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リヨン国際美食館、2018年にオープン!

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「フランス第二の都市」にして「美食の都」と呼ばれるリヨン。この地に2018年12月、「リヨン国際美食館(ラ・シテ・アンテルナショナル・ドゥ・ラ・ガストロノミー)」(=以下、美食館)が開館することが発表された。

市の中心にある歴史的建造物「オテル・デュー」内で目下工事が進められている美食館は、「食と健康」をテーマにした体感型ミュージアムである。オテル・デューはルネサンス様式の美しい外観をそのままに最新の複合施設「グラン・ドテル・デュー」へと変貌を遂げている真っ最中だ。2017年12月には商業スペースの営業、オフィスと住居スペースの入居を開始し、2018年9月には美食館より一足早くホテルが営業を開始する。

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【中央がグラン・ドテル・デュー、左奥はフルヴィエールの丘】

ダイナミックな国際都市リヨン

フランス南東部に位置するリヨンはローヌ=アルプ地方の首都であり、人口130万人(パリ220万人)が暮らす首都パリに次ぐ「フランス第二の都市」だ。

地方単位のGDPは欧州5位、国内外の企業が次々と進出・起業するビジネス都市であり、外国人留学生・研究者も多数滞在する国際的な学術都市でもある。そしてまた、美しい景観や豊かな食に魅せられた人々が各地から集まる観光都市としても強い存在感を示している。

他の大都市からのアクセスもよい。パリ-リヨン間を2時間で結ぶTGV(高速列車)は日に45本走っている。フランクフルト、バルセロナ、トリノ、ロンドンといった近隣諸国の主要都市への直行列車もある。この地の出身で、『星の王子さま』『夜間飛行』などで知られる作家の名前にちなんだ「リヨン・サン=テグジュペリ国際空港」は、国内外115都市を結んでおり、年間850万人が利用するフランスで4番目に乗降客の多い空の玄関口である(2015年)。

いにしえの香りと未来の予感に満ち溢れる町

リヨンの歴史は今から2000年前、ローマ人によって作られた都市「ルグドゥノム」に端を発する。「ルグ」は太陽神、「ドゥヌム」は小高い丘を意味し、もともとはソーヌ川の河岸の「フルヴィエールの丘」と小丘地「クロワ・ルース」に挟まれた辺りを「ルグドゥノム」と呼んだが、「ルグドン」→「ルオン」→「リヨン」と徐々に発音が変化していったと伝えられている。

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市西部のルネサンス時代に作られた旧市街から北部のクロワ・ルースにかけての川沿いは、石畳の街並みにクリーム色の壁と赤茶色の屋根の建物がモザイクのように立ち並ぶ景観が美しい。この一帯は「リヨン歴史地区」と呼ばれ、ユネスコの世界文化遺産に登録されている。その一部にかかるフルヴィエールの丘は、リヨンのほぼ全体を望む見晴らし台であり、ガロ=ロマン時代の遺跡が残る最古の地区でもある。

一方、市中央部には、現代の著名な建築家たちの手による新しいリヨンが広がる。プレスキル地区では、1990年代以降、ジャン・ヌーベルやレンゾ・ピアノにより過去の遺産に現代の要素を融合させた建築物や空間が次々と整備された。その南側のコンフリュアンス地区は、ジャン=ミシェル・ヴィルモット、ジャック・ヘルツォークらを迎えて全面的な再開発が進むいわば未来の地区だ。

美食館を含む複合施設に変わろうとしているオテル・デューは、プレスキル地区のローヌ川沿い2ヘクタールに及ぶ土地に鎮座している。12世紀まで歴史を遡ることができるリヨンのシンボルであり、2010年まで8世紀にわたって病院として機能していた。現在の建物は、パリのパンテオンを設計したことで知られる18世紀の建築家、スフロによって建てられたものである。

ルネサンスを代表する作家ラブレーは、若き日、オテル・デューで医師として働いていた(1532-1535)。大食らい・大酒飲みの巨人が繰り広げる破天荒な物語『ガルガンチュアとパンタグリュエル』の作者にゆかりある場所が、時を経て美食のミュージアムになろうとはなんとも不可思議で愉快な因縁である。

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【ガルガンチュアの食事(ギュスターヴ・ドレ、1851年)】

美食を個性とする町

ローヌ、ソーヌ、ロワール、イゼールなどの大河川が肥沃な大地を育むローヌ=アルプ地方は、食材の宝庫である。農業、漁業、酪農いずれも盛んで、コート・ロティ、コンドリュー、エルミタージュといった良質なAOCワインの産地でもある。自然の恵みをふんだんに使った個性豊かな「ブション(リヨンの郷土料理)」は、20世紀を代表する美食家キュルノンスキーをしてリヨンこそ「美食の都」と言わしめた。

また、半世紀にわたりミシュラン3つ星を維持してきたシェフ、ポール・ボキューズは、後進の育成に力を注ぐとともに、世界最高峰シェフを決めるコンクール「ボキューズ・ドール」を創設する。これにより、美食の都のイメージは揺るぎないものになったと言って過言ではないだろう。

それだけではない。人口(住民+年間に訪れる観光客)に対するレストランの数を比較したランキングでは、フランスでもっとも外食産業が充実した都市であるという結果が出ている(2014年)。これは、食の空間と時間を人々が分かち合うアール・ド・ヴィーヴル(ライフスタイル)が根づいている町だと言い換えられるかもしれない。そんなリヨンに美食館がオープンするのはいかにも似つかわしい。

オープニング特別展、招待国は日本

美食館は広大なグラン・ドテル・デュー内の3600平方メートルを占め、大まかに3つのゾーンに分類することができる。

1つは、各種展示コーナーと遊びながら食と健康の知識をインタラクティヴに学べるアトリエで構成される博物展示ゾーン。残る2つは、プロのゲスト料理人による調理デモンストレーションを見学できるキッチンスペースと試食スペースを設けた体験ゾーン、そして、広々とした中庭に面した回廊沿いに講堂やレストランやショップが並ぶエントランスゾーンだ。

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【体験ゾーン:画像はイメージ】

展示は、常設展と特別展からなる。常設展は「複数の時代と大陸にまたがる食物の歴史」「よりよい食事と健康な生活」「テーブルマナー、セッティング、サーヴィス」などがテーマに設定されている。特別展は、特定の国や地域の食文化を多面的に掘り下げる展示と、ある食材について特化した展示が行なわれる。

2018年12月から始まるオープニング特別展には、招待国として日本が選ばれた。「食材(米・野菜・魚)へのこだわり」、近年世界で注目される「第五の味『旨み』について」、そして「四季の素材で作る健康的な料理」や「和食器の美」に着目し、テーマごとに日本の食文化を紹介する展示を予定している。なお、食材に関する特別展は「麦」を扱う予定だ。

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【オープニング特別展「日本」と「麦」:画像はイメージ】

リヨンと日本のつながりは、かつて絹産業で栄えたリヨンが鎖国を解かれたばかりの横浜港から生糸を仕入れ、上質な絹織物に加工して世界中に輸出した19世紀半ばまで遡る。

折しも2018年は、日本とフランスの修好通商条約調印から160年の節目にあたる。美食館のオープニング特別展はこれを記念するとともに、日本とフランス、リヨンと横浜の交流史に新たな1ページを刻むものになるだろう。

(まるやま・あみ)

- フランス観光開発機構 jp.france.fr/
-ONLY LYON www.jp.lyon-france.com/

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