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偶然続けて強い女の映画を見た~「ローズの秘密の頁」&「スリー・ビルボード」

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偶然続けて強い女の映画を見た。

ジム・シェリダン監督「ローズの秘密の頁」

原作はアイルランドのコスタ賞を受賞した ‘Secret Scripture’。

精神病院に100歳に近い老女が我が子を殺したとして50年以上も収監されているのだが、彼女がひそかに聖書に書き記していた生涯を、精神科医のグリーンが振り返ると、自らにもかかわりのある思わぬ秘密が・・・・ というところは確かに原作通りなのだが、いかんせん、二時間足らずで納めるには原作が壮大すぎた。

キャスティングにも難あり。

確かにルーニー・マーラは芯の強さを感じさせるいい女優だけれど、華はない。

アイルランドの片田舎で村中の男たちを惹きつけてやまない、色情狂の汚名を着せられる美女とは、ちょっと違うのでは。むしろ目を見たら支配される「魔女」と言われるならわからんでもないけど。

物語のキーパーソンにゴーント神父を持ってきて、(この辺りはかなり原作を大胆にアレンジしている。恋愛を話の中心にしたかったのだろうが無理がある)しかもローズに夢中になってしまい苦悩する若いイケメン(テオ・ジェームズ)にしたのがどうだろうか。

アイルランドの教会って偏狭でしょうーと宗教にすべての罪をおしつけて、アイルランドとイギリスの複雑な歴史や、第二次大戦の折のアイルランドの微妙な立場(敵の敵は味方―でドイツ寄りだった住人もいる)の説明をすっとばし、原作では異彩を放つ強烈な姑とか変な夫の兄弟とかを全部カットし、着せられた「未婚の母の子殺し」の汚名をテーマにしたのは乱暴すぎ。

ローズの恋人マイケルを簡単に殺してしまうあたり。しかもマイケル(ジャック・レイナー)が一生の恋人にしたら「そうか?」な、かなりもさい男。(この辺りは個人的な好みですが)、ゴーントをあんな目力あるイケメンにしたらちょっと不利じゃないか?

神父の思いが強すぎて周囲にばればれな「緋文字」みたいな展開もあり、臨月で海を泳いてわたるとかとにかく無茶すぎる話で、これで、ねえ昔のアイルランドってひどいでしょう、偏狭でしょ、若くてきれいな未婚の女に冷たいでしょ、だけの話になったのは力のある俳優を使ったのにもったいない。

マーティン・マクドナー監督「スリー・ビルボード」

骨太 —

もうこの一言に尽きる。

主演のフランシス・マクドーマントが、レイプされ殺された娘アンジェラの犯人逮捕のためになりふり構わない強い、強い女を演じる。

発展しない警察の捜査にしびれを切らした彼女が、町はずれの道路沿いに出した警察の怠慢を告発した三枚の広告から物語は思わぬ展開を見せる。

人格者だが末期がんを患っている警察署長ウィロビー(ウディ・ハレルソン)。いまだ公然と警察の黒人や同性愛者に対する差別がまかり通るアメリカ南部の片田舎。その警察の在り方を公然と批判した母親ミルドレットへの周囲の冷たい視線。

そもそも周囲から少し浮いた彼女を描くのが絶妙にうまい。DV元夫と別れた貧しいシングルマザー。小さなギフトショップの経営者で雇っているのは黒人女性。教会にも通っていない。

彼女をいさめにやってきた牧師に対する「ギャング」を使った拒絶が見事で笑ってしまうし。また自分や息子に対する攻撃には真っ向から立ち向かう姿に胸がすく。見事な蹴り。痛そう!

深刻なテーマなのに笑えるシーンがあちこちにひょっこり顔を出して息抜きさせ、人物像の描き方も深みがある。

ずっと口を引き結んだミルドレットが実は優しい女なのがわかるシーンがさりげなく織り込まれている。もがいている虫をそっとおこしてやったり、発作を起こした署長に、思わず「ベイビー」と呼び掛けてしまうあたり。

反抗期の娘と喧嘩して出た売り言葉「レイプされてやる」に、買い言葉「レイプされりゃあいい」と言ってしまったこと。その悔いが彼女をつき動かす。

ただ差別主義者で無能に見えた警官ディクソン(サム・ロックウェル)が、自殺した署長からの手紙を読み、馬鹿にしていた小男や、同性愛の青年に救われ、思わぬ優しさをむけられて真に警官らしくなるあたり。

最初は犯人捜しの推理ものなのかと思わせておいて、実は燃え滾る怒りのやり場のない女と、暴力と差別しかなかった元警官の再生の物語。

ずーっと仏頂面で(この映画を見た父に言わすとタフガイいや、タフウーマンの)ミルドレットが二回だけ笑うシーンがある。どこで、誰に対しての笑いなのか見てください。

Photo By Mavelus – 投稿者自身による作品, パブリック・ドメイン



posted date: 2018/Feb/13 / category: 映画

身体と心に気持ちのいい事が大好きな、自分に甘いO型人間。 映画は堅すぎるドキュメンタリーをのぞいて、こてこて恋愛物からホラーまでとりあえずなんでも食いついてみる系。

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