フランスからグローバリゼーションとオルタナティブを考える新しいフランス学

パリは不動産バブル?

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フランスの友だちと話していて、必ず話題に上るのが高騰するパリの不動産。「もう高くなりすぎて、パリ市内にアパルトマンを買えない」とか、「下宿していたアパルトマンを出た後、大家さんがそれを高値で売ったみたい」とか「パリ市内のアパルトマンが高く売れたので田舎に大きな家を買った」とか。パリの不動産の高騰はいつもニュースのネタになっている。

仏国立統計経済研究所INSEEの住宅指数もそれを裏付ける。リーマンショック後の09年に7.1%下落したあと、10年は6・4%上昇し、今年の1~3月期は前年同期比9.1%まで上昇が加速。住宅着工件数も09年は前年比8.9%減と落ち込んだが、10年には3.4%増。今年の上半期は前年同期比23.5%と強い伸び。住宅市場の回復をもたらしたのは、低金利とゆるやかな雇用の回復、そして住宅購入を後押しする政策があったからだ。現在も、新規の不動産物件を購入した人に対するに所得税減税や、住宅ローンの一部をゼロ金利で借りられる制度が実施されている。 お隣のドイツが輸出主導型の経済であるのに対して、フランスの経済は個人消費が駆動力になっている。個人の行う最大の消費が住宅の購入だ。それを支えているのは銀行の貸し出しの高い伸びである。家計向けの銀行の貸し出しはリーマンショック前で前年比10%から12%増で推移し、現在も前年比7%増にまで回復している。

しかしここにも金融危機が影を落とす可能性がある。フランスの大手銀行は債務問題に悩むPIIGS=ポルトガル、イタリア、アイルランド、ギリシャ、スペイン向けのエクスポージャー=国債や株式などのリスク資産を11年3月末期で6717億ドル(51.7兆円)保有していることが明らかになった。銀行の資金調達が難しくなれば、家計向けの貸し出し縮小につながる危険性がある。 「住宅ローンと個人消費」という組み合わせは何だかアメリカのサブプライムローンを想起させる。アメリカの場合は金融機関が返済能力以上のローンを貸し付けたり、住宅の値上がりを見込んで個人がさらに金を借りるという無茶をやっていたが、パリの場合は実需に支えられているのでバブルではないらしい。

2005年公開のセドリック・クラピッシュの『ロシアン・ドールズ』をユーロバブルの映画として評したことがある。ユーロはリーマンショックの直前に1ユーロ=170円=1・6ドルをつけるが、2005年はそれに向けてまっしぐらな時期だった。登場人物のセシルとグザビエは同じ経済学部出身だが、テレビのメロドラマを書いたり、モデルのゴーストライターをやったり、不本意な作家生活を送っているグザビエとは対照的に、セシルは金融資本主義の波にうまく乗り、レズビアンの友だちを集めて羽振りの良い生活を送り、最後に金融情報メディア、ブルームバーグ Bloomberg でキャスターを務める姿が映し出される。グザビエも父親の意向に沿えばそうなるはずだった。ウェンディは父親がロンドンに買っておいてくれたフラットに住んでいて、「今じゃ高くて買えないわ」と、不動産バブルをほのめかしている。主人公たちが泡立つ波に乗って果てしない自分探しを続ける『ロシアン・ドールズ』はリーマンショック直前に撮られた絶望の色が濃い『PARIS』(撮影は2006年から2007年にかけての冬)とは極めて対照的だ。

ところで、フランスで観光業の占める割合はGDPの6.2%で世界平均の倍近くある。10年にフランスを訪れた外国人観光客は7680万人と世界一を維持し続けている。観光業は雇用面での影響も大きく、観光業の直接間接の従事者は約20万人と国内雇用の1・2%を占める。ただ観光業は景気の影響も受けやすく、フランスへの観光客の大部分はEU域内の人々で、彼らは現在厳しい雇用環境下にある。10年の観光客の数もリーマンショック前の水準まで戻っておらず、10年の観光収入は463億ドルで、スペイン(525億ドル)やアメリカ(1035億ドル)を下回っている。

そんな中、フランスの希望はやはり中国人だ。2011年8月24日、仏パリ観光局は、今年上半期にパリを訪れた観光客は766万人で、前年比3.5%増えたと発表した。うち、中国人観光客は17.7%増で、最大の増加幅だった。観光客だけではない。数年前からパリの不動産に明らかな傾向がある。中国資本がパリに投下されている。レストランの経営で成功し、本土から家族を呼び寄せるという昔ながらのパターンだけではない(最近はパリで中国人経営の日本料理屋が爆発的に増えている。また、友だちが住んでいるのでよく遊びにいく19区のベルヴィルは、中国人の不動産取得が進み、チャイナタウン度を増している)。

最近では高級住宅街で知られる16区の建物にも興味を示し、一昨年、16区のボナパルト一族所有の建物が香港の「シャングリラ」の経営者によって買収された。買収と改装の費用の総額は1500万ユーロ(約20億円)。108の部屋、35のスイートルームがあり、3つのフランス料理と中国料理のレストランが入っている。本土からやってくる観光客を迎え入れるためのホテルだ。

写真1) Jardin d’acclimatation の近くで撮影。この公園は近くに住む金持ちたちのエキゾチスムを満たすために19世紀のパリ改造の際に造られた。写真は犬の糞専用のゴミ箱。糞を入れるナイロン袋も用意されている。
写真2)ポンピドゥーセンターの最上階にあるレストラン。各テーブルに一輪の薔薇の花が。何だかオシャレだなと思ったらコストのプロデュースらしい。
写真3)オペラ座近くのスターバックス。
□「危ういフランス経済」 in 『エコノミスト』(2011年9月13日号)参照

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