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FRENCH BLOOM NET 年末企画(3) 2021年のベスト映画

text by / category : 映画

第3弾は20201年のベスト映画です。ちなみにフランスの老舗映画雑誌『カイエ・デュ・シネマ』の2021年のベスト10には、レオス・カラックス『アネット』、濱口竜介『ドライブ・マイ・カー』、ウェス・アンダーソン『フレンチ・ディスパッチ』、ポール・バーホーベン『ベネデッタ』などが入っていました。

不知火検校

 護られなかった者たちへ(瀬々敬久監督)
映画の冒頭から尋常ではない雰囲気が漂っており、それが一瞬も緩むことなく、最後まで持続する。並々ならぬ緊張感を強いられる観客は、この世界の中で様々なことを感じ、思いを巡らすことになり、最後は何か別の次元に辿り着いたかのように作品を観終えることになる。原作は中山七里による社会派ミステリー小説。しかし、これはミステリーという範疇に収まるようなものでは到底なく、それを遥かに超えた次元に逢着している。この映画の射程は、単に東日本大震災という歴史的な出来事を扱ったという時事性のみに収斂するものではない。人間の「生」の根源的なあり方に迫ろうとする監督の強い意志、そして俳優たちの名演技には唸らされた。佐藤健、阿部寛、そして、何といっても清原果耶には圧倒される。

 ドライブ・マイ・カー(濱口竜介監督)
師である黒沢清監督の『スパイの妻』(2020)では脚本を担当し、黒沢にヴェネツィア映画祭銀獅子賞をもたらした濱口が、今度は自身で脚本・監督をこなし、カンヌ映画祭で脚本賞(大江崇允と共同)を受賞することになった作品。濱口は今年、別の監督作『偶然と想像』もベルリン映画祭で審査員グランプリを受賞しており、まさに絶頂期を迎えている。『ドライブ・マイ・カー』は村上春樹原作という話題性はさておき、演劇、それも一つの戯曲の筋の運びを映画の中に完璧なまでに取り込むことに成功した稀有な例として記憶されるであろう。演劇という西洋芸術の本丸とも言うべき部分に鮮やかに切り込み、その「映像との融合」を彼らの予想を遥かに超える高度の水準で実現したことは間違いない。秋にはイザベル・ユペールと公開対談を行い、映画の真実のありかを巡ってこの女優と堂々と渡り合った濱口竜介。この監督の時代は今後も長く続きそうだ。

すばらしき世界(西川美和監督)
『永い言い訳』以来、5年ぶりの監督作品。原作は佐木隆三の『身分帳』。「出所した元ヤクザが社会復帰を果たすために苦闘する」と物語をまとめてしまえば、単に社会派の作品ということになる。しかし、そのこと以上に、この映画の魅力は監督の絶妙な俳優統御のあり方に存する。西川美和はとにかく俳優を選ぶ「目」が尋常ではない。どんな役者もその映画の世界に見事に溶け込ませてしまう。役所広司、仲野太賀、六角精児、北村有起哉、長澤まさみ、白竜、キムラ緑子、安田成美。我々はこれらの俳優を色々な場所で、様々な作品で見ている筈なのだ。しかし、『すばらしき世界』を我々が観ると、彼らが「この映画の中にしかいない、唯一無二の存在」であるかのように思えてしまうのは一体何故なのか。まさに、これこそが西川の魔術なのであろう。驚異の作品と呼べる一本だ。

