フランスからグローバリゼーションとオルタナティブを考える新しいフランス学

灼熱の魂

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すさまじい映画だ。 冒頭は何の台詞もない。中東のどこかの国で一人の少年がこちらを見つめてくる。ただそれだけ。並ばされ、髪を次々に刈られる少年たち。こちらを凝視する少年の足首に三つ並んだ点状の刺青。

場面は切り替わって、所はカナダ。フランス語圏。双子の姉弟が突如プールでの事故で不可解な死を遂げた母ナワルの遺言を受け取る。ひどく奇妙な遺言だ。姉には父を、弟には兄を捜せといい、二人が見つかるまでは自分は裸で世間に顔もむけず、うつぶせに墓石もなしで葬ってくれという。遺言が果たされて初めて墓石を置くようにという。 双子がこの遺言を果たすまでが描かれるのだが、いくつかのチャプタ―に話がわかれ、章を追うごとにナワルの辿ってきた言葉に尽くせない凄まじい過去が明らかになっていく。

そして今まで存在すら知らなかった父と兄の秘密も。冒頭に登場した少年の運命も。

オリジナルのタイトルは incendis (戦火)なのだが、邦題をうまくつけたと思う。まさに灼熱の大地の灼熱の魂。生まれた場所による宗教の違い。ただそれだけから相争い殺しあい、憎しみがまた復讐を呼び、その途切れない連鎖の炎に人は巻かれていく。 許されない愛によって産み落とし、手放さねばならなかった命をいとしいと思えばこそ、宗教は違えども同じ母親と子供が目の前で殺されるのを見、自分の子も又無残に殺されたと絶望した時、信仰も愛の強さだけ憎しみに変わる。 そして手放された子供も又、懸命に母を探していた。ギリシャ悲劇を思わせるあまりにも皮肉な巡りあいに絶望を覚えるが、それでもなお強い母の愛に、かすかな希望を感じるまさに魂の一本。決して楽しい気分にはなりえないが、ずしんと下腹に来る重量感のある作品。演技と思えない演技もまた素晴らしい。

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身体と心に気持ちのいい事が大好きな、自分に甘いO型人間。 映画は堅すぎるドキュメンタリーをのぞいて、こてこて恋愛物からホラーまでとりあえずなんでも食いついてみる系。