フランスからグローバリゼーションとオルタナティブを考える新しいフランス学

2月の1曲 “Bewitched, Bothered and Bewildered” Ella Fitzgerald

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今月はヴァレンタイン・デイにちなんで“love”についての歌を選んでみました。1940年に名コンビ、ロジャーズ&ハートがミュージカルのために書き下ろした、これぞグレート・アメリカン・ソングな1曲。

Very Best of the Rodgers & Hart Songbookなぜこんな昔の曲を引っ張り出してきたかというと、最近見たアメリカのドラマ『ナース・ジャッキー』で効果的に使われていたから。主人公ジャッキーの働くマンハッタンの病院のERに、危篤の男性患者が運ばれてきます。彼を探してやってきたのは、ずんぐりでっぷりした、白髪まじりの壁紙職人さん。患者のベッドの側に陣取って、てこでも動かない構え。「彼のことをちゃんと扱え!」と子猫を守る母猫のように病院スタッフに向かってゆきます。ど迫力に見ている側もたじたじとなるほどですが、患者との関係がわかるとおじさんに対する気持ちも変わってゆきます。おじさんと患者は、何十年もつれそったパートナーだったのです。

パートナーといえど法的に配偶者と認められているわけではなく、どうあっても生きていてほしいというおじさんの希望は受け入れられず、患者(弁護士さんでした)が前もって用意していた意志に従い、機械に頼って生き続けるという選択は避けられます。機械を外せば彼が苦しむのではないかと逡巡し、きちんと説明を受けても「イエス」ということをためらうおじさん。ジャッキーを前に、「こう見えても本当にいい男なんだ、ずっと一緒にいた・・・」と問わず語りします。「昔の歌にあるだろ、『身にまとったズボンさえも愛おしい』って」。

おじさんが引用していたのが、この曲。洗練されたオトナの女性が、スウィートなメロディに載せて、片思いにもんもんとする我が身をユーモラスに綴っています。直情に任せて「好きです」とただいいつのるだけの歌とは違い、心のひだが作る陰影を感じさせるのが魅力的。ズボンというあたり、何気にセクシャルでドキリとします。

決めかねて、一人ぽつねんと座るおじさんにエラ・フィッツジェラルドが歌うこの曲がかぶさってドラマは終わります。おじさんを演じたのは、名優ハーヴェイ・ファイアスタイン。普段の生活とは無縁と棚に上げていた ”Love” というものについて、ちょっと考えてしまいました。

聴いてみたい方はこちらでどうぞ。

youtu.be/Z3Y7TpNi3x0

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GOYAAKOD=Get Off Your Ass And Knock On Doors.

大阪市内のオフィスで働く勤め人。アメリカの雑誌を読むのが趣味。 門外漢の気楽な立場から、フランスやフランス文化について見知った事、思うことなどをお届けします。