フランスからグローバリゼーションとオルタナティブを考える新しいフランス学

アフリカとフランス ‐ 軍事介入、自動車、言語&メディア戦略

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現在、アフリカでエボラ出血熱が猛威をふるい、アフリカ大陸以外にも広がる勢いである。それでなくてもアフリカから届くのは内戦とか虐殺とか、イスラム武装勢力の暗躍とか、ネガティブなニュースが多く、地球の最後のフロンティアと言われるアフリカは大丈夫なのかと心配になってくる。しかし、この心配は後で述べるように、アフリカを貧困と紛争のイメージで描きたがる、欧米メディアのひとつの効果に過ぎないのかもしれないし、エボラ出血熱騒動も、アフリカと世界のつながりが深まってきたことを示しているのかもしれない。

仏語圏の57の国や政府で構成する国際組織「フランコフォニー」が2010年に出した報告書によると、2010年のフランス語を話す人々は、2億2000万人(世界人口70億人の3%)だったが、2050年には7億人(世界人口91億人の8%)に達する。現在、日本の大学の第2外国語においてフランス語のシェアは落ちて行く一方だが(日中関係の悪化によって少しは持ち直している)、これはフランス語学習者にとって直接的なメリットのある朗報なのだろうか。

世界銀行は半期に一度、アフリカ経済を分析した報告書「アフリカの鼓動」を発表している。それによると、サブサハラ・アフリカ(SSA:サハラ砂漠より南の、北アフリカ以外の地域)の経済は、2013年の4.7%から順調に成長し、2014年には5.2%になると予測されている。その背景には、天然資源とインフラへの投資拡大、順調な個人消費が挙げられる。成長が特に著しかったのは、シエラレオネやコンゴ民主共和国などの資源国で、コートジボワールも引き続き堅調で、フランスの軍事介入によって政治が安定し、治安が改善したマリも好転した。

一方、去年12月にフランスが介入した中央アフリカ共和国の1人あたりのGDPは約369ドルで、サブサハラ・アフリカの約992ドルを大きく下回る。またサブサハラ・アフリカの2013年の成長率が4.7%であるのに対し、中央アフリカは約1.2%と明らかに低い。2000年代はアフリカが最後のフロンティアとして域外国からの投資に沸き、急激に成長したのに対し、ボジゼ大統領の任期中の中央アフリカは経済停滞が顕著だった。

つまり政治的な安定と経済成長のあいだいには明らかに相関がある。実際、様々な指標によって生活の質を総合的に数値化する「暮らしやすい国」ランキング2014年版で、中央アフリカは世界最下位(142位)にランキングされ、未だ政情が不安定で宗教間の争いが絶えない中央アフリカは、それらが生活の質に対する最大の脅威であることを証明してしまった。

1. アフリカに介入するフランス

Africa_Sahara_Sahel_SubSaharan

 

中央アフリカのこれまでの経緯を簡単に述べてみよう。ボジゼ大統領は、パタセ大統領の時代、軍の参謀総長だったが、2003年にパセタ大統領親衛隊を倒して、権力を掌握した。しかし大統領となったボジゼも結局はパタセと同じように、独裁化して、恣意的な選挙運営や反政府勢力の強権的な取り締まりを行い、それに反旗を翻す勢力に倒されるというパターンを踏襲することになる。そしてボジゼ退陣を求めたのは、イスラム系の武装勢力が結集した武装勢力、セレカ( Seleka コンゴ語で同盟の意)だった。セレカには内戦後のリビアから武器や兵士が流れ込み、さらに勢力を増し、2012年12月には主要な都市を占拠するに至る。2013年1月、ボジゼ大統領とセレカは一旦停戦合意をしたが、折り合わず、再びセレカが攻撃を開始し、ボジゼ大統領は亡命を余儀なくされる。

そしてセレカが政権を掌握し、セレカのリーダー、ジョトディアが暫定大統領に就任する。セレカはもともと寄り合い所帯で求心力のない武装勢力だったが、賃金未払いなど不満が募り、離反が相次いだ。ジョトディア大統領はセレカの解散を宣言したが、混乱を収拾するにはいたらなかった。首都でも武装勢力同士の武力抗争が、イスラム教とキリスト教の対立へと軸を変化させながら激化していった(中央アフリカはもともと人口の70%がキリスト教徒で、イスラム教徒は少数派という状況)。略奪や虐殺がエスカレートし、多くの避難民も出た。その混乱の中で中央アフリカを視察した国連機関がジェノサイドに発展する恐れがあると警鐘を鳴らし、フランスが去年の12月に軍事介入を決定したのだった。

