2013年も残すところあと数日となりました。FRENCH BLOOM NET の年末企画の最後は2013年の注目ニュースです。もんじゅ君がトップバッターです。Jardin さんが世界のニュースからバランスよく選択、cyberbloom はフランスのニュースと地元であった神戸市長選挙について。exquise さんと Small Circle of Friends さんはアート系イベントから選んでもらいました。ちなみにウォール・ストリート・ジャーナル日本版が選んだ2013年の10大ニュースは以下の通りです。1位:米政府一部閉鎖と債務不履行の危機 2位:国内外から注目を集める「アベノミクス」 3位:金融緩和から出口探る米FRB 4位:米国NSA盗聴問題 5位:シリア内戦 6位:中国 薄熙来失脚相次ぐ 7位:IT企業の大型再編 8位:福島第1原発の汚染水問題 9位:ボーイング機事故 10位:世界各地の異常気象 http://on.wsj.com/K9Evti またグーグルが今年一年を検索で振り返る動画も公開しています。https://youtu.be/NUi7UzlAAAY
もんじゅ君(高速増殖炉)
もんじゅの点検漏れ
■もんじゅで1万か所以上の点検漏れがばれたこと私事ですが、ボク高速増殖炉もんじゅの点検漏れはあわせて1万か所以上でした。全体の3割くらいは点検していないことになります……。穴があったら入りたいです。
圧倒的な自民党政権
■特定秘密保護法はじめ、いろんなことがスムーズに決まるようになっているので不安です。来年くるはずの原発の再稼働ラッシュがするっといかないようにと祈っています。
ウーマンラッシュアワーさんがザマンザイで優勝したこと
■台本を書いている村本さんはボクの同郷・福井の人。ほんとに話芸、文芸という意味ですごい才能で、何年も前から応援していたので、優勝されてとてもうれしいです。もっとたくさんの人に知られるようになるといいなと思います。お笑い好きじゃなくても、小説や演劇の好きな人にもこの人の台本としゃべりはいちど体験してみてほしい。おすすめです。
PROFILE:福井県にすむ高速増殖炉。2011年の原発事故をきっかけに、みずからの危険性にめざめて情報発信を始める。わかりやすいニュース解説で人気に火がつき、ツイッターのフォロワーは10万人を超す。著書『おしえて! もんじゅ君』、代表曲『もんじゅ君音頭』など、原子炉でありながら文筆やイラストから楽曲までと、マルチに活躍中。…★朝日新聞掲載の「もんじゅ君のエネルギーさんぽ:2013エネルギー10大ニュース」も ⇒ http://bit.ly/1jPxs8W
bird dog(FBNライター)
■特定の事件というよりも、安倍政権の1年だったということが、何よりも今年いちばんショックな出来事でした。胸を張って出まかせを並べ立てる閣僚たち、私設会議を乱立して勝手に方針を決める手法、96条による改憲が難しいと見れば、解釈でねじ伏せようとする強引さ。挙げ句の果ては特定秘密保護法で、官僚に都合の悪いことは何でも隠せるようにし、福島の公聴会で賛成者ゼロでも、その翌日には衆議院で強行採決。「民意」や「世論」なんてものは無責任な噂にすぎず、「決められる政治」こそが日本を動かす。確かに日本は動きました。でも、どこへ向かって? exquise (@Kabcat FBNライター)
exquise(FBNライター:ベスト展覧会)
■今年は、なぜか日本全国のあちこちへ行く機会にめぐまれ、それぞれ短時間ではあるが現地の美術館を探訪することができた。芸術祭も含めて、いろんな企画展を見られて楽しかった。そのなかで最も印象に残ったのは、愛知県の豊田市美術館での『フランシス・ベーコン展』である。もともとこの画家に対する思い入れはあまりなかったのだが、美術館でその大作を目の当たりにすると、最晩年に至るまで、決して丸くなることがなかったこの画家のパンクな生き方や、作品の放つエネルギーに圧倒された。美術館のシンプルな空間のなかで大きな三連作を多数見られたのもよかった。http://bit.ly/JhsyB4
