フランスからグローバリゼーションとオルタナティブを考える新しいフランス学

FRENCH BLOOM NET 年末企画(1) 2010年のベストCD

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■今年もいろんな音楽を聴きましたが、新譜はほとんどありません。ふだんの生活圏にCD屋がないせいでしょうか。近所のレンタルショップで借りたCDをiPodに入れて、通勤のバスで聴いていました。今年出たものの中では、ライムスターの新作『マニフェスト』が面白かったです(「K.U.F.U.」とか)。あとは「キャベツ頭の男」さんに音源を貰った数百曲を楽しませてもらいました。エグベルト・ジスモンティの音楽は、嬉しい驚きでした。 (bird dog)

■ CDではないが、ピアニスト小山実稚恵の活動を今年のベストに挙げたい。小山は1982年チャイコフスキー・コンクール3位、1985年ショパン・コンクール4位という快挙を成し遂げ、今年デビュー25周年を迎えるベテランのピアニストである。10月にショパン・コンクールの審査員を務めたことも去ることながら、2006年から『音の旅』と題した全24回、12年間に亘って続く壮大なシリーズもののピアノ・リサイタルを続けていることに喝采を送りたい。今年は秋に第10回目のリサイタルが開かれたが、素晴らしいものだった。毎回のコンサート毎にテーマが決められ、それに沿った曲目が選ばれている。今回は「究極のロマンティシズム」と題し、シューマンとショパンが演奏された。来年は春が「研ぎ澄まされる耳・指先」と題し、ドビュッシーなどが演奏され、秋が「音の洪水」と題し、ラフマニノフなどをやるらしい。24回目のリサイタルが開催されるのは2017年の秋。その時、小山はどんな音を聞かせてくれるのだろうか。 (不知火検校)

■告白します。ロックは所詮若いもんが作る音楽と思ってました。ローリング・ストーンズという絶対の例外は別として、いい年になったロックの人の作るものは、Good Musicであってもロックじゃないよなと。
■そんな私をとっても恥ずかしい気分にさせてくれたのが、ピーター・ウルフのアルバム。今はなきJガイルズ バンド(Centerfold!)のフロントマン、フェイ・ダナウェイの元旦那という、絵に書いたようなロックスター。まだレザーパンツが似合う姿ながら65に手が届かんとする彼が、久しぶりに放ったこの一枚は、いやーカッコよいです。ほどよい抜け感があって、これでもかというくらいロックのツボをスパーンと押してきます(こんな絶妙なタイミングで放たれた”C’mon!”を聞くのは久しぶり)。しかしベテランの味、年寄りの役得とレッテルを貼るのは大間違い。いい日も悪い日もあったけど自分の本当に好きな音を大事にしてきた人が、ふっと肩の力を抜いて気の向くままにやってみたら凄いことになりましたよ、という感じです。豊穣とかコクという大げさな言葉より、軽やかさとひとつまみのストイシズム、が相応しい。
■説教なし、自讃なしの気負わない歌詞も、素直に耳に届きます。カントリー界の大兄イ、マール・ハガードと低音で囁くラストナンバー、Is it too late to love? なんて、人生の穴ぼこを覗いているようです。(日本ではこういうことは望めないもんかね、と嘆いていたらこの曲を耳にしました。http://youtu.be/5vEwXCwvA0Y 作者は若者みたいですけれど、Julie with The Wild Onesがプレイすることで、同年代の千々に乱れる心もようの歌になっていて、身もふたもなくて、すごくおもしろい。) (GOYAAKOD)

■CD、とりあえず3枚。
Diving with Andy,”Sugar Sugar”
Abd Al Malik,”Chateau Rouge”
Marie Espinosa,”La demarrante”
(MANCHOT AUBERGINE)