タチバナ

▶『ファーザー』(+『悪なき殺人』)
 アンソニー・ホプキンスが史上最高齢で主演男優賞に選ばれたあのオスカー受賞作品。会話はほぼすべて英語だけど、監督のフロリアン・ゼレールはフランスの劇作家で、自分の戯曲を元に、みずからメガホンを取った作品で、しかも英仏製作なので、これはフランス映画にカウントしてよいはず。本作の技術的な側面について自分はそれほど語れないし、なるべく予備知識を入れないで観た方が楽しめる映画なので、内容には触れないようにするが、個人的には、本作のように、複数のレイヤーが折り重なった作品が好きなんだと再確認できた。何度か見直すと作品の精巧さに気づかされるので、サブスクの有料レンタルなどで観るのがよいかと。
 また、序盤で提示された謎が徐々に解けてゆく映画という非常に広義の括りで言うと、仏独製作のフランス語映画である『悪なき殺人』も(邦題の「悪なき」は言い過ぎだが)、構成が巧みで印象的だった。こちらは、数年前の映画祭で『動物だけが知っている』という原題に近いタイトルの方で観た人がけっこういるのでは。フランス山間の僻地で起きた事件をめぐって、それに何らかの関わりのある登場人物ごとのお話が、(『羅生門』風というより)オムニバス風に描かれてゆく。最終的に事件の謎が解けるだけでなく、謎解き以外の人間模様や撮影技法も十分に楽しい。
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▶『プロミッシング・ヤング・ウーマン』(+『パーフェクト・ケア』)
 今年、もっとも度肝を抜かれた作品。女性に対する性暴力をテーマにしている側面もあるが、そこを中心に語られてしまうと本作の凄みがぼやけてしまう。ぐいぐい引き込まれる展開でありながら、一体、自分が何を見せられているのか途方に暮れる、奇跡的なまでのジャンルミックス。ウーマンエンパワーメントのような、リベンジムービーのような、サイコパス物のような、スリラーやホラーのような、ダークコメディのような、アメリカンニューシネマのような…それでいて、感動が込み上げるラブストーリーでもあって。本作のあとではリドリー・スコットの『最後の決闘裁判』もかぎりなく見劣りする。
 これで早くも今年のベスト映画確定のつもりで構えていたところ、12月に観た『パーフェクト・ケア』が別の意味で大傑作だった。今年、アメコミ映画の『エターナルズ』について、ツイッター上で、多様性の導入が作品の魅力を損なっているといった趣旨の感想が炎上していたが、本作はそれに対する見事なレスポンスになっているように思う。主人公たちが、レズビアンや障害者であって設定に多様性がふんだんに込められていながら、登場人物が全員悪人という『アウトレイジ』さながらのピカレスク物で、深く考えなくても、とにかくストーリーがめっぽう面白い。
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▶『偶然と想像』(+『ドライブ・マイ・カー』)
 フランスでは早くも、『ハッピーアワー』と『寝ても覚めても』と『PASSION』の3作を収めたDVDボックスが発売されているくらい評価が高いわけだから、濱口竜介監督の作品はもはやフランス映画の一種だと言っても過言ではない。というのは冗談だが、今年公開の2作も素晴らしかった。スケール感で言えば『ドライブ・マイ・カー』をまず挙げるべきかもしれないが。中年になってますます強く感じる、取り返しのつかないワーニャ的な悔恨は自分の心にも響くところがあった。しかし濱口がどれだけ脚本を磨き上げたところで、村上春樹の原作短編たちが持つ限界みたいなものがうっすら透けて見えたし、濱口自身が描き出す、演じることが持つセラピー効果みたいなものが少々大げさに思えてしまう。
 いやそもそも、濱口作品はどこか芸術的な名画の風情をただよわせているものとばかり思い込んでいた自分にとって、『偶然と想像』の衝撃は大きかった。低予算かつ10人以内くらいの少人数で撮影されたらしい、会話劇主体の40分弱の短編3本が、それぞれ実に魅力的で、しかも上映中に客席から忍び笑いや爆笑が絶えないたぐいの面白さだった。芝居好きの知人に言わせると、濱口は映画と演劇の中間にいる人だそうだが、それでいて『偶然と想像』には、映画ならではの撮影上のトリックが各作品に仕込まれているのも見どころだろう(そして三つ目の短編がどこか『ドライブ・マイ・カー』に通じている)。ただし、二つ目の短編に出て来るフランス文学の大学教授が、朴訥な人柄のわりに、往年のニューアカ文化人みたいな襟なしのYシャツを着て、風貌がかぎりなく高橋世織っぽいのは、濱口がどこまで狙った笑いどころなのだろうか。
 本作のパンフレットが1200円もしてやけに高いと思われるかもしれないが、ロメール映画にかかわったマリー・ステファンとの対談とか、濱口組の役者たちの座談とか、いろいろ盛りだくさんで、値段のわりにお得でしたよ。

