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ドゥルオのサヴォワ人たち – 競売独占権の終焉

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その昔パリにいたころ古書好きの大学の先生にドゥルオ Drouot (メトロ8&9号線に駅あり)の競売会場に行ってカタログを手に入れて来いと言われたことがある。そこでは古本や絵画やアンティークが取引されるが、代々サヴォワ地方の出身者が競売を取り仕切る仕事についている。

1860年、ナポレオン3世がサヴォワ地方をフランスに併合した際に、パリに移住してきたサヴォワ出身者にその仕事の独占権を与えた。そして赤い詰襟のある制服が栄誉ある仕事の象徴となったのだった。 2年前、「ドゥルオのサヴォワ人たち(Les Savoyard à Drouot)」というタイトルで彼らの仕事がTV番組で取り上げられ、脚光を浴びることになった。彼らは競売人の同業者組合 L’Union des commissionnaires de l’Hôtel des Ventes (UCHV) を築き上げ、1世紀半にもわたり、父から子へ、子から孫へと、世襲によって継承されてきた。競売人には110人の定員がある。それぞれに通し番号がついていて、その番号は制服の赤い襟に記される。欠番が出ると無記名投票によって新しいメンバーが選ばれるが、新しいメンバーはその役職を番号と番号に割り当てられた「あだ名」とともに買い取る。TV番組ではそれが伝統を守る美談となっていた。

しかし伝統につきものの古い閉鎖的な体質が伝統的な同業組合を自壊させることになってしまった。彼らに最初の疑惑の目が向けられたのは、2004年、クールベの盗品がサヴォワにある同業者組合の倉庫から見つかったときだった。さらにシャガールのリトグラフ数枚とピカソの絵1枚といくつかのダイヤモンドが見つかったとき、同業組合のトップを含む20人が取調べを受けた。競売にかけるべき美術品や美術作品を横領したという疑いによってだ。また盗品を隠していたという嫌疑も。伝統と一緒に悪習までもが綿々と引き継がれてしまったわけだ。既得権益内で自浄作用が全く働かなくなった象徴的な例と言えるだろう。

もしこの事件が組織的ではなく、個人の犯罪にすぎなかったとしても、長い伝統に終止符が打たれてしまう。競売人の同業組合(UCHV)が長年にわたる独占権を失った結果、競売業界は大きな変化に見舞われることになった。競売には他の取り扱い業者、流通業者も競売に参加できるようになった。しかしUCHVは完全に閉め出されたわけではなく、かつての名称は使わずにひとつの業者として競売に参加することは許されている。

□下記の記事を参照
afp.com 06/08/2010 Détournements d’oeuvres d’art à l’Hôtel Drouot: la fin des “Savoyards”

 

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