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北陸新幹線開通に沸く金沢に行ってみた

text by / category : バカンス・旅行

北陸新幹線の開通で話題の金沢に降り立ちました。関西から来たので、新幹線はまだお預けです。JR金沢駅を出るとすぐに2本の柱が鼓の形をしている巨大な門が出迎えてくれます。屋根の部分は何だかワッフルのよう。まず北鉄バスの周遊券を購入し(3回乗れば元が取れる)、まずは、ひがし茶屋街に向かいます。

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最寄りのバス停で降りると、桜が満開の浅野川が目に入り、ちょっとセーヌ川のような趣。ヴェリブぽい自転車の駐車エリアもありますした。古い街並が残る、ひがし茶屋街は雰囲気満点です。

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着物を着て番傘をさした美男美女のカップルが歩いていましたが、何かの演出だったでしょうか。自由軒という洋食屋さんのオムライスも堪能しました。早めの時間に入って大正解。食事を終えて出る頃には、順番を待つ長い人の列ができていました。

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ランチをいただいたあと、午後2時に予約を入れた妙立寺に向かいます。妙立寺は日蓮宗のお寺ですが、加賀三代藩主の前田利常が1643年に金沢城に近くにあったものを現在の寺町に移築しました。当時、徳川幕府が名実ともに日本全国を統一するために、多くの大名を取り潰しました。それを恐れた利常は徳川家から嫁を迎え、母親を人質に出し、鼻毛を伸ばしてバカ殿を演じました。謀反を起こす気は毛頭ないと、幕府に自らの忠誠を示すためです。

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利常はその裏で、幕府からいつ攻め込まれても応戦できるように、多くの武士が起居できる寺院群を、現在の寺町に新築し、その中心に監視所の役割を持つ妙立寺を建立しました。

当時は幕府の命令で3階建て以上の建築は禁止されていました。妙立寺は外観が2階建てですが、内部は4階建て7層になっています。また湿った雪の重みにも耐えられるように、重力を分散させる曲がった梁を使った極めて頑丈な構造になっています。最上階の望楼は眺望にすぐれ、監視塔の役割を果たし、大きな井戸は金沢城への抜け道になっていると言われ、出城としての要素を多く持っています。また忍者寺という異名を持つように、落とし穴や隠し階段などの仕掛けもあります。もちろん忍者の寺として造られたのではなく、幕府からの公儀隠密や外敵の目を欺くために装備されたものです。

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写真は「明かり取り階段」を外から見た様子(内部の撮影は残念ながら禁止されていました)。階段の蹴込みの部分に障子を張って明かりを取り、外敵の足の影を見て、槍などで刺すことができます。歴史マニアの息子は熱心に解説に聞き入り、複雑な建物の構造は想像力を著しくかきたてたようでした。妙立寺には裏口から迷い込んだのですが、裏門には巨大なヒキガエルが鎮座していました。こんなものを目の当たりにするのは子供のとき以来だなと思いつつ看板を見ると、雨上がりの日には夥しい数が出現するので足下に注意とのこと。息子はヒキガエルとは初対面で、雨の日の光景を思い浮かべて戦慄していました。

妙立寺では外国人観光客が2、3割を占めていました。英語のパンフレットが用意されていましたが、日本人観光客と一緒くたに日本語で説明を受けていました。パンフレットを読むより、英語で直接説明を受ける方が、理解度や臨場感も違うでしょう。観光スポットの外国人対応度に注目してみましたが、どこも外国人観光客が多い割には、彼らに対するケアが足りない気がしました。円安でバブっているとはいえ、これだけの観光リソースがあるのだから、外国人向けのパッケージングをもっと考えた方が良いように思います。若い人の雇用にもなるでしょうし、外国語を学ぶモチベーションアップにもつながるでしょう。もちろん英語だけでなく、観光スポットには様々な言語が飛び交っていて、イタリア語とスペイン語をよく耳にしました。

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次は鈴木大拙記念館に向かいます。鈴木大拙は、西田幾太郎とともに、石川県出身の哲学者として知られています(国文学者の藤岡作太郎を含めた3人は「加賀の三太郎」と呼ばれているようです)。深い思索を通した禅の研究にとどまらず、卓越した語学力によって東洋や日本の文化や考え方を欧米に広めたことが大きな功績です。

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記念館は谷口吉夫の設計です。TVで紹介されていたとき、外国人観光客が感嘆の声を上げていましたが、いかにも外国人が惹かれそうな造り。特に思索空間と呼ばれる水鏡の庭(正方形の池)に面した東屋風の部屋は、時間が過ぎるのを忘れてしまう、瞑想的な空間でした。また全体の構造も、シンメトリックな印象を与えながらで、建物の内部や周囲を散策すると風景が移り変わり、美しいアングルを切り取るスポットが適所に埋め込まれています。またどれだけ居ても飽きない、心地よさと静けさに満ちていて、座ったままうとうとしている人たちも。これは言葉で語るより、写真で感じてもらう方が良さそうです。

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幾重もの桜の波に覆われた兼六園、北陸新幹線の模型が寿司を運んでくる回転寿司、近江町市場の海鮮丼も欠かせません。金沢を訪れたのは去年の夏に続いて2度目でしたが、コンパクトで親しみやすい町です。加賀百万石と言われるだけあって、自分の故郷である隣の富山との文化と富の蓄積の差を改めて見せつけられた思いがしました。京都と同じく、空襲の被害を受けずに済み、歴史の断絶がなかったせいもあるのでしょう。富山はまともに勝負しても勝ち目がなさそうなので、違う土俵が必要なのでしょう。

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翌日、その富山に向かいました。北陸新幹線初体験!

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写真は、富山駅の北側にある富岩運河環水公園です。先週、マラソンのイベントがあったようで、参加した脳科学者の茂木健一郎氏が、そこにあるスターバックスコーヒーの店舗を「世界で最も美しいスタバ」とツイッターで評しておられました。今週は満開の桜のおまけつき。天気があまりよくなくて殺風景な感じですが、近くでは入学式を終えたばかりの新小学1年生と両親が記念撮影していました。

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富山には県立近代美術館という、20世紀美術やポスターなど約1万5千点を所蔵し、世界的なポスター展を開催して、国内外から高い評価を受けている美術館がありますが、それを環水公園に移設して、複合的な観光スポットにする計画がもちあがっているようです。やはり富山はフランスのストラスブールのようにアーバンデザインで勝負した方がいいのかもしれません。写真はこの季節に走る桜の模様をあしらった富山のユーロトラム=セントラム。

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posted date: 2015/Apr/08 / category: バカンス・旅行
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