▶等外賞
 オスカーの短編ドキュメンタリー映画賞を獲ったアメリカ製作のフランス語映画『コレット』が、ドキュメンタリーとは思えないほど、シリアスかつドラマチックだった。しかもこれがVRゲームの一部だというのだから驚きだ。YouTubeで簡単に観れるので未見の人には強く勧めたい(ただし英語字幕は、作品内のフランス語の会話のニュアンスを繊細にくみ取っているとは言いがたいため要注意)。
https://www.youtube.com/watch?v=J7uBf1gD6JY
 その他のオスカー受賞作では、長編ドキュメンタリー映画賞に選ばれた『オクトパスの神秘 海の賢者は語る』が、予想外な方向で良作だったし、最優秀短編賞のループ物『隔たる世界の二人』にも唸らされた。
 フランス映画では、ドキュメンタリー作品の『リトル・ガール』も忘れがたい。ゲイを公言する監督が、性別違和の子どもやその家族と十分に信頼関係を築いた上で、きわめて真面目な意図で撮っていて、なおかつ映像も美しい。にもかかわらず、結果的には、実在の子どもの性的違和を観衆に晒しているという意味で、アウティングにもなってしまっている取り扱い注意の作品である。日本の配給側もその辺りを十分に配慮していて、パンフレットでは、監督とは距離を取りつつ、批判的なレビューや、心理学者による性別違和についての啓蒙的な解説が収められているので、本作は、パンフレットとともに味わうべき作品だろう。ちなみに、作中で、主人公の子どもが、本作のタイトルと同じPetite Filleという文字が大きくプリントされたTシャツを着ていた。ここからタイトルが取られたということなのか、監督が仕込んだ本作への自己言及なのか、あるいは単なる偶然なのか。ありふれたフレーズだけに判別しがたい。
 そうそう、少し前に観たので印象が薄れてきているが、『由宇子の天秤』は、ヒロインが決して善人でもないハードボイルド物という意味で、『パーフェクト・ケア』に通じるところがあった。
 最後に、演劇と映画の接点みたいなところについても言及しておきたい。それが、徳島市立高等学校演劇部が作った映画『水深ゼロメートルから』である。
https://www.youtube.com/watch?v=EWg2WNDWPSA

これは、もともとは同校3年生の中田夢花による戯曲で、徳島ということで阿波踊りにおける男踊りと女踊りをめぐる問題に切り込んでいる。脚本が2019年に文部科学大臣賞を獲って、2020年度の高校演劇全国大会に推薦されたものの、新型コロナウィルスの影響で全国大会が中止となって、上演が映像配信に変わったため、演劇ではなく映画寄りの形で再構築したそうだ。それがYouTubeにアップされたのが昨年2020年。その後、大学生になった中田が、劇団のスタッフやキャストとともに、今年2021年に、念願の舞台化を果たすというエモいイベントが発生していたにもかかわらず、情弱の自分はこの上演に立ち会えなかった。映画版の方に、あまりクオリティを求めるのは酷だが、問題意識と脚本には可能性の片鱗が垣間見える。
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exquise

『燃ゆる女の肖像』(セリーヌ・シアマ)
まずは映像の美しさに目を奪われ、そのまま息を呑むような絵の連続が最後まで続くことに圧倒された。ブルターニュの荒々しい自然や、明るい日差しや暗闇によって表情を変える館のなかに女性たちそれぞれが非常に映える撮影方法に感心した。
恋する二人の描写も素敵だが、もう一人の主要人物である女中のマリーがよいアクセントになっていて、特に母親が不在になってから、この3人が「(エロイーズが過ごした修道院のように)みんな平等」である空間が実現されるシーンがとても好きでした。
オルフェウスの物語を引用したエロイーズとの別れのシーンやその物語とずっと強調されていた視線の問題が結びつけられた再会のシーンも秀逸で、震えました。音楽の使い方もすばらしかった。

『DUNE / デューン 砂の惑星』(ドゥニ・ヴィルヌーヴ)
SFそしてファンタジー系は得意ではないのだが、この作品は冒頭から心をわしづかみされたように惹きこまれ、2時間半近くの上映時間もほとんど気にならなかった。
何よりも美術がすばらしく、特に砂漠の表現が秀逸。砂埃の向こうにポールがうっすら映るシーンなどは鳥肌が立つようだった。衣装やインテリア、乗り物やガジェットも非常にスタイリッシュだし、砂虫も毒々しい怪獣とはほど遠いシンプルかつ印象に残るデザインで、映画のどの場面を取っても美しかった(もちろんティモシー・シャラメ君も)。
『ブレードランナー』のときはあのキッチュな世界と合わないように感じたが、今回は監督の生真面目な性格と原作の世界観が非常にマッチしていて重厚壮大な作品に仕上がっている。とはいえこの作品はまだ導入部で終わっているのでパート2がとても楽しみ。

