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湖畔のヴァカンス(2)

text by / category : バカンス・旅行

大統領選に負けたサルコジ大統領がキャンペーンを開始したのはスイスに近い湖畔の町、アヌシーだった。パリに次いで地価が高いと言われる、ブルジョワな香り漂う魅力的な町だ。アヌシーの街は大きく2つに分かれ、ティウー運河 le Thiou 沿いの迷宮のような旧市街と、北に広がる整然とした新市街が対照を成している。観光名所として、アヌシーの写真で必ず登場するシンボル的なスポットがある。運河に浮かんだパレ・ド・リル Palais de l’Ile だ。12世紀にアヌシーの領主の邸宅として築かれ、その後、役所や牢獄や裁判所として使われた。今は歴史博物館になっている(写真①は定番のアングルではなく、運河の反対側のレストランの2階の窓からの眺め、写真②は運河の向こうに見える遊覧船)。

ブルジョワな香りはアヌシー湖の奥に向かうとさらに強くなる。1週間ばかり滞在したタロワールはアヌシーから車で30分の別荘地で、美しい膝を持つ少女と膝フェチ外交官が出会う物語、エリック・ロメールの『クレールの膝』のロケに使われた場所でもある。小さな中心街は相変わらず中世の雰囲気を残しつつ、夏の花にあふれていたが、手入れの行き届いた街の清潔さは税収の潤いそのものだ。写真はタロワールの街のレストランで食べたボリュームたっぷりの子牛料理。特産のルブロション reblochon というチーズのスティック状のフライがのっている(写真③)。

アヌシー湖はスイスにまたがるレマン湖を除けば、フランスではブルジェ湖に次いで大きな湖。1960年代に始まる環境規制により保全され、かつ世界屈指の透明度を誇るアヌシー湖の周辺は、様々な水上スポーツのメッカであり、一方山の方に目を向けると無数のパラグライダー parapont が飛び交っている。ときどき墜落事故も起こり、木にひっかかったパラグライダーが目撃される。その際は消防車が出動する。タロワールの山中にはトレッキングコースもあり、半日くらいのハイキングに最適だ(写真④は山道からの湖の眺め)。

タロワールでお世話になったマダムはもう70歳を越えているのに、いまだに健脚を誇る。はるか高台に見える別荘までほとんど駆け上がるように帰る。ときには自転車で山あり谷ありの道路を自動車と一緒に走る。10年前はちょっと泳いでくると言ってアヌシー湖の対岸まで泳いで往復していた。「最近は船の往来が多くなって危ないからやらないけどね」。へたれな私の家族はムッシュが車で帰るのに合わせて便乗する。それに間に合わなければシャトルバスを待つ。最近タロワールを巡回する無料のシャトルバスが走り始め、買い物や泳ぎに降りていくのにとても便利だった。これも豊かな税収のなせる業だろう。

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アヌシーに話を戻そう。アヌシーは2018年の冬季五輪の候補地になっていたが、結局、ドイツのミュンヘンとともに韓国の平昌に負けてしまった。サルコジ氏の大統領選とともに落選にからむ話ばかりでさびしい限りだ。他には毎年6月に『アヌシー国際アニメーション映画祭』が行われることでも知られている。1960年にカンヌ映画祭からアニメーション部門が独立した、由緒正しい映画祭である。もちろん毎年、多くの日本の作品が出品されており、1993年には、宮崎駿監督『紅の豚』長編部門グランプリ、1995年には、高畑勲監督『平成狸合戦ぽんぽこ』長編部門グランプリ、2007年には、細田守監督『時をかける少女』長編部門特別賞をそれぞれ受賞している。

http://www.lac-annecy.com/



posted date: 2012/Aug/19 / category: バカンス・旅行
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