フランスはアフリカで軍事活動を行うのは稀なことではない。フランスはかつてのヨーロッパの植民地勢力の中で唯一、アフリカに兵力を駐留させている。現在アフリカには約24万人のフランス人が居住しており、これを保護するためにフランス軍は外人部隊も含めて約1万2千人の兵員をアフリカに駐留させている。

フランスは軍事介入に積極的だったわけではないが、介入の大義名分がそろいすぎるほどそろった。ひとつは選挙で選出されたボジゼ大統領がセレカによって亡命を余儀なくされ、民主化の原則に反したこと。セレカがイスラム武装勢力で、しかもリビアからの武器や兵士の流入は反テロの観点からも好ましくないこと。さらには現地からの要請もあった。実際に介入後、実際行く先々でフランス軍が歓迎された事実がある。

当然、介入の背景にはフランスの利益もある。アフリカの政情を安定させることは市場や投資先の確保につながるからだ。先ほどの数字を見ればわかるように、政治的に安定している地域は経済成長の度合いが高い。資源ブームの中でフランス企業はアフリカへの投資を増やしているが、2007年にフランスの原子力産業複合企業、アレヴァ(福島の原発事故でも注目された)は首都バンギから北東600キロにあるバコウマのウラン鉱山開発に25億ドルを投資している。

「中央アフリカにフランスが軍事介入した3つの理由」(THE PAGE 2013.12.17)参照

2. アフリカへの投資

自動車産業は経済発展のひとつの重要なパロメーターである。世界の自動車メーカーにとって欧米以外の主要市場は、中国とインドを除けば、北アフリカが有望なフロンティアとみなされている。しかし、2010年のチュニジア暴動に端を発する「ジャスミン革命」以来、フランスの多国籍企業は革命が飛び火した国々を避け、モロッコのみを投資先とみなしている。その理由はモッロコが外国企業の誘致政策を行い、また北アフリカで最も対外開放が進んでいるからだ。ルノー日産グループはモロッコの北端の町、タンジェに欧州以外では最大の工場を置いている。2013年の世界の全メーカーの国内販売台数(中古車を除く)は165万台であるが、その内訳は、

①アルジェリア26万台(1人あたりの所得5020ドル、2012年)
②モロッコ12万台(2910ドル)
③チュニジア5万台(4510ドル)

上位を北アフリカの国が占め、特に石油を産出するアルジェリアの購買力が高いことがわかる。ブラックアフリカに関して言えば、所得水準が低いので、工場を建設する直接投資は行われず、貿易によりフランス車が旧仏領国で購入されている。

ブラックアフリカの主要国のカメルーン、コートジボワール、セネガルの1人当たり所得は1000ドル程度と低水準ではあるが、それでもカメルーンは比較的工業化が進み、自動車の組み立てが主要な産業に育っている。

日本との関連で特筆すべきことは、アフリカの最大の自動車ディーラーであるフランスの総合商社CFAOをトヨタグループの総合商社、豊田通商が公開株買い付けを行い、100%近い株を取得し、親会社になったこと。CFAOの最優先市場はコートジボワール、カメルーン、コンゴであり、その地域全体ではトヨタの車が売れており、特に不整地走行車両ではトヨタがトップである。

参照した記事にはアルジェリアとガボンの各メーカーのシェアが掲載されていたが、韓国のアフリカ進出も日本に引けをとらないことがわかる。アルジェリアでは1位ルノー(20%)、2位現代(17%)、3位プジョー(11%)、4位トヨタ(9%)。ガボンでは1位トヨタ(33%)、2位三菱(13%)、3位フォード(12%)、4位現代である。

□「フランスと旧仏領アフリカとの経済関係」(『ふらんす』2014年9月号)参照

3. アフリカに対するメディア戦略

いくら2050年にフランス語話者が7億人(世界人口91億人の8%)になるとはいえ、そのうちアフリカに属する人口が85%を占め、人口6500万人のフランスは脇に追いやられることになる。フランスとしては、フランス語政策を通じてフランス語圏の主導権を握りたいところだろう。7億人という数字はあくまでフランス語圏で将来もフランス語が使われることが前提になっている。

例えば、コンゴ民主共和国は最大級のフランス語公用国と言われるが、実際には200の現地語があり、フランス語は共通語として機能しているに過ぎない。ちゃんとしたフランス語教育が行われ、ちゃんとしたフランス語メディアが存在し続けなければ、フランス語が重要な地位を維持できるか疑わしいのだ。ネットの普及などによって英語にその地位を奪われる可能性もある。しかし豊かとは言えない国で若者世代の急増に対応したフランス語教育は困難を極めることなのだ。