■なんやかんや言って2010年は『アニメンティーヌ~Bossa Du Anime~』がいちばん話題性があったのではないか。クレモンティーヌは何か吹っ切れた感じがする。「ゲゲゲの鬼太郎」のカバーが入った2枚目ももう出ている。7月にリリースされ、オリコンの週間アルバムランキング(全体)で18位まで浮上したのは9月6日。洋楽チャートでは1位の快挙。忘れてはいけない、このアルバムはフランス語で歌われているのだ。ポルナレフ以来の出来事かもしれない。学生と一緒に聴いたが、これほど世代を超えて共有されているネタはないだろう。いつしかイントロ当てクイズ大会となっていた。アレンジも悪くない。クレモンティーヌは来日して「ほぼ日刊イトイ新聞」で Ustream ライブも配信していた。今年は坂本龍一や宇多田ヒカルのように大掛かりなライブを中継するというのもあったが、「ほぼ日」内の小さな会議室で気軽に演奏して、その映像を Ustream で流してしまうというのも、今年の象徴的な風景だった。
■今年から Twitter を本格的に始めたが、TL 上ではいろんな人が #nowplaying! していた。毎日レアな音源をアップする人をフォローしたり、ピンポイントで音楽の話が出来たり、昔同じシーンを共有していたことを確認したり。それは明らかに音楽の新しい共有の形だった。
■日本では平沢進の名前が目についた。『けいおん!』とかいうアニメのサントラをやっていたり、今年亡くなったアニメ作家、今敏とは親友だったり。8月にやっていたNHK・FMの12時間特別番組「プログレ三昧」でP-Model の前身バンド「マンドレイク」が最高得票数を獲得していたが、それは若い平沢ファンの投票によるものだった。
■ときどき youtube には思いがけない動画が見つかる。今年最も萌えたのが ”Mika plays Tarkus”。この若くて美しいマリンバ奏者のことはよく知らないのだが、ELP の組曲「タルカス」に合わせてマリンバを演奏している。やる気がないのか、楽しいのかよくわからない表情も良いが、マリンバの軽やかな、かつ呪術的な響きがこの曲にすごくあっている。プログレのカバーアルバムを作って欲しい。 (cyberbloom)

