FrenchBloom.Net フランスをキーにグローバリゼーションとオルタナティブを考える

℃-ute単独パリ公演+ハロプロの現在

text by / category : 音楽

℃-ute(キュート)は2005年に結成したハロプロ所属の5人組女性グループ。7月5日にパリで単独ライヴ、さらにジャパンエキスポに招待され握手会を開催、共に大盛況だった模様。ハロプロってモー娘。とかのやつだっけ、というのが世間一般の反応かもしれませんが、今ハロプロが物凄く充実しているのです!

8 Queen of J-POP(初回生産限定盤A)(DVD付)℃-ute のパリ公演は、フランス人女子高生の署名活動がきっかけで実現。彼女の両親がモーニング娘。のファンで、幼少の頃にハロプロキッズの動画を見て ℃-ute のファンになったとのこと。会場となった「ラ・シガール」はエリック・クラプトンやプリンスも公演を行った老舗のホールで、約1300人の観客の中には台湾やペルーから駆け付けたファンもいたとか。

Youtube のハロプロ公式チャンネルにてライヴの様子が紹介されているが、ファン達のコール&レスポンスは完璧で、大盛り上がり。こういったアイドルのライヴのノリはやはり日本独特の文化であって、海外ファンにはそれも大きな魅力のようだ。

長く活動しているが、国内での ℃-ute の知名度は決して高くないように思う。メンバー3名の脱退など紆余曲折あったが、「もっと売れていいはず」というフレーズがこれほど似合うグループもない。ルックスはもちろん歌、ダンス共に非常に魅力的で鍛えられており、グループ名そのもののキュートな女の子たちだ。ライヴでのパフォーマンス力を磨き徐々にファンを拡大してきて、女性ファンも急増。念願の武道館公演も9月9・10日に実現した。

ちなみに9月10日は「℃-uteの日」。 最新両A面シングルは『悲しき雨降り/アダムとイブのジレンマ』、特に『悲しき雨降り』のMVはアイドルに拒否反応がありそうな人にもお勧めできそうな、洗練された仕上がり。 http://youtu.be/LT10sAB7jm4

5人ともそれぞれ個性的で心惹かれるが、個人的には鈴木愛里に注目。愛らしいルックスや定評ある歌唱力はもちろん、トータルな表現力が素晴らしい。表情の作り方、指先まで気を使う細やかさは同時に相当テクニカルでもあるはずだけれど、全てが自然体に見えてしまう。全力でパフォーマンスしているけれど、「頑張ってます」感は無く、余裕さえ感じられて涼やか。醸し出される品の良さと独特の存在感がある。

しかしながら、デビューの頃の ℃-ute そして Berryz 工房を見た時は正直メンバーたちが幼すぎて全く興味が持てず、むしろその幼さゆえに完全に引いてしまったものだ。両グループがこれほどまでに魅力的に成長するとは全くの予想外でした。

Berryz 工房もすでに海外進出しており、タイや台湾で公演を行っている。
モーニング娘。も2010年のジャパンエキスポにてライヴを行ったことがあるのだが、その頃の娘。は国内でのメディア露出が激減し、完全に落ち目と思われていた頃。せっかくのパリ公演もそれほど注目されないどころか、海外進出はむしろ苦肉の策として痛々しく映っていたように思う。だが彼女たちは決して腐らず、当時リーダーだった高橋愛を中心に迫力あるライヴを繰り広げ、成長し続けた。youtube には「モー娘。がかっこいい!」といった類の動画が溢れているので、ぜひ一度ご覧頂きたい。いわゆる従来のアイドル像しか持たない人が見れば、新鮮な驚きがあるはず。特に高橋愛の歌唱やダンスはずば抜けてカッコよく、魂がこもっている。CDよりライヴでの生歌の方が断然魅力的。

そんなモー娘。の全力での生歌やパフォーマンスを目にし、℃-ute や Berryz 工房も負けじと成長した。そしてそんなハロプロに憧れる子たちが高い意識を持って研修生や新メンバーとして入ってくる、という好循環を生んでいる。

不遇の時期を乗り越え、最近再注目されてCDセールスも伸びているモーニング娘。だが、ファンである友人は「再ブームなんか来てほしくない、ブームは終わるから」と嘆いていた。アイドルであるからには芸能人としての成功も必要だが、歪な形で消費されることのないよう心から祈るばかりだ。

ちなみに2012年に Buono! (Berryz 工房の嗣永桃子と夏焼雅、℃-ute の鈴木愛里のユニット)がやはりパリ公演を開催し、約1000人の観客を集めている。ハロプロ系のYoutubeのコメントには海外ファンの書き込みも多く、新曲のMVが英語の字幕付きで公開されるのも効果的なアピールになっているようだ。新しくデビューするJuice=Juiceも期待大。特に中心メンバーの宮本佳林はちょっと見当たらないほどの逸材だと思う。今後の成長が楽しみ。

モーニング娘。といえば Love マシーン、という方はぜひこちらを。再躍進のきっかけとなった2012年7月発売の『 One・Two・Three 』。なぜリボン?な衣装、不揃いな体型、妙に乙女チックな歌詞にクールなデジタルサウンド、そして印象的なフォーメーションダンス。全てが絶妙なバランスで、かっこよし。ぜひヘッドフォンで、大音量で聴いてほしい。何度も何度も聴きたくなる中毒性あり。
http://youtu.be/WzvwlrLkQIs

そして最新両A面シングル『わがまま 気のまま 愛のジョーク/愛の軍団』。躍動感ある現在の娘。の魅力全開、何より現リーダー道重さゆみの美しさが半端ない。『わがまま~』のビンタを取り入れた振り付けも秀逸。
http://youtu.be/MhH_ucrPMZc

つんくの詞は受け入れがたい時もあるが、特にモー娘。のシングルには不思議な説得力がある場合が多い。恋愛の歌を装っていても、その時のグループやメンバーの状況に絶妙にリンクし、さらに一般女性の心理にも通じる何かがある。それもモー娘。長寿の理由のひとつかな、と思う。

寄稿:cespetitsriens



posted date: 2013/Sep/13 / category: 音楽
cyberbloom

当サイト の管理人。大学でフランス語を教えています。
FRENCH BLOOM NET を始めたのは2004年。映画、音楽、教育、生活、etc・・・ 様々なジャンルでフランス情報を発信しています。

Twitter → https://twitter.com/cyberbloom

back to pagetop