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フランスの文化戦略・石川県の場合

text by / category : バカンス / その他

フランスがさまざまな組織を通じて自国の文化資本の維持と拡大に努めていることは、あらためて言うまでもない。フランス=文化の国、というステレオタイプは、実際には絶えまない努力の結晶とも言える。僕が住む石川県でも、二つほど目についたので、報告しておこう。

ミニシアター巡礼一つは金沢市のシネモンド(そのユニークな開館の経緯については、代島治彦『ミニシアター巡礼』を参照!)が加盟している Europa Cinemas。
ヨーロッパ映画の振興を目的に、1992年に創設され、現在は全世界68カ国の1170館の映画館が加盟している。フランス外務省が資金援助し、東欧を含むヨーロッパ圏での若手映画監督の制作を援助し、またアジアや南米でのヨーロッパ映画上映を後押しするのが、主たる目的である。

面白いことに、北米には1館もない。これはすでに上映機会が確保されているからなのだろうか。それとも、何か政治的な圧力がはたらいているのだろうか。

日本では、岩波ホール(東京)やテアトル梅田(大阪)など、31の映画館が加盟している。フランス語を学んだり教えたりしている人は、フランス映画もよく見るのではないかと思うが、みなさんの最寄りの「ヨーロッパ映画がよくかかる映画館」が、この Europa Cinemas に加盟している可能性が高い。一度チェックしてみてはいかが。かっこいいトレーラー動画も必見。

http://www.europa-cinemas.org/fr

Relais & Chateauxもう一つは、山代温泉の「べにや無何有」が加盟している Relais et Châteaux。1954年にフランスで創設されたホテルとレストランの会員組織だ。最初はパリ=ニース間のホテル業者がブランド力を強化する目的で立ち上げられ、1960年からは外国にも範囲を広げ、今では全世界に500軒以上の加盟店をもつ巨大組織となっている。日本では12軒が加盟している。

3年ごとの匿名調査をはじめとする厳しい審査により、快適さと優雅さを保証する、とのこと。日本でも「ルレ・エ・シャトー」というカタカナの組織名で運営されている。ほとんどの日本人にとって意味不明な名前をあえて使用しているのも、やはりフランスのサービス業が評価されているからこそだろう。つまり、フランス語の響きが、高品質の保証をイメージさせる、というわけだ。
紹介動画では、「オテル・ドゥ・ミクニ」の三國清三シェフのややブロークンなフランス語も聞ける。
http://www.relaischateaux.jp/

身近なところに、フランスの文化戦略とも言うべきものが浸透していることに、あらためて驚かされる。どちらも、フランスがもともと培ってきた伝統を、単に保存するだけでなく、世界に広めることで、その「本家」としての価値を高めようという積極的な姿勢が顕著だ。

安倍首相が盛り上げようと企んでいる「クール・ジャパン」が何を意味するかはよく分からないが(そもそもなぜ英語なのかも分からない)、日本文化の伝統に深く根ざしたものを世界に広めて欲しい。そうすれば、「日本が本場」というイメージが、世界中に定着し、本場詣でをしてくれるかもしれない。僕たちがフランスについ憧れを抱いてしまうように、外国人にも日本に憧れて、何かを学びに来てもらいたいものだ。「クリエイティヴ産業」なんて訳の分からない用語を省庁が使っているようでは、ちょっと無理そうだけど。



posted date: 2013/Nov/11 / category: バカンスその他

1975 年大阪生まれ。トゥールーズとパリへの留学を経て、現在は金沢在住。 ライター名が示すように、エヴァリー・ブラザーズをはじめとする60年代アメリカンポップスが、音楽体験の原点となっています。そして、やはりライター名が示すように、スヌーピーとウッドストックが好きで、現在刊行中の『ピーナッツ全集』を読み進めるのを楽しみにしています。文学・映画・美術・音楽全般に興味あり。左投げ左打ち。ポジションはレフト。

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