■今年の一枚?に出会うまでの短くも膨大な道のり:「今年の一枚、ということでおすすめの音楽について書いてみませんか?」2010年11月、cyberbloom さんからのお誘いに喜び勇んで「ぜひ!」と名乗りを上げたはいいけれど、そういえば今年はほとんどCD買ってなかった…エディタを前にハタと困ってしまった私。さてどうしよう。振り返ってみれば今年はネットラジオと音楽紹介サイトの恩恵を享受し続けていた1年でした。
■今年の1枚、を語れないのでその辺のご紹介を少し。洋楽(主に踊る系)が好きな私が今年特によく活用していたのは海外のネットラジオステーションの www.filtermusic.net/ です。CMとMCは一切なし、厳選した音を流し続ける局が世界中から集められているのですが、その数およそ340局。セレクトがツボにはまれば好みの局は一日中でも聴いていられるのですが、ほとんどの局がリアルタイムのプレイリストを公開していて、流れている曲名、アーティスト名をすぐにチェックできるのも魅力の一つです。
■音楽紹介サイトについてはこちらも海外のものになるのですが、http://www.etmusiquepourtous.com/ こちらのサイトをよくのぞいていました。ほぼ毎日のように更新され、美しいビジュアルイメージとテーマに関する記事、そしてMP3音源がアップされています。「最新の音楽、素晴らしい音楽をお届けするために日々奔走している」と述べる彼らのピックアップしている曲は多少の偏りがあるように思えるもののエッジが効いたクールなセレクト(私見です。スミマセン)。どっぷりはまる音がしばしば上がっていてダウンロードもできるため時々チェックしています。ちなみに「Et musique pour tous」は訳すと「そう、みんなのための音楽」みたいなニュアンスでしょうか。大らかで自由な雰囲気の、音楽好きにはありがたいタイトル。こんなふうにフリーの音源をどっぷり満喫していた偽物音楽ジャンキーの私なのですが、とはいえフリーで楽しめるものばかりを駆使する愛好家が増えると「CDが売れない」→「アーティストが食っていけない、アーティストが育たない」→「音楽好きも困る」、ということにならない?という疑問は浮かびます。
■また、上記のような大規模なネットラジオアーカイブや音楽紹介サイトは海外のものばかりで日本で同様なものは見つけられませんでした。音源をダウンロードできる後者にいたっては著作権法でNGがかかって訴訟沙汰になりかねない。では日本の音楽は著作権法によるプロテクトが厳しいけど海外は無法地帯だからこうなっているの?そうだとすれば、日本の方が音楽業界の成長的には望みがあるといえる?うーん…。どうもそうではないように思えるのです。
■Et Musique pour tous、また同様の音楽紹介サイトでは「ミュージシャンをプロモートする」というコンセプトをあげています。このようなサイトにとりあげられる最近のアーティストを見ていると、アーティスト自らが音源をアップロードし、最初から最後までを聴く事ができるようにしているものもしばしば見られます(ダウンロードできる場合も有り)。有名アーティストではありえないかもしれませんが、プロモーションのために音源をアップすることを厭わないアーティストがやはり増えているように思えます。Youtubeであれ、http://soundcloud.com/ であれ、最後まで聴ける音源がどこかにあがっていればリスナーとしては嬉しいし、口コミもしやすい。気にいった音楽をよりよい音質で聴きたければiTune storeで探して1曲単位で買うこともできるしもちろんCDだって買うかもしれない。私について言えば今ライブに行きたいと思っているアーティストはほとんどがネット経由の情報によるものだったりします。
■音楽を売るために、プロダクションが宣伝するだけではなく、アーティスト自らがリスナーに向けて情報発信し、それらを世界に向けてプロモートするサイトがどんどん増えてきている、こんな土壌がじわじわと広がってきているように思います。2000円のCDが1万枚売れなくなっても、100円の1曲が世界中で20万枚売れれば良い。ライブに来てくれるファンが増えれば良い。そんな環境を整えるために出し惜しみせず音を紹介するサイトが存在するというと理にかなっているように思えます。
■音楽を「モノ」の形で所有するメリットが薄れ続けている今、人々が情報に恵まれた環境下でより音楽を知って気軽に曲をバラ買いする、アーティストへの敬意をこめてどこかからコピーするのではなくきちんと買う(もちろんコピーは違法ですが。)、そんなリスナーの変化が目に見えて変化(弱体化?)している音楽業界にとっての生き残りのキーとなるかもしれません。偉大な過去の音楽のアーカイブが膨大にあることを考えると、アーティストだけでなく業界全体にとっても悪い話ではないように思えます。音楽がデータになった時点で「買わないと聴かせないように囲い込む」のは法律があっても到底無理!なんですから。
■一見どうやって採算をとるのかわからないフリーの音楽紹介サイトですが、サイトのファンの数が膨大になり、無名アーティストを有名にするようなムーブメントを作ることができるのであれば収益のモデルは捻出できるはず。情報サイトはとかく長続きしないと言われますし、データが削除されたらしき跡などもしばしば見られ違法ギリギリ?な感も否めないものの、「良いと思う音楽、最新の音楽、を紹介する」スタイルで(スポンサー色がついたりしないで)がんばって欲しい、と思う1ファンなのでありました。さて、この動き、日本においてはどうなるのかしら…
■今年一番のヘビーローテーション:今さらながら、このリミックスで Phoenix にハマりました。 □Phoenix – Lisztomania (Shook Remix)
■今年一番はっとした Music Video : ちょっと懐かしいアナログな手描きのアニメーションはめくるめく色彩と展開に目を奪われっぱなし。Breakbotは11月に日本に来てたけど(そして行けなかったけど)今一番聴きに行きたいアーティスト。アルバムが出たら買おうっと。 □Breakbot – Baby I’m Yours(Tatamize)

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当サイト の管理人。大学でフランス語を教えています。
FRENCH BLOOM NET を始めたのは2004年。映画、音楽、教育、生活、etc・・・ 様々なジャンルでフランス情報を発信しています。

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