■ところで、近年、街全体で企画される芸術祭やアートイベントが多くなり、それ自体は嬉しいのだけれど、真夏に開催されるものは少々ツラいことがある。このところの猛暑のなか、あちこちに展示された作品を多くの場合徒歩やレンタサイクル、良くてもせいぜいバスといった移動手段で見て回るのは体力的にかなり苦しい。行き着くのがやっとで、肝腎の作品を楽しむ余裕もなくなる。ボランティアの人たちの健康だって心配だ。開催者としては、夏休みの集客を見込んでのことだろうけれど、西日本で開催するものは秋冬春にしてくれたらなあと思う。
Small Circle Of Friends(アーティスト)
INSAIDE Chanel
■Chanel がドーヴィルから100年を記念し始まったイベント「INSAIDE Chanel」がとても素晴らしい。興味深いのは、その手法。Gif 動画を駆使したソレは、今と昔をイメージするに余りあるクリエート。私如きが何ですが、ちょっと乱暴だけど Chanel の創造性はイノベーション等必要無しと思う程。カールラガーフェルの才能は…と、それこそ私が宣うまでもなくです。http://inside.chanel.com/
PROFILE:サツキとアズマの二人組。1993年、福岡にてスタート。1998年より拠点を東京に移し、Small Circle of Friendsとして10枚のアルバムをリリース。2007年にはファッションブランド「75Clothes」をスタート。サツキはディレクター&デザイナーを務める。http://www.scof75.com
Jardin(@mkyabee FBNライター)
アフリカで始まり、アフリカに終わったオランド外交
■昨年、サルコジ前大統領からエリゼ宮を奪取したオランド現大統領。しかし、改善しない経済情勢に国民の不満は募り、先月の世論調査では21%という史上最低水準の支持率を記録した。内政に苦しむ一方、今年のオランド外交は、アフリカ介入で幕を開け、そして閉じようとしている。1月のマリは成功したが、中央アフリカはどうなるのか…泥沼化し、「オバマの戦争」よろしく「オランドの戦争」とならぬことを祈るばかりである。
決着の見通しが見えないシリア情勢-来年こそ正念場か
■昨年末も取り上げたシリア内戦は、今年も決着つかぬまま、とうとう3年目に突入する気配を見せている。欧米諸国は、アサド政権を批判しつつも、反政府軍とアルカイダ系武装勢力のつながりを懸念し、積極的な支援を躊躇っている。革命を終えたチュニジアやエジプトでは、革命を主導した若者の間で再び不満が高まっているが、まだ戦闘が終わらないシリアはどこへ向かうのか。化学兵器の処理も含め、来年が正念場になるだろう。
『そして父になる』で見えた、俳優・福山雅治の新たな魅力
■今年のカンヌ国際映画祭では、是枝裕和監督の『そして父になる』が、審査員賞を授賞した。なかでも注目を集めたのは、これが初の父親役だった福山雅治。劇中では、普段の雰囲気とは全く異なる複雑な役を演じきり、好評だったとか。同じく今年公開された映画『真夏の方程式』でも、子供への優しい眼差しが印象的だった福山。自分の父親がこんな人だったら、こんな父親になれたら…と、心の片隅で思ってしまうのは人間の性だろうか。
ジョージ王子誕生に熱狂した世界
■訃報や天変地異(ロシアの巨大隕石落下、大島の大規模な土石流災害など)が去年より多いように感じた2013年。そんな中で、日本を含め世界中が歓喜したのがイギリス王室のロイヤルベビー誕生(7月22日)。しかも男の子とあって、イングランドは一気に歓迎ムードに包まれた。父親になったウィリアム王子は、「僕より髪が多い」とジョークをかまし、親バカぶりを発揮しているそう。ジョージ王子の健やかなご成長を祈りたい。
フランスGP、またも復活を逃す
