フランスからグローバリゼーションとオルタナティブを考える新しいフランス学

Nothing Can Stop Us フランス大統領候補エマニュエル・マクロンとそのパートナーの20年

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ふた昔前に、TVのお昼の洋画劇場で見たフランス映画。5月革命の最中、シングルマザーのリセの教師が受け持ちのクラスの生徒と本気の恋に落ちてしまう。教え子達からは祝福されるも世間はやはり二人に冷たく、教師は情欲に溺れた悪女と犯罪者扱いされ、最後には死に別れるというお話でした。ショートカットのアニー・ジラルドの爽やかな印象と、べたべたしたところを排した映画のつくりのおかげか、愛のために戦い敗れる二人の姿がひたすらやりきれなく、ため息をついたものです。がいっぽうで、フランスといえど、このカップルが愛を成就するのはやっぱり無理・・・とも思ったのでした。

しかし、世間に負けなかったカップルもいるのです。しかもあのフランスで。早くも大混戦の大統領選挙で第3の候補として注目を集めるエマニュエル・マクロン(39才)の奥さん、ブリジット・トロニューは夫より24才も年上で、リセ時代の先生だったのです。

二人が出会ったのは、ピカルディ地方の古都アミアンにある私立のリセ。教職の傍ら演劇サークルも主催する活発な国語教師と、15才の新入生という関係でした。頭脳明晰なのに加えて、父は大学教授、母は医師という毛並みのよさ、祖父母の代から左派びいきというリベラルな育ち。ピアノも巧みに弾きこなすエマニュエルは、クラスでも目立つ存在でした。ブリジットは、作文を授業でたびたび朗読するなど、目をかけていたようです。しかしまだ「先生のお気に入り」でしかありませんでした。

Emmanuel Macron, le banquier qui voulait être roi二人の関係に変化が生じたのは、演劇サークルに俳優志望としてエマニュエルが参加してから。彼の熱望により芝居の台本を一緒に書くことになり、毎週金曜日に二人であれこれやりとりをかわすうちに、急速に惹かれ合っていったそうです。異変に気付いたエマニュエルの両親は、最終学年の年に息子をパリの名門リセへ転校させます。ブリジットは、この両親の決断に抵抗しませんでした。夫も3人の子供もある分別盛りの教師の身にも関わらず、我が子のクラスメイト(!)だった10代の男の子に本気になってしまっていることに、内心恐れおののいてもいたからです。お互いにこれでよかったのだと言い聞かせる彼女に、エマニュエルはこう言ってのけます。「僕のことを昔の思い出になんか絶対にさせやしない。必ずあなたを、僕の妻にしてみせる。」

二人の仲は終わりませんでした。週末の長距離電話を重ねるうちに、ブリジットは覚悟を決めます。自分のほんとうの気持を押し隠して生きてゆくことはできない。今決断しなければ、私は一生後悔する。学校を辞め、夫と離婚し、子供を残してパリへと去ったのです。

教師をしながら、ブリジットはエマニュエルの「成長」を見守ります。バカロレアで最高点を叩き出し、大学卒業後は国を動かすエリートの養成機関として有名な国立行政学院に進み、トップ5に入る成績で卒業。社会に出てからは、ロスチャイルド銀行で大きな取引をまとめ、30代の若さで副頭取に就任。過分すぎるほどの富と成功を手にします。故郷アミアンを離れて十数年が経っていました。

大都会パリで、多様な価値観、世界観にも触れ、様々な意見を聞く機会にも十分恵まれたでしょう。大学で、職場で、優秀かつ魅力的な女性達にもたくさん会ったことでしょう。しかし、エマニュエルは、ブリジットから離れませんでした。2007年、二人はついに結婚します。成人したブリジットの子供達、孫達を含む、大勢の人々に祝福されて。

さて、マダム・マクロンはどんな人でしょう。重ねた年齢も魅力の一部にしてしまうような、知的で快活な印象の女性。教壇を去り、今は夫の大統領選挙のスタッフとして裏方に徹しています。ちょっとジェーン・フォンダ(バーバレラではなくアメリカン・ニューシネマの頃の)に似ているでしょうか。スキニー・ジーンズやミニのドレスをさらりと着こなすセンスとスタイルの持ち主。また、7人の孫がいるグランママンでもあります。(つまりマクロンは、7人の孫持ちになったわけです。)

この異色のカップルに、世間は大きな関心を寄せています。経済大臣に就任してからは、マクロンが夫人同伴で公の場に登場するようになったこともあり、マスコミの格好のターゲットとなりました。パリの街角で、休暇先のビーチでのツーショットが、セレブの写真とともに芸能誌の表紙をしょっちゅう飾っています。毒舌タレントはマダム・マクロンのことを「閉経バービー」とあだ名し、マクロンも”chouchou”(「先生のペット」のこと)とか、夫人の実家がアミアンの老舗菓子店で銘菓Macarons d’Amiensで名高いことをもじってMACRON d’Amiensとからかわれたりもしています。しかし、注がれる視線そのものは興味本位だけではなく、ずっとポジティブ。パパラッチの前でもあくまで自然体な二人の振る舞いに加え、なんのかんの言って二人の関係が20年以上立派に続いていることが好感のポイントとなっているようです。不人気にあえぐオランド大統領の支持率が少し改善したのが、女優との不倫をすっぱ抜かれた時でした。愛ある二人なら、たとえそのあり方がカンペキにノーマルでなくとも肯定される、というのがフランス流なのかもしれません。

マクロンがちょっとおもしろい人であることも、このカップルが長持ちしている理由の一つと言えます。自他ともに認める議論好きで、大きな挑戦ほど受けて立つタイプ。デスクの上には、誰もが置きたがる家族の写真は一枚もなく、ロケットのフィギュアとフランス製ハイエンド・スピーカーが並んでいるといった具合。そんなパーソナリティの彼をそっくり受け止め、とことんまで議論につきあい、意見してくれるのがマダム・マクロンなのです。

インタビューで、ブリジットは夫エマニュエルについてこう語っています。「政治家として彼が優れているかですって?これまで彼がやってみて上手く行かなかったことはひとつもないわ。」ここまで堂々とパートナーのことを評すとはご立派!ですが、それほどまでに自分のことを信じ、励ましてくれるひとが側にいるマクロンは結構幸せなのかもしれません。ありえなかった日曜日の営業を許可するなど大胆な改正を盛り込み国内でブーイングをくらった法律(