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パリの日本食ブームの今、を探る【2017年秋:和食レポ1】

「世界で和食が大ブーム」と言われて久しいとはいえ。
大半の和食レストランは中国人の経営で明らかに「何かが違う」感が漂っているものだったり、現地流に妙にアレンジされていたり。
食べたいと思う和食に海外ではそうそう出会えないと思っていたのですが・・・

20年以上も前から根強い日本食人気が存在している美食の街パリ。
ここ数年、パリの日本食事情にじわじわとある変化が見られていると聞きました。
ますます勢いづく?今後の和食事情が気になる…ということでレポートしたいと思います。

ファーストフード感覚?! カジュアルな日本風レストランが連立するバスチーユ界隈

マレ地区、Merciを有するボーマルシェ通りなどパリ観光に欠かせないエリアがほど近く、それでいて手頃な宿が比較的見つかりやすい便利なエリアのバスチーユ。
その中心、バスチーユ広場から伸びる Rue Roquette はカジュアルなビストロ、カフェ、レストランが連立する通り。

このRue Roquetteには、約 900mの通りにざっと数えるだけで11件の和食レストランがあり、ビストロやカフェの数を完全に凌駕しています。寿司折りを並べているところもちらほら。

このエリアにおいては「和」を演出しているというよりはあまりコストをかけていない感じの店舗が多く、「和食」というよりは「オリエンタルなファーストフード」というのが近い雰囲気なように感じました。

寿司屋は随分以前から多いけど、しょっちゅう入れ替わって新しい店ができてるよ。
ほとんど中国人経営で日本人の店はないと思うよ。

とはこの辺りに長年暮らすフランス人の談。

近くの日本食屋さんに行くか聞いてみたところ、寿司は大好きでよく食べるけれど、deliverooUBER EATS などのデリバリーサービスを使うので、近くでは買わないとのことでした。

「日本食」といえばオペラ座界隈。連立&賑わう日本食レストラン

確か2010年頃、ラーメンを食べに「ヒグマ」を訪れたことがありました。
その時から「ヒグマ」は有名でフランス人達の列に30分ほど並んでラーメンの人気がすごいのに驚いたのを思い出します。その頃はラーメン店も確か周りに数店舗でした。

2017年、久々のオペラ座界隈は・・・自分的には驚きの様相でした。
道という道に「日本語看板」のオンパレードです。
うどんやラーメンは特に人気で平日にも関わらず行列のお店がいくつもありました。

明らかに日本人が作ったのではない違和感漂う店も多数。
外国人オーナーの店が悪い(不味い)とも、日本人の店だから良い(美味しい)とは言えないのですが、明らかに「これじゃない」感の漂うお店を試してみる勇気はありませんでした・・・

そんなわけで様々なタイプが入り乱れる日本食(&日本食要素のある)レストラン。
和食に飢えている自分としては気になるお店がいろいろあるなーと思いつつも、日程的にも経済的にも試すことができるのは限られているのが悔しいところ・・・

独断のチョイスで訪問したのはこれらのお店(掲載は訪問順)

Matsuda / 寿司

19 Rue Saint-Roch, 75001 Paris

お味噌汁とお茶、小鉢が付いたランチの寿司セットが手軽な価格で。 お昼時、フランス人の常連さんが絶えずやってきてはスタッフと談笑して席につきます。テイクアウトもちらほら。 お店の雰囲気なのかスタッフさんのほどよい気さくさなのか、日本語対応だからというだけではない実家に帰った時のような安堵感・・・お寿司美味しかったです。

ABURI / そば

10 Rue Saulnier, 75009 Paris

行列の耐えないバー&レストラン的蕎麦屋さん。炊き込みご飯(or手巻き)、メイン、副菜のセットなど数種類のランチを手ごろな価格で楽しめます。 前知識なしでたまたまの訪問だったのですが内装のシックさと器の美しさにやられました。 照明やテーブルの木目、随所に美意識の高さとセンスが体現されています。 後から聞いた話によるとこのAburi soba は予約が2ヶ月待ち(!)の人気フレンチレストランAburi の2店舗目だそうです。

Nanashi / フレンチ・和食フュージュン

57 Rue Charlot, 75003 Paris

雰囲気的にもメニュー的にもフレンチと日本食のフュージョンが楽しめるお店。 お昼過ぎにのぞいてみると店内はいっぱい。テイクアウトのおにぎりやお弁当もあり、お弁当もほぼ売り切れでした。

