フランスからグローバリゼーションとオルタナティブを考える新しいフランス学

FRENCH BLOOM NET 年末企画(4) 2011年の重大ニュース

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年末企画の最後は2011年の重大ニュースです。先に「Wall Street Journal 日本版」の2011年の注目ニュースを紹介しておきます。1位 フクシマの問う原発の将来、2位 東日本大震災、3位 深まる欧州ソブリン危機、4位 中東の春、5位 米国債格下げ、6位 政治混迷、7位 スティーブ・ジョブズ氏、8位 日本経済を蝕む円高、9位 中国鉄道事故、10位 911から10周年 on.wsj.com/u3VYRB

1. 福島第一原発事故 ■事故発生から数日間のうちに、外国にいる友人たちから次々にメールが届きました。君は大丈夫か、という心配に続いて、もし避難しなければならないのなら、あてにしてくれていいよ、とありました。それはソウル、モントリオール、パリ、ベルリンからブエノスアイレスまで、僕のヴァーチャルな亡命先を確認した日でした。ありがたい反面、日本が「もはや住めない場所」だと見なされたことには衝撃を受けました。同時に、本当に住めなくなった場所にも住み続けなければならない人々のことを思い、激しい憤りを覚えました。この事故は、人ばかりでなく、環境破壊としても、かつてないほど深刻です。これから何十年も、日本の社会と自然が福島汚染を抱えていくことを私たちは覚悟しなければならないでしょう。子供たちには「すまない」としか言いようがありません。戦争を止められなかったかつての大人たちと似たようなものです。 2. 津波の映像 ■東日本大震災、という名称が割と早くに定着しましたが、東日本とはどこを指しているのか判然とせず、かつ地震動による被害や犠牲者に較べて、津波の被害があまりに甚大なので、やや不自然な感は残ります。今までなら「平成三陸津波」のような通名になったのでしょうが、地震の犠牲者も現に存在することから、津波で事象を代表させることはできない、という行政的配慮の結果だと思います。しかし、やはり3月11日とは、大津波の日でした。あの日、僕は外出中で、家族からの電話で地震のことを知り、近くの電機店に飛び込んで、初めてテレビの映像を見ました。八戸港に津波が押し寄せ、大きな船が陸に流されていくライブ映像を見て、ただ呆然とするしかありませんでした。その俯瞰の映像をそれから何度も反復して見たということが、すでに津波から自分が遠く離れていることを証明していました。 3. 自動車免許取得 ■地震の3週間ほど前、齢35歳にして、自動車免許の取得を思い立ち、教習所通いを始めました。田舎は車社会です。「自動車の社会的費用」(@宇沢弘文)に関する後ろめたさを感じつつも、すでに家人が車を所有していることから、一種の保険として免許を持っておくことにしました(要するに代わりに運転する機会があるということ)。練習がてら、夏休みに北海道で長距離を走ってきました。車を運転すると、視界が変わります。視界が明らかに狭くなります。それがちょっと怖い。 (bird dog)

1. 東日本大震災、原子力産業に吹く逆風 ■今年のニュースで、東日本大震災よりも大きなニュースは存在しないだろう。激烈な揺れ、全てを飲み込んだ大津波、変わり果てた街並み、途方もない人的・物的喪失、そして原発事故。この惨事には世界から多くの哀悼・支援が寄せられ、フランスからも原発事故対応用の機材などが提供された。また、今回の原発事故を契機に、世界中の原子力産業に厳しい目が注がれるようになり、世界随一の原子力産業大国であるフランスでも脱原子力の世論が高まっている。 2. DSK失脚 ■去年の重大ニュースでは、サルコジ大統領の政敵であるドミニク・ドヴィルパン元首相が、「クリアストリーム事件」に絡み無罪判決を受けたことをお伝えした。その一方で、今年奈落の底に落ちたのが“DSK”ことドミニク・ストロス=カーン。現職のIMF専務理事で国民にも人気があり、2012年の大統領選でサルコジに勝てる候補と期待されていた中、訪問先の米国・ニューヨークで、ホテルの女性従業員に対する性的暴行容疑で逮捕された。結局起訴は取り下げられたが、大統領選出馬の道は事実上断たれてしまった。 3. アラブの春とフランス ■今年は年初から中東心に民主化運動の風が吹き荒れ、1月にはチュニジア、2月にはエジプト、10月にはリビアで独裁政権が崩壊し、「アラブの春」と呼ばれた。この「アラブの春」は、フランスにも大きな影響を与えた。チュニジアをめぐるミシェル・アリヨ=マリー外相の引責辞任(ベン=アリー政権幹部からの便宜供与疑惑)から始まり、リビアへの武力介入では、空母「シャルル・ド=ゴール」など大規模に戦力を投入した。そして今は旧宗主国であるシリアが揺れている。情勢は来年以降も予断を許さない。 4. タンタンの冒険旅行、スピルバーグにより映画化! ■世界的に有名な漫画(バンド・デシネ)である『タンタンの冒険旅行シリーズ』の1冊、『なぞのユニコーン号』がハリウッドの巨匠、スティーヴン・スピルバーグ監督の手によって映画化され、『ユニコーン号の秘密』という題名で公開された。若干個人的なことを言うと、タンタンファンの1人としてはこのニュースは外せない。ちなみに作者のエルジェはベルギー人で、原作はフランス語で書かれている。youtu.be/azgSKsjr02A 5. イギリスのロイヤルウエディング ■今年のヨーロッパ、そしてフランスは話題に事欠かなかったが、思い出してみると、原子力の問題や債務危機など硬派でシリアスなネタが多く、柔らかいハッピーなネタというモノが少なかったように思う。なので最後は無理やり感があるが、華やかなロイヤルウエディングの話題で締めたい。昨年の重大ニュースでは婚約した旨をお伝えしたイギリスのウィリアム王子と恋人のキャサリンさんが4月、ウェストミンスター寺院で挙式した。王子の母であり、フランスで悲劇の事故死を遂げたダイアナ王太子妃以来、人気低迷気味だったイギリス王室に久々のスターカップルが誕生した。 (Jardin)