『パワー・オブ・ザ・ドッグ』(ジェーン・カンピオン)
待望のジェーン・カンピオン新作。セリフが少ない、というわけではないのだが、肝心なことはほとんど言葉にされず、逆に映像によりそれを語る、というスタイルで、映画という媒体の魅力を存分に味わわせてくれる。小さなエピソードをつなげていくと、おのずと隠された物語が浮かび上がってくるのはさすがだ。広大な自然の景色や重厚な家屋内部を撮すカメラワークも美しい。
加えてキャストもすばらしく、「マッチョな男らしさ」に囚われた複雑な人物を演じたベネディクト・カンバーバッチの力量はもちろんのこと、それに対抗するピート役のコディ・スミット=マクフィーの得体の知れない存在感もすごい。弟夫婦を演ずるジェシー・プレモンスとキルスティン・ダンストのリアル夫婦もよかった。不穏さを掻き立てるようなジョニー・グリーンウッドの音楽も印象に残る。

このほか『アメリカン・ユートピア』(スパイク・リー)も忘れられない作品です。映画館の椅子に座りながら自然と体が小躍りしてしまうワクワクする時間を体験できました。

丸山有美

JUNK HEAD(堀貴秀監督)
のっけから「フランス映画じゃないのかい!」と突っ込まれそうですが、ええ、そうです、まずこちらを挙げたいのです。心からの称賛を込めて「クレイジー」とお呼びしたい堀監督が7年という歳月をかけてお一人で、文字通り手づくりで、私財とQOLを投げ打ち、ひたすらこつこつと完成させた近未来SFストップモーションアニメの力作……いや、怪作です。常軌を逸してる(称賛を込めて)としか思えないクリエイション、くだらな過ぎる(称賛を込めて)ユーモアにやられました。FBNにふさわしい小ネタをむりやりねじ込むとすると、主要キャラである3バカ兄弟がそれぞれアレクサンドル、ジュリアン、フランシスというフランス風の名前であるところでしょうか。「地獄の三鬼神」の異名を持つ彼らの戦士としての生き様がかっこよすぎて惚れます(わたしは図らずも泣いた)。劇場で売られていたパンフレットも監督自身によって編まれたこれまた力作。ほとしばる「これは話しておきたい」感も狂おしい制作裏話の数々に引き込まれ、帰宅の電車で読むことをやめられず乗り物酔いしたことまで忘れ難い2021年最強の映画でした。

THE GUILTY ギルティ(グスタフ・モーラー監督)
またも「フランス映画じゃないのかい!」と突っ込みを頂戴すること必至のデンマーク映画、しかも2021年の新作でもありませんが(日本劇場公開2019年)、コロナ禍のおうち映画タイムに出合った数々の作品のなかでもっとも記憶に残ったのがこちら。深夜の警察のコールセンターを舞台に繰り広げられるスリリングな物語です。訳あって刑事から緊急コールセンターのオペレーターに配置換えされた主人公が終業時間の直前に受けたのは、拉致されていると思しき女性からの不穏な様子の電話。全編画面に映っているのはほぼ主人公のみ、さらにほぼ電話による会話のみで繰り広げられる誘拐事件の解決劇は、限られた情報ゆえに助長される思い込みと見過ごしによって悲惨な局面に追い込まれ、オセロの石がすべて裏返るような予想外の結末へ…。タイトルに込められた意味を含めて緻密に練られた脚本、一秒も飽きさせない主演俳優の演技を大いに楽しみました。

やすらぎの森(ルイーズ・アルシャンボール監督)
3本目にしてようやく出ましたフランス(語)映画!
北米のフランス語圏、カナダはケベックを舞台に森とひとが織りなす浄化と再生の物語です。春夏秋冬の呼吸を繰り返し、ときに人や動植物を焼き尽くす山火事に見舞われながらもふたたび命を芽吹かせる森。傷ついた者たちを匿うシェルターとなり、人生にしばしの猶予を与えてくれる深い森の奥で、それぞれに理由を抱え、隠れて暮らす三人の男たち…。ある朝、老齢の彼らのうち画家だった一人が亡くなり、残る二人のもとへ無理やり精神病院に入れられて60年も人生を奪われていた一人の女性が連れてこられます。時を同じくして、この森でかつて多くの死傷者を出した山火事について調べる若い女性が彼らの前に現れ、森の静かな生活は変化を迎えることに。派手さは一切ありませんが登場人物各々の選択に胸を打たれる作品です。トム・ウェイツ「タイム」、スコットランド民謡の「The Parting Glass(別れの盃)」をはじめ、不器用で言葉少なな登場人物の心を代弁する音楽のチョイスもベタながら心憎い。

