フランスからグローバリゼーションとオルタナティブを考える新しいフランス学

ADBUSTERS & ANTI-PUB 広告退治と反広告(1)

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1月1日の朝日新聞に「ウォール街を占拠せよ」の仕掛け人、カレ・ラースン Kalle Lasn 氏のインタビューが載っていた。彼は「アドバスターズ Adbusters 」という雑誌を発行している。アドバスターズ、つまり広告退治の雑誌だ。

「企業がもうけに走ることは善である。ゆえに商品を売り続けることが目標になる。そのためにテレビや雑誌に広告を出すのが効果的で、広告が浸透すれば消費意欲が高まり、企業は永続できる」というアメリカ流の常識と戦っている。私たちは過剰な消費、過剰な広告に無感覚になっているのだ。具体的な戦術としては、大企業広告のパロディーや環境保護についての意見広告を載せた雑誌を発行している。もちろん商業広告は一切なしだ。

商業広告と戦うために、反広告の広告を打つ。まさに情報戦だ。他にも米小売業界が狂ったように買い物を煽る歳末商戦の週末を選んで、No Buy Day を呼びかけ、デジタルに魂を抜かれないようにデジタル製品に触れない “unplugged” 状態で過ごす週、デジタル解毒ウィーク Digital Detox Week を設定する。消費者が動かされるのは、ちょっと視点を変えるようなユーモアだ。

ラースン氏は自社サイトで最も画期的な広告「ウォール街を占拠せよ=Occupy Wall Street(OWS)。9月17日決行、テント持参のこと」を打った。それは世界に火をつけ、最盛期には世界の1000ヶ所を若者たちが占拠した。彼は「ウォール街占拠」という知恵を出しただけで、占拠デモに参加したり、指導したりしなかった。運動は彼の手を離れ、ひとりで育っていった。しかし OWS は「アドバスターズ」の何よりも効果的な広告になった。毎号9万部発行していたのが、OWS 後12万部に増えたという。

リーマンショックの際に、アメリカ政府は、つぶれると世界の金融経済に大きな影響を及ぼすという理由で、ゴールドマン・サックスやモルガン・スタンレーなどの金融大手に税金を投入した。「大きすぎてつぶせない」という論理がまかり通った。しかし業績が回復すると性懲りもなく自社幹部に何千万ドルという報酬を支払った。一方で失業者は全く減ることがなく、若者は大学を出ても就職先が見つからない。住宅ローンの返済が滞った庶民の自宅は、税金で助けられた銀行が差し押さえてしまう。このゆがみはどこから来ているのか。OWS はそういう問いから始まった。’We are the 99%’ という OWS のスローガンは単なる数の比の問題だけではなく、1%にやりたい放題を許してしまう圧倒的な力の差でもある。

ラースン氏の主張と手法は、2003年の秋、フランスを騒がせた事件を思い起こさせる。

ある若者の集団がパリの地下鉄の構内に侵入し、大きな広告のポスターにスプレーで落書きして回った。そう聞くと、ヒップホップの落書きアート、グラフィティを想像してしまうが、それとは全く系統の違う、ある主張を持った組織的な活動だった。

襲撃されたのはパリ15区の La Motte-Piquet-Grenelle 駅。その駅には6号線、8号線、10号線のメトロが乗り入れている。この事件では3人の高校生を含む62人が逮捕され、地下鉄の会社に95万ユーロ (1億円)の損害賠償を請求された。そういう結末を迎えることは、彼らもわかっていただろう。しかし、彼らはなぜそのような行動に出たのか。

パリの地下鉄の壁は広告のポスターで覆い尽くされている。乗客たちはそれに慣れていて、誰も気に留めない。もちろん同じような光景がどこの国でも見られる。ヨーロッパの若者のあいだには環境破壊に対して相当な危機感があるようだ。彼らは自然環境だけでなく、都市環境にも破壊がもたらされていると感じている。彼らの確信犯的な行動の裏には「街は企業のものじゃない、私たちのものだ」という強い権利意識がある。

Laissez vos enfants rêver sans la pub! -子供たちが夢見るのに広告は要らない!

これは広告の上に彼らが書き残したが書き残したスローガンのひとつ。つまりは、子供たちの想像力が広告に蝕まれているということだ。彼らはANTI-PUB と名乗る(広告に反対する運動、pub はpublicité=広告の略)。この2003年秋の事件でフランス中に名を知られるようになった。 (続く)

□ADBUSTERS www.adbusters.org/

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