「アラブの春」から「OWS」、そして「ロシアの冬」へ ■チュニジアのジャスミン革命に始まるアラブの春。この民主化運動はチュニジアにとどまらず、エジプトなど他のアラブ諸国へも広がり、各国で長期独裁政権に対する国民の不満と結びつき、数々の政変や政治改革を引き起こした。 ■チュニジアは決して経済状況が悪いわけではなかったが、若者層に限ると30%近い高水準で、経済成長の恩恵を受けられない不満が鬱積していた。また一族が利権を独占しており、23年にも及ぶ長期政権に対する不満も大きかった。フランス政府の閣僚がベンアリ政権から丸抱えの接待を受けるという癒着ぶりも明るみに出た。また一連の抗議行動ではフェイスブックなどを通じたインターネットによる情報交換が力を発揮した。 ■チュニジアやエジプトのデモは、異議申し立ての対象を変えながら先進国にも波及した。ベルギーでは南北の対立により長期にわたって政権不在が続いており、若者たちは「分離派的ナショナリズム」に反発し、その抗議運動は「フリット革命」と呼ばれた。一方、イタリアではジェンダーが切り口になった。未成年者の買春疑惑が持たれていたベルルスコーニ首相にイタリアの女性たちが抗議。ローマをはじめとする200以上の都市で、数十万人の女性らが首相の辞任を求めた。 ■7月15日には経済危機を引き起した政治家や銀行家に対して「怒れる人々」が世界同時抗議行動を呼び掛けた。その動きは71か国、719都市に拡大。発端となったのは、スペイン・マドリード中心部のプエルタ・デル・ソル広場で5月15日に始まった抗議集会だ。スペインでは、失業率が全体で20%を超え、若者に限ると約半数が失業状態。抗議行動はスペイン全土に広がり、さらに他国へと飛び火した。一連の抗議運動は、経済危機を理由に巨額の公的債務削減を目指す各国政府が福祉関連支出を大幅に切り込む中でうねりを増した。デモの呼び掛けには、フェースブックやツイッターが広く活用された。 ■そして9月には、グローバル資本主義の中心地である米ニューヨークの金融街、ウォール街 Wall Street に到達。ウォール街の小さな広場に9月17日、数百人がテントを張って始まった抗議行動「ウォール街を占拠せよ Occupy Wall Street 」は、これまでアメリカでは「アラブの春」のようなことは起こらないだろうと高をくくっていたメディアや政治家たちに大きな衝撃を与えた。失業に対する怒りと経済エリートへの反発が、全く異なる世界各地の運動を結んでいる共通のテーマだが、一方で抗議の矛先はさまざまで、「怒れる者たち」の運動の方向性は明確ではないと指摘された。OWS に全体として統一された目的が見出せないとしても、困窮の中で孤独だった多くの若者が集まって共同で何かを模索し、表現することにすでに意味があるのではないか。個々人の新しい人間的なつながりやアイデンティティーの変化は傍観者からは見えやしないのだ。 ■個人的には「ウォール街を占拠せよ」でのスラヴォイ・ジジェクのスピーチ「民主主義と資本主義の結婚は終わった」が興味深かった。ジジェクのスピーチを観衆が復唱していたが、それは「人民のマイク」と呼ばれるものだと後で知った。警察に拡声器の使用を禁じられたことで生まれたアイデアだ。観衆の声をアンプ代わりにするだけでなく、身体的なものを喚起することで一体感も生む。

■あと気になったのは、ベルリン市議会選挙で15議席を獲得した海賊党。得票率が5%に満たない政党は議席を得られないドイツでは小政党の議席獲得は難しいが、支持率は一時メルケル連立政権与党の自由民主党を上回ったほどだ。どの国も若い世代にツケを回しているが、彼らの声を代表するような政党が台頭してくるのか注目。 ■そしてロシアの首都モスクワでは12月24日、先の下院選での不正行為疑惑に抗議する反政府デモが行われ、参加者は主催者発表で約12万人に達した。来年3月の大統領選に出馬し、長期政権を狙うプーチン首相の退陣も訴えており、「アラブの春」を踏まえて「ロシアの冬」と呼ばれ始めている。日本はどうか。同じような条件は揃っているように見えるが。 (cyberbloom)

 

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