにビニールにいれてしばったら後は靴下にいれてと。はい、お手軽湯たんぽのできあがり。ポイントは日本製のペットボトルね。外国のはペコペコで熱湯に耐えられない。そうこうしているとノックが。
はいはいと出るとおばちゃんが小さな小さなヒーターを片手に佇んでいた。
はあー持って行くってそういうことね。
おばちゃんは、出かける時や他の電気製品を使う時は切ることと、強(ガッツポーズ)、中(優しい微笑み)、弱(両手を重ねて寝たふり)と身ぶりで説明し、大変可愛らしかった。
謝謝と感謝してベッドに入るも布団も薄いしなあ。まてよ、私は一人だがベッドはクイーンサイズ。というわけで布団を縦半分に折って二重に被り、足元にはお手製湯たんぽ、おばちゃんのミニミニヒーターで快適に眠りに就いた黒カナリアであった。
*ちなみに同じホテルに泊っていた日本人ビジネスマン達も、朝食ビュッフェの場で部屋が寒いと言っていたのでそう思ったのは私だけではない。他のホテルにも口コミで冬場に泊ると寒いとあった。暑い国なのでヒーターが古いホテルにはないのかもしれない。
とにかく食べました~
今回雨続きで寒く、それほど景色が良いともいえない台北。することといえば日本のほぼ半額で楽しめるマッサージか食。残念ながら他のものは円安の今、お得感は全くなし。
普段はいい年の一人旅でお腹を壊したくないので屋台は避ける黒カナリアだが、この低気温ならばと屋台の麺にも挑戦してみた。おだしは塩のあっさり風味で、麺の太さもラーメンというよりもうどんに近い。日本人好みの優しい味だ。(写真3)
今回ちまたでは英語はあまり通じないし(若者はOKだけど)、こちとら中国語はニーハオ、シェイシェイ、ハオツーくらいしかわからないので久しぶりにジェスチャーでのコミュニケーション。適当に辛いと書いてあるのを指さしたつもりがひとつ隣りのたぶん素うどん(青菜がちらほら散らしてある)が出てきてしまい、後から常連らしきお姉さんが食べているのには旨そうなワンタンが入っていて気になったので指さしで聞いてみると、これだとメニューを指す。なんかわからんが蛹みたいな漢字? 話しかけると途端にみんなぱあっと笑顔になるのが印象的である。
それにしても台湾の人々はみんな親切。この屋台でもおじさんが麺食いたいんだろーと椅子をすすめて代わりに注文してくれたり、地下鉄では後ろの席が空いてるよ、座れ座れと勧めてくる。足を伸ばした淡水(夕陽の有名なスポットね、写真)でいつもながら道に迷っていると、足が不自由なのに私の腕をとって、わざわざ坂を上ってまで案内してくれたおばさんには本当に感動してしまった。
後はセルフでやってねーというサービスも気を使わなくて一人旅にはありがたい。友人と訪れた定番中の定番の某小籠包の名店や高級中華店ではお茶はどんどんついでくれるかポットサービスだが、他の庶民的な店では最初の一杯は入れて持ってきてくれるが後はご勝手にーである。
一人鍋(写真4)もオッケーな店ではピリ辛のつけだれがなくなり、「ソースぅ」(なんとなく語尾を伸ばすと通じる気がする)と聞くと、お姉さんがあそこよ、と指さしたが、勝手のわからん日本人とみたか自らお代わりを入れてくれ、鍋のスープもつぎ足してくれた。優しいね。
今ブームという永康街で食べた、地元メディアも取材に来ていた外はパリパリ中はもっちりのネギクレープ(というよりは韓国のチヂミに近い)も、ぜひ食べたかった水餃子(写真5)も、もちもち皮に汁気たっぷりで美味しかった。
黒カナリア
身体と心に気持ちのいい事が大好きな、自分に甘いO型人間。 映画は堅すぎるドキュメンタリーをのぞいて、こてこて恋愛物からホラーまでとりあえずなんでも食いついてみる系。