しかしバーホーヴェンは巨匠なんだろうか。
なぜか巨匠の名を聞くとわたしの頭には「中二」の二文字が必ず浮かんでくるのだが。
確かに「氷の微笑」は良かった。しかし、あれは主役を演じたシャロン・ストーンの妖気漂う美貌とその裏の冷たい知性があってこその作品で、もし凡庸な女優が演じていたらただ脚を組み替えているだけのつまらんエロ映画である。
巨匠の「インビジブル」なんぞはもうまさしく「中二」である。透明になった男のやることのすべてがまさにわっかりやすく中二すぎてもう笑うしかない。ほかにも筋肉もりもりの美形の若者たちがただひたすらに巨大な虫と戦いつづけるスターシップトゥルーパーズも「中二」である。
そんな「中二」から一番遠いところにいる女優、イザベル・ユペールが主演というのでどうなってんのかねと思ったけれども、さすがユペール。共演者をことごとく喰うだけでなく監督も喰っちゃったのね、それゆえ、巨匠の作品でありながら、そうでなくなっていて見事です。
御年60にして黒いドレスから覗く白い腿の色気もすごいけど、何よりもどんなときにも笑っていないユペールの目が怖い。誰一人として共感できないキャラの中で、結局一番まともなのはバカ息子一人?
結局モンスターは誰かと言われれば間違いなくユペールです・・・
作品情報
『エル ELLE』(原題:Elle)は、2016年にフランス、ベルギー、ドイツで製作されたスリラー映画。監督はポール・バーホーベン、主演はイザベル・ユペール。この作品は『ベティ・ブルー』(37°2 le matin)の原作でも知られるフィリップ・ディジャンが2012年に発表した小説『Oh…』を原作としている。第69回カンヌ国際映画祭のコンペティション部門に出品され、批評家から極めて高い評価を得た。特に、ミシェルを演じたイザベル・ユペールの演技は「キャリアベストの演技」と賞賛され、第89回アカデミー賞の主演女優賞にノミネートされた。
公式サイト:http://gaga.ne.jp/elle/
黒カナリア
身体と心に気持ちのいい事が大好きな、自分に甘いO型人間。 映画は堅すぎるドキュメンタリーをのぞいて、こてこて恋愛物からホラーまでとりあえずなんでも食いついてみる系。