Small Circle Of Friends

デッド・ドント・ダイ The Dead Don’t Die 監督 : ジム・ジャームッシュ Jim Jarmusch 2019
ゾンビ映画なんだろうけれど全く怖くないです。コメディというほど大笑いしたりするわけでもなく、なんだか少しずつ可笑しい。途中から「これは映画で自分らが役を演じているのだけれど、こんな展開台本に書いてなかった!」とビル・マーレイがキレはじめるところも別に驚きも不思議にも思わなかったし、ティルダ・スウィントンがUFOに乗って行っちゃうところもなんだか自然に感じて、ただただ心地良さだけが残りました。この感覚ってなんだっけ?と思い巡らせてみれば『ストレンジャー・ザン・パラダイス』を観た時に感じたものと同質でした。何かいろいろなことが起こっているのだけれど、結局なんにも残らないあの感じ。自分たちはこういう映画が好きなのかなぁ、ということはジム・ジャームッシュが好きなのかなぁ、とか思いましたけれど、そこまで映画と”熱狂的”に向き合わなくても許される感じが好きなんだと気がつきました。
https://longride.jp/the-dead-dont-die/…

フレンチアルプスで起きたこと Turist 監督 : リューベン・オストルンド Ruben Östlund 2015
恐ろしい映画です。ずっと身につまされる感覚。もちろん同じような経験は無いのですが、もしそうなったらどうなるか?と思ったらいたたまれない気持ちになります。どんなホラー映画よりも怖いです。そして人間ってのは不完全なものなんだな、映画のヒーローなんて映画の世界だけのものなのかな。なんて事を映画を観ながら思っていました。とにかくこれはどうしたって遺恨が残るし、許す許さないの問題じゃないし、本当の意味でのハッピーエンドなんて望めそうにないです。最後のバスのシーンもダメ押しで「あぁぁ…」と気持ちが沈んじゃったし。たとえば友達から「いや、こういう事があってね」と話されたとしたら、なんといって返したら良いのかわからなくなると思います。でも面白いんだな。映画って不思議ですね。
https://magichour.co.jp/turist/

街の上で 監督 : 今泉力哉 2021
面白いです。そして懐かしい。なぜなんだろう?下北沢という街の”あの感じ”を知っているからかな。いや知らなかったとしてもきっと同じように「懐かしかった」はずです。主人公が「なにやってんだずっとこの人は」という感じでオロオロふわふわしていて不器用だなぁと思う反面「でもこれが普通かもな」と納得します。他の登場人物も、自分も含め身の回りの人を思い浮かべてみて「いるいるこういう人いる」と感情移入します。中盤の2人の30分間に及ぶやりとり、後半の4人プラス1人のごちゃごちゃなやりとり、それをニヤニヤしながら観ちゃって「ああぁ”会話”っておもしろいんだな」と当たり前のことを再認識したのでした。何回でも観たい映画です。 https://machinouede.com

cyberbloom(FBN管理人)

フランソワ・オゾン『Summer of 85』
今年は一本だけ。今年映画館に見に行った唯一のフランス映画。「85年の夏」というタイトルとザ・キュアやロッド・スチュワートの音楽に惹かれた。私の「85年の夏」と言えば当時の学生らしく信州のペンション(笑)で遊び呆けていたことが思い出されるが、Boy meets boyではなくとも、若い時期の思い入れの激しさや不寛容さには誰にも覚えがあるだろう。ネクロフィリアや墓暴きにまで暴走する、若さゆえの肉体の厚みへの固執にも。85年が遥か彼方に遠ざかってしまった自分の現在地からは、照りつける太陽を背景にした主人公の初恋の顛末は眩しすぎるのであった。



posted date: 2022/Jan/03 / category: 映画
cyberbloom

当サイト の管理人。大学でフランス語を教えています。
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