フランスからグローバリゼーションとオルタナティブを考える新しいフランス学

今月の「あるうち読んどきヤ!」: 『おじいちゃんのひみつ』

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ブックストアに行くと、まず立ち寄るのが新刊の売り場。世に出たばかりの色とりどりの本達が、Try me!と誘ってきます。しかしスポットが当たっているのも数週間がいいところ。いつの間にか別の棚に移されたり、二度と日の目を見ない運命のものも・・・。そんな新刊たちの中から、コレハ!というもの(そしてなるべくお財布にやさしいもの)を、フリージャンルで紹介していきたいと思います。

 『おじいちゃんのひみつ』 やぎゅうげんいちろう    (月刊かがくのとも 福音館書店 410円)
「8月の新刊」ですが、めったにお目にかかれない楽しい本なので選びました。 「おじいちゃんとはなんぞや?」をテーマにした絵本。オレンジに黒のシンプルな線で表紙いっぱい描かれたおじいちゃんのにっこり顔にまずやられます(しわもばっちり)。

定評ある科学絵本シリーズの一冊らしく、メインは「年取った人」であるおじいちゃんの特徴、生活についてのお話。かみくだいているものの、なかなか読ませます。「おとしよりとはけっこう「うるさい」ものですよ」という指摘には、なるほどねぇとうなづいてしまった。「お年寄りにはこう接しようね」といったお説教調はゼロ。 本題からはみ出た部分が、この本の真のお楽しみ。なにせ本文最初の一行が「ぼくの おじいちゃんは、むかし、おとこまえでした。」ですからね!

脱線、脱線また脱線で、関係ない絵やコメントがぽんぽん差し込まれ、ついにはお話全体が、(メインのキャラクターらしき)若い頃は日本を飛び出て暮らしていたおじいちゃんとその孫や回りの人とのやり取りにシフト。意外なエンディングが待ち受けています。ページのはしっこに書き込まれた大阪弁風味の捨てぜりふ(すきにしなはれ)もいい味出しています。

この本がユニークなのは、おじいちゃん特有のゆるさに満ちていること(昔コドモだったあなたにはきっと懐かしいに違いない)。老いだの病気だの日々押し寄せるものは「まあ、しかたないかぁ」とやり過ごし、XX才男性の個人的悩みや欲といった「私」の部分は棚にあげて、ただの「おじいちゃん」として回りの人に接するときの余裕。マゴに真面目に明るくおふざけやほら話をする気持のゆとり。ポジティブな意味でガードがゆるくなり、おやおや!というファッション(この本にもでてきます)でお出かけしちゃう軽やかさ。

そんなあれこれが積み重なって生じたのほほーんとした感じがこの本の心地よいグルーヴになっていて、ついつい手に取ってしまうんです。 ノリノリなマンガのセリフみたくつい覚えて口にしたくなる調子のよい文に、オレンジを基調とした絵も楽しい。聴いているとうきうきしてくるラテン・アメリカの音楽を思わせる一冊です。良心的な大きめの本屋さんには、まだ少し置いてあるようです。気になる方は本屋さん、図書館へダッシュ!

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GOYAAKOD=Get Off Your Ass And Knock On Doors.

大阪市内のオフィスで働く勤め人。アメリカの雑誌を読むのが趣味。 門外漢の気楽な立場から、フランスやフランス文化について見知った事、思うことなどをお届けします。