■あまり大きな話題ではないが、最後はスポーツから。来年のF1開催日程が先頃決定されたが、またもフランスGP復活はならなかった。カレンダーから外れ、はや5年。今年も、スパ・フランコルシャン(ベルギー)との隔年開催となるはずが、結局破談になり開催を逃している。かのアラン・プロストも働きかけを行っているようだが、再来年こそ復活なるか。候補地がどこも田舎過ぎて、報道陣からはいまいち不評のようだが…。
cyberbloom(FBN管理人)
フランスとシェールガス
■今年の3月、シェールガスの開発をもくろむ石油会社とそれを拒否するペンシルベニアの農民たちの対立を描いたガス・ヴァン・サント『約束の土地』がフランスで話題になっていた。史上最高値を更新しているアメリカの株価はシェールガス革命に支えられていると言われるが、シェールガスがバラ色の未来をもたらすというイメージには逆らえないのか、アメリカでは『約束の土地』にはあまり客が入らず、批評も曖昧なものばかりだったようだ。実はフランスでもパリからドイツ国境にかけてシェールガスの大量の埋蔵が確認されている。これまでロシアにLNGを依存してきたヨーロッパは喉から手が出るほどシェールガスが欲しいだろうが、2011年に水圧破砕法=フラッキングが環境に与える影響が大きいという理由で開発が禁止された。しかし世界中でシェー ルガスに対する期待が高まり、福島の原発事故で原子力発電に対して逆風が吹いている中で、「水圧破砕以外の技術が開発されれば」とオランド大統領の態度も軟化を始め、緑の党が警戒している。http://bit.ly/12f87pX
半焼けバゲットが好まれるようなったフランス
■バゲットはフランス料理を象徴する食べ物のひとつだが、それが今、文化的危機にさらされている。バゲットと言えば、パリパリとしてカラメル化した外皮が柔らかくふわふわしたパンの身を包み込み、バゲット独特の歯ごたえと風味が絶妙なバランスを生む。それが単なる生焼けパンになろうとしている。「そのままかじって食べるには硬すぎ、歯茎や口蓋を痛める」とか「十分に焼けたバゲットはすぐに風味が落ちる。家で暖め直すと味が良くなる」という理由で、完全に焼き上がっていない「白いバゲット」を求める人が増えているのだと言う。フランスでは1950年代からパンの消費が減少しているとはいえ、パンの中でも特に人気のあるのがバゲットで、パンの総消費量の4分の3を占めている。昔ながらの頑固なパン職人は「客は最高のバゲットを味わったことがないだけ。客の味覚を鍛えるのがパン職人の役目だ」と言い切るが… http://on.wsj.com/19z6M3X
イギリスで馬肉入りラザニア騒動
■今年の2月イギリスで、フランスの会社が作ったラザニアが100%牛肉と表示されていたにも関わらず、中身が100%馬肉だったことが発覚し、大問題になった。同社はルーマニアから 牛肉を輸入したつもりが騙されたと言う。イギリスの売り場から問題のラザニアは撤去されたが、問題は偽装表示ではなく、英国人にとって馬は猫や犬と同様友だち扱いで、馬肉を食べることはぞっとすることのようだ。一方馬肉はフランスでは普通に食べられ、馬肉屋 (boucherie chevaline)もある。ちょうど今年、在仏イギリス人作家ピウ・マリー・イートウェル(Piu Marie Eatwell)が「They Eat Horses, Don’t They?(あの人たち馬を食べるんでしょう?)」というフランス論を出版した。タイトルからもわかるように、馬肉を食べることがフランス人神話の一部を成していることがうかがえる。本書でイートウェルは理想化されて伝えられることの多いフランスの謎を明らかにしようと試みている。彼女は「フランスを他の国々のように客観的に見るのではなく、自らの持つ理想を反映する場所のようなものとして見る義務があるかのようです」と書いているが、フランスは世界のどの国の人々にとってもそういう国のようだ。http://gendai.ismedia.jp/articles/-/34947
抗議する労働者の終焉?
