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黒カナリアのぶらりミラノ一人旅 (1)

text by / category : バカンス

この夏はどこにもいくつもりはなかった。いつもならば三月終わりあたりから夏の予定を立てて格安チケットや滞在先を抑え、春学期の長丁場を、夏休みを楽しみに乗り切るのだが今年の三月はいつもと違った。自らの引っ越しの翌日に起きた大震災。ただ見ているだけしかなかった黒い津波が押し寄せてくる光景が頭から消えない。

それが7月になり、実際に夏が始まると、今度は三月以来日本を覆っているどうしようもない重苦しさから逃れたくなった。どこか近年に災害やテロや戦争の傷跡のない深呼吸できる場所へ。それで検索していて見付かったイタリア。以前フィレンツェにしばらく滞在した時に見逃した北部ミラノへ。ちょっとかじったイタリア語も行けば少しは思い出すだろう。

ドバイ乗り継ぎ

というわけでぶっつけ本番的に見付かった乗り継ぎ便とホテルだけが着いたプランで初めての中東はドバイ乗り継ぎ。噂の金持ち空港は本当にどデカかった。 宇宙ステーションを思わせるようなガラス張りに金属、夜空に輝く星模様の天井。超モダンな空港だ(写真1)。全身黒のブルカの女性がいるのがいかにも中東を感じさせる。

しかし4時間待ちは中途半端。乗り継ぎ便のゲートをチェックし、免税店でラマダン明けの特別割引セールなんぞを冷やかしても後2時間ある。お金を払うと「あなたもビジネスクラスのロビーが体験できます」という謳い文句に誘われて有料ラウンジに行ってはみたものの、飲み物や食べ物が特別美味しいわけでなく、座り心地の良いソファはあるものの寝るのは禁止。シャワーはなし。 トイレがすいていて歯磨き洗面などには便利だったが、私の入ったすぐ後からここもやたらとこみ始めたのでそれも怪しい。これで3000円近く払ったとすると微妙である。 今回利用のエミレーツ航空は機材も新しくサービスも食事も良いが、いかんせんEU入国の際が大変だ。たとえば日本からの直行便だとほぼ客は日本人。すると入国で待たされるということはほぼ皆無。係官はやる気なしでちらりとパスポートの写真と本人を確認するのみ。ひどい場合はそれすらない時も。

ところが今回はアラブ系、インド系、アフリカ系。しいてはテロと結び付けられやすいイスラム教徒が多数乗っているわけで、しかも911も間近とくればやたらに時間がかかる。 なんか当たってくるなあと振り返ると世慣れていない感じのインド人のおばちゃんが背後からぐいぐい押してくる。アジア系以外は体が当たるのを嫌うものだがそこはインド人お構いなしである。仕方ないのでおばちゃんを先に行かすとおばちゃんだけでなく一家そろって割り込みである。普段なら文句も言うが、ここでひと家族増えた所でもう変わりないくらい待たされている。好きにしてーとあきらめの心境である。 延々待たされて私など5秒で終わり。おいおい。いいのか、日本人だからって安全とは限らないよー。空港からは急行でミラノ陸の顔、中央駅(2)に出てタクシーでホテルまで五分。やれやれ来るだけで一日半かかったよ。

ミラノ便座考

ファッションの都、あのミラノコレクションの都でなんてタイトルかとお思いでしょうが、今回の旅で一番インパクトが強かったものと言えば、「最後の晩餐」でもサフランの効いたリゾット・ア・ラ・ミラネーゼでも全身キメキメのお洒落ピープルでもなく、まさに「便座」なので仕方ない。 かくいうイタリアも二度目である。トイレ事情があまり好ましくないことはわかっていた。かつて永遠の都ローマで、アメリカ人の女の子が「ペーパータオルもソープもないなんて信じられないわ!」と嫌悪に顔をゆがめて叫んでいたのを尻目に紙石鹸にハンカチ持参で「ふふふ、ヨーロッパをなめたらいかんのだよ」とほくそ笑んでいた私である。勘で大丈夫なトイレかどうかは大体わかるつもりだった。 しかし今回は行くトイレ行くトイレでなぜか便座が割れているか、そのものがないか、または床に穴があいただけのトルコトイレに連続で出くわした。しかもあのブランド店がずらりと並ぶお洒落ストリートで入った小奇麗なカフェでは、ご丁寧に日本語で「紙以外はトイレに流さないでください」などと書いておきながら便座に見事な大きなひびが三か所も入っていた。「流す流さないよりもそこはどうよ」とわたしが呟いたのはご想像どおりである。

そしてブレラ絵画館(写真2)近くの、ミラノでもアーティスティックな香り漂うお素敵な地区(写真3)のカフェはトルコトイレであった。これらの事実から編み出されるのは次の推理である。 1. 私の前にたまたま曙的に太った人が入って便座を壊して回っていた。 2. イタリア人はやたらと便座の扱いが乱暴で(ま、特にイタリア男。便座をあげるってことは)変えてもどうせすぐに壊れるから壊れたら変えない。もしくは最初から便座などないトルコトイレが良い。 3. お洒落地区は歴史があるのでトルコトイレでもやむを得ない。トイレ改装にはイタリアではものすごい大金がかかる。 4. イタリア人は見かけにはこだわるがトイレにはこだわらない。 5. 便座フェチがいて素敵な便座を見るとついとって行ってしまう。

どうも2か4あたりがかなり疑惑濃厚である。2の根拠は今回乗ったユーロスターの1等のトイレであんな便座初めてだったのだが、やたら重たい鉄製で右側に取っ手がついており、座る際はその取っ手を持って下ろしてからお尻をのせなければならないのだ。便座除菌クリーナーで拭いてからにしようとしても、片手で抑えながら拭くと結構な反発力で跳ねあがろうとするので大変だった。しかしそれくらい丈夫なものにしないと割れるわけね。どんだけ乱暴なんよ!イタリア人。特にイタリア男!!! あまりにもこれが頭について離れなくなり、合流したスペイン人の友人に「ここのカフェはトイレがね、綺麗なのよ」と勧めては「コーヒーの味よりトイレでカフェを選んでるの?」と爆笑される羽目になったが、割れた便座に座るのなんてやだぁって思いません???



posted date: 2011/Sep/23 / category: バカンス

身体と心に気持ちのいい事が大好きな、自分に甘いO型人間。 映画は堅すぎるドキュメンタリーをのぞいて、こてこて恋愛物からホラーまでとりあえずなんでも食いついてみる系。

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