2013年も’1.99’ とフランスは高い合計特殊出生率（１人の女性が一生に産む子どもの数）を維持した。「手厚い出産奨励策」と「育児と仕事の両立のしやすさ」が低出生率に悩む日本など他の先進国との大きな違いと言われる。前者に関して言えば、フランスでは政府の補助政策の効果が大きく、出生率を上げることは、結局、予算をどう配分するかという政治的な選択にかかっている。また後者に関して言えば、女性の家事負担が大きい国ほど出生率が低い傾向があるが、仕事と家庭という男女の役割分担は男女を心理的にも引き離してしまい、結果的に子供ができないということも指摘されている。

出生率が発表された2年前の記事を見てみると、経済危機と高失業率の中、「プチベビーブーム」が人々に明るい話題を提供していると書かれていて、フランスはずっと不景気から抜け出せていないが、それが出生率に影響していないことがわかる。当時、サルコジ大統領は、選挙を目前にした演説で「見よ、この人口の躍動感を」と胸を張ったが、堅調な出生率だけがこの国の希望になっているのだろうか。

9月3日にフランス国立統計経済研究所 (l’Insee＝L’Institut national de la statistique) が発表した今回のデータを見てみよう。2013年の合計特殊出生率は少し下がったものの、81万1510人の赤ちゃんがフランス全土で生まれ、80万人という数字を維持した。2012年に比べ1.2％減少したが、1990年台の半ばよりはずっと高い数字を維持し続けている。

1.99人の合計特殊出生率はヨーロッパで最も出生率の高い国の一つであり続けている。先ほど述べたように、経済危機と高失業率のただ中にあるにもかかわらずだ。フランス国立統計経済研究所によれば、それは、家族政策によって恩恵を受ける文化的な特殊性による。それによって出生率が景気に左右されにくいのだ。

ちなみに、日本の出生動向基本調査(2010年)が明らかにするところによれば、「予定子ども数」が「理想子ども数」を下回る理由として最も多いのは「子育てや教育にお金がかかりすぎるから」であった。とりわけ30歳未満での若い世代ではこうした経済的理由を選択する割合が高い。日本の不十分な子育て支援では、不景気になった場合、経済的な不安がさらにかきたてられるだろう。

ところで、フランスでは１人目の子供を産む年齢が徐々に遅くなっている。この傾向は、1970年代半ばから見られる。1970年代、女性は平均26歳で出産したが、2013年には平均30.3歳で出産していた。父親に関してもほとんどが30歳を超えた。つまり2013年に生まれた子どもの71％が30歳以上の父を持つということだ。1967年に許可された経口避妊薬＝ピル、1975年に合法化された中絶が家族計画に影響を与え、「子供を持つ前に、経済的かつ感情的に安定したい、出産と仕事を調整したい、カップルの生活を楽しみたいという欲求が、出産年齢を先延ばしにした」という。

また、2013年フランスで届け出のあった80万5801の出産のうち、1万3898人は多胎児であった。つまり出産全体の1.7パーセントである。10年間で一度に２人以上産む出産の割合が緩やかに増えた。40歳以下の多胎児出産は1.5パーセントから1.7パーセントに、40歳から44歳までの女性は1.8パーセントから2.4パーセントになった。一方、この割合は45歳過ぎの女性では大幅に増えた。この年齢層では2.8パーセントから5.7パーセントに上昇した。これには不妊治療の影響もあるのだろうか。

これもしばしば指摘されるが、2013年に生まれた赤ちゃんのうち、57パーセントは婚外子であり、この割合は1970年半ば以来「著しく増加している」。それ以前に10パーセント超えたのは、2度のみで、戦争の深い影響があった時代、つまり、1915年から1919年の間と1945年においてのみであった。結婚という制度的な縛りより、パートナー＆同居人という緩い関係の方が子供を作りやすいということだろうか。