■多数のフランス企業がここ数カ月間でリストラを行っており、過去数年にはなかったことだが、ストライキや政府の介入にほとんど邪魔されることなく、プロセスが円滑に進んでいる。エールフランス・KLM、ミシュラン、アルストム、ルノーなどのフランス企業が、競争力を高めるために国内で人員を削減し、工場を閉鎖し、賃金凍結に合意している。このような変化が起きたのは、フランス経済、特に伝統的な重工業が今年、次第に高まるリストラの圧力にさらされるようになったからだ。ただでさえフランスの経済成長が大半の欧州諸国に後れを取っており、工業生産が減少しているのだから。ところで、フランスの人件費は1時間当たり36.84ユーロと欧州で最も高いランクに入る。ドイツは36.24ユーロとほぼ同額だが、一方イギリスは22.94ユーロ、スペインは22.43ユーロ、スロバキアは8.88ユーロ、ルーマニアは3.82ユーロ。フランスの労働者がいかに守られているか、バカンスの国がどうやって成り立っているのかがわかる。多くの労組は今のフランスの経済状況を見れば雇用喪失は不可避だということを認め始めたようだ。昔のように、労組による非常に強力な抗議運動が見られない。むしろ、フランス産業の危機に直面して、雇用主とともに解決策を模索する動きがある。フランス政府も雇用問題に口出しするよりも、競争力を高めようというメッセージを強く発するようになった。これは大きな変化ではないだろうか。http://bit.ly/18yAGTV
神戸市長選挙
■今年の10月、地元の神戸で市長選挙があり、当選した久元市長と5000票差で及ばなかった樫野候補の動きに注目し、集会にもいくつか参加した。政治参加とは公約やマニフェストというメニューの中から選ぶことでは決してない。自分から関わり、動きを作り出すことだ。今回は神戸の大学生が自主的に「若者投票率向上プロジェクト」を立ち上げ、ネットやフリーペーパーで投票を呼びかけ、候補者との公開討論会を企画した。また「選挙割り」という勝手連の運動もあった。選挙に行ったという証拠写真を出せば、協賛する店で割引サービスを受けられる。前者が市民的な自覚に訴える王道だとすれば(規律訓練的)、後者は買い物や外食のついでに投票に行くという、消費者としての延長線上に投票を位置づけている(環境管理的)。ともあれ、地元の現状に不満や物足りなさを感じ、変えたいと思っている若者たちは確実に存在している。風営法の規制対象からダンス項目の削除を求める神戸のヒップホップな若者たちが樫野さんを囲む、という趣旨の会に参加したが、活動の場を求めて訴える彼らの姿は切実で、心を打つものがあった。
■一方で彼らの政治的な要求が細分化されたミクロなものであることを示している。候補者は、要求のすべてを政策に反映できないにせよ、小規模かつ多様なグループと対話せざるを得なくなっている。公約のメニューに載りにくいものだとすれば、要求を反映してもらうために市民は自ら積極的に動き、何が問題なのかを自分たちでアピールする必要がある。時代はソーシャルメディアを基盤にした双方向の選挙に移行しつつある。そのためのツールも十全に用意されていて、候補者も市民もそれを活用しない手はない。
■「若者投票率向上プロジェクト」が功を奏したのか、投票率は31・51%から36・55%にアップした。36%台はまだまだ低いが、神戸はそれなりにうまく回っているという証しなのかもしれない。しかし様々な現場に立ち会っている人たちは街の綻びに気がつていて、自分たちで修繕するしかないことに、また自分たちで問題を可視化しなければならないことに、気が付き始めている。今年のメディアティックな国内ニュースとして、NHKの連ドラ「あまちゃん」とヒットと、AKB48の「恋チュン」動画の拡散があった。前者はドラマの中に様々なネタをしこみ、議論を自己増殖させ、地方の復興にも貢献した。後者においては様々な企業や自治体がアピールを兼ねて動画に参加した。これらにもソーシャルメディア時代の人々の動員の仕方のヒントを見つけることができるだろう。
cyberbloom
当サイト の管理人。大学でフランス語を教えています。
FRENCH BLOOM NET を始めたのは2004年。映画、音楽、教育、生活、etc・・・ 様々なジャンルでフランス情報を発信しています。
Twitter → https://twitter.com/cyberbloom