春の新作テレビアニメが出揃ったなんとも楽しい時期です。けれども見る時間をいかに確保するか、それが問題。とりあえず溜まりに溜まった録画を片付けながら、昨年から今年3月までの作品を振り返ってみました。
まずは何と言っても『ジョジョの奇妙な冒険』!当初はテンポが生理的に合わないようにも感じたが、話数を重ねるごとに違和感は薄まり、アニメならではの演出のパワーを感じる結果に。とにかく声優陣が素晴らしい。ジョナサンを演じた興津和幸氏、第一声からして「そうだ、ジョナサンってきっとこんな声だ!」と思わせてくれたほどの適役。ジョセフの杉田智和氏は特徴的すぎる声ゆえに一瞬とまどったが、そのアクの強さがこれ以上ないほど嵌って怪演!またスピードワゴンとシュトロハイムの演技も完璧すぎるほどで、文字を音にするプロ声優の凄さを体感。そして素晴らしいOPとED!作品の世界観を見事に表現していて、録画での鑑賞でも毎回必ず見てしまう。とにかく心昂る。全編を通じ、スタッフ陣の原作に対する愛と情熱に満ち溢れている作品。この勢いで第三部のテレビアニメ化をぜひ実現してほしい。
瑞々しい映像が印象的な『氷菓』。たわいない学園ミステリーが楽しく、主人公たちの曖昧な人間関係が心地よい。ヒロインである千反田えるには魅力がないと不満だったが、なぜか最終回の頃には好感を持つように。それはおそらく、折木奉太郎との関係描写が情緒に満ちていたからだと思う。そして折木を演じる中村悠一の声は物憂げで実に魅力的。揺れる前髪、伏し目がちになる表情と相まって青春のナイーブさを体現したキャラクターにぴったりだ。「青春は優しいだけじゃない。痛い、だけでもない。」という作品のキャッチフレーズが心に沁みる。苦しいことだらけだった青春時代や高校生活が、時を経るとなんとまぶしいことか…そんな思いを抱かせてくれる。
『THE UNLIMITED 兵部京介』は『絶対可憐チルドレン』のスピンオフ作品。絶対可憐~はほとんど知らないのだが、洗練されたキャラデザインに惹かれて視聴。エスパー対ノーマルという物語にそれほど新鮮味は見出せなかったものの、中川幸太郎氏による音楽が鮮烈で、戦闘場面が魅力的。
そして、『PSYCHO-PASS サイコパス』。本広克行監督(『踊る大捜査線』)の企画に『魔法少女まどか☆マギカ』を手がけた虚淵玄が参加した話題作。「シビュラシステム」の監視下に置かれた近未来社会で、治安維持を担う公安局の刑事たちの物語。設定はわかりやすく、登場人物もひとりひとりが存在感を放っている。様々な娯楽要素がバランス良く盛り込まれており、グロテスクな描写に抵抗を覚えなければ楽しめる作品だ。しかしほど良く仕上がっているだけに、何かが足りないと思ったのも事実。たぶん、2012年らしさ、というものが欠けていたような気がする。
けれども登場人物の一人が口にする「紙の本を買いなよ」というセリフは印象的だし、様々な引用もなかなか格好良い。実際に、この作品で言及された『アンドロイドは電気羊の夢を見るか?』等のタイアップフェアが全国の書店で展開され、好調な売れ行きを示しているそうだ。さらに最後には、プルーストの『失われた時を求めて』も登場する。ラストシーンでテーブル上に置かれた文庫本がクローズアップされるのだが、EDのクレジットに集英社版であることが明記されている。なぜプルーストなのだろう、と考えてみるのも面白いだろう。ネット上でも色々と議論が交わされた模様。
タイトルだけで正直お腹いっぱいの『中二病でも恋がしたい!』。とりあえず初回は見ておくか…くらいの気分だったが、これがなかなか楽しめたのでした。最後まで見ると、タイトルがより深く響く。何も考えずに笑って観るのも良し。タイトルだけで避けてはいけないという好例。
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