Mussubi / お弁当・お惣菜

89 Rue d’Hauteville

繊細な作りが美しい、おにぎりとお惣菜の折り詰めがテイクアウトできます。 ヘルシーなだけではない、どこか温かみを感じるお惣菜のラインナップに癒やされます。

HANA / お弁当・お惣菜

2 Rue de Paradis, 75010 Paris

パリ市内に7店舗を構えるレストラン&お弁当屋さん。 里芋やレンコンの煮付け、おひたし、ひじきの煮物・・・完全に日本そのもの、なお弁当が並んでいます。 店内で一服させていただきました。鋳物の鉄瓶でのサービスが嬉しい。

「ハイソな和食」よりも「日常の日本食」が牽引する和食ブーム

今回の訪問でパリ在住の方やレストランの方、開業準備中の方などいろいろな話をお聞きすることができたのですが、街を見ていても強く感じたのは日本食が手頃な「庶民食」として日常に浸透していることです。

そして現地流にアレンジされたスシロールや謎の日本語が入り交じる「日本っぽい」メニューがカジュアルに街のあちこちに見られるようになった中で、日本人オーナーのお店、日本人が調理をしているお店、「日本食」や「和」を追求するフランス人のお店、などによってより本物の「日常的に慣れ親しんだ日本食」が増えてきているように思います。

  • 「数種類のおかずが彩りよく詰められたお弁当」
  • 「主食、主菜、汁物、野菜、が一揃いとなったランチ」
  • 「手洗いが必要な繊細な趣の食器」
  • 「バランスのよい食事のセットが1500円前後(もしくは以下)」

日本に住んでいるとこれらは珍しくない・・・というより当たり前くらいの感覚なのですが、朝はクロワッサンとコーヒーのみ、昼はサンドウィッチのみ(もしくはそこそこの値段のランチ)が普通であるフランスにおいては「驚異的」に映るのは想像に難くありません。

ヨーロッパでは「手頃な価格での食事」のバリエーションが圧倒的に少ないのです。

とはいえニーズがどれほど高くても実際、和食材の調達、店舗の費用、人件費 を考えるとパリで「手頃で美味しい」日本の食事を提供するのは簡単ではないと思われます。
(ちなみに2017年のフランスの最低時給:1300円 対して日本の最低賃金平均:848円)

それでも「ちゃんとした日本食」を手頃な価格で提供するお店が着々と増えている背景には

  • 冷めていても美味しく、ヘルシーな「寿司」「弁当」が日本的な本来の味に近いかどうかに関係なく爆発的に人気を得て普及した後、「その他の日本食」「本来的な日本食」への期待、興味が高まっている。
  • 長い日本食ブームを経て、日本独特の食材が嫌厭される味ではなくなってきている。
  • デリバリーサービスの普及、テイクアウトの活用により、小さい店舗、不利な立地も活用可能になった
  • SNSの活用などでファンになってくれたお客様との継続的な関係づくりが容易になっている
  • きめ細かなサービスが身についている日本人スタッフ、日本文化や日本食を敬愛する現地スタッフの増加
  • 「きちんとした日本食」を提供したいという思いによる努力

などがあげられるのかと考えています。

店を出せば必ず話題になるのではとすら思えるほどの市場開拓を「大量の日本食っぽいレストラン」が行い「日本が大好きなフランス人」がレベルを底上げしてくれているという棚ぼた的状況の中で。

元来働き者の日本人がきちんと飲食店を出せばそれは上手くいく・・・ようにも見えますが、そこはやはり異国の地フランス。

商売を行うのはタフな戦いなんだろうなとの思いをはせつつ、慣れ親しんだ日本の味がよりポピュラーに、身近になっていくのは誇らしくもあり、目が離せないと思うのであります。

パリの和食事情、レポ2も公開予定です。お楽しみに!



posted date: 2017/Nov/24 / category: 食・レシピ

インターネットの恩恵にあずかりつつも、情報と技術の膨大な流れの渦にぐるぐる流されて右往左往しているお酒、音楽、フランス、古民家と町家が好きなWeb屋。現在オランダ在住。

フランスとベルギーを放浪しているうちに日本と日本人が大好きになりました。自らをタタミゼ(日本文化、日本を好むフランス人を指す。正確にはTatamiserが正しい?)と名乗る屈折した純日本人。妄想と勘と面白人脈を駆使して生活に役立てているような、いないような・・・

とりあげるテーマは「インターネット」「音楽」「映画」「デザイン」関連なんかをまとまりなく。 一児の母となったので、子育て、教育関係も気になるところ。

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