RFI(Radio France Internationale)は2007年にナイジェリアでハウサ語、2010年にはタンザニアでスワヒリ語での放送を開始した。まずは現地語で視聴者と接し、次にフランス語を学んでもらうという戦略である。フランス24(France 24)はフランス語だけでなく、英語とアラビア語でも放送しているが、そこに五大陸に分布するフランス語圏の視点が加わることは、ニュースの意味や議論を深めることになるだろうと主張する。またかつて日本では文学や思想や映画がフランス語を学ぶ動機や媒介になったように、フランスの文化の浸透も欠かせないだろう。実際、RFIやFrance24を運営する公共企業「フランス・メディアモンド」は公共メディアの使命はフランス語の普及とフランス語教育者の養成と考え、経済的な利益よりは文化外交の一翼を担うという自覚があるようだ。

フランス語を担うフランスのメディアにとって、6500万人のフランス国内市場から7億人の巨大なフランス語市場に目を向ける転換期である。メディアとしてアフリカをどのように伝えるのかも重要な問題だ。最初に述べたような、貧しく紛争が多いアフリカという固定観念にとらわれずに、暴力と貧困を克服しながら発展するアフリカの姿をありのままに伝えなければならない。例えば、スレート・アフリック (www.slateafrique.com/) はネット閲覧を無料にし、広告収入に依存する形態だが、現地アフリカの広告業界が未熟で思うように収益が上がっていない上に、リポーター不足で現地情報があまり集まらないという問題を抱えているようだ。一方、ルポワン・アフリック (afrique.lepoint.fr/) は経済情報を重視する戦略を取り、起業家、経営幹部、大学への浸透を目指している、という具合だ。

アフリカは中国が積極的に進出していることでも知られている。中国政府が支援する中国語教育機関「孔子学院」がアフリカでは2005年に初めて開校し、現在(2012年)はアフリカ約20か国30校に及ぶ。中国中央テレビ=CCTV  (cctv-africa.com) は2012年にケニアのナイロビに大きなスタジオを構え、英語でアフリカのニュースや文化情報の生放送を開始している。またフランス語圏アフリカの地上デジタル放送に投資し、アフリカ各国との協力で中国独自のコンテンツを現地テレビ局に提供している。

CCTVはいち早くビジネス情報などアフリカの積極的な側面を取り上げ、アフリカの人々に別の選択肢を与えた。そのおかげで英 BBC と肩を並べるくらいの知名度があるのだという。フランス語圏は決してフランスに属しているわけではなく、戦略的に投資を行い、影響力を保持しなければ、優位な立場にいるフランスとて好機を逃すことになる。中国は言語の重要性をよく理解している。これは言語を巡る戦争なのだ。日本に関して言えば、非英語圏の国がグローバリゼーションを考慮するなら自ら英語化を進めるよりも、世界に日本語学習者を増やす戦略があってもいいはずだ。日本語ブームが何度かあったにもかかわらず、日本はどんどん予算を削り、外国の日本語学習拠点(大学の日本語学科など)も減る一方のようだ。

最近、フランス語教育に関する重要なニュースがあった。それはカーン・アカデミー Karn Academy のフランス語版が完成したことだ。「質のよい教育を、すべての人々のために」をうたい文句に、カーン・アカデミーのサイトには数学や科学、物理学などを中心に3000本を超えるビデオがアップロードされている。利用はすべて無料。ビデオをクリックすると、黒板のようなものが現れ、講義が始まる。十分な教育環境のない発展途上国の子どもでも、自分に適した速度で学習することができるようになっている。またゲイツ財団やグーグル、有名なシリコンバレーのベンチャーキャピタリストなどが支援し、数百万ドルの寄付を行っていることでも知られている。

カーン・アカデミーのフランス語版は Bibliothèques Sans Frontières という組織の助力が大きいようだ。この組織の動向を見てもわかるように、これはアフリカに対する言語戦略なのだろう。まさにアフリカの子供たちにうってつけの教育インフラだからだ。アフリカの人口が増え、フランス語話者が増えると言われているとはいえ、ネット教育という形でフランス語が教育の媒介となれば、言語基盤をより強固なものにできるだろう。

□「フランスメディア、アフリカに活路 ネット活用 多様な報道」(毎日jp)
□「中国、アフリカを席巻」(朝日新聞、2012年7月19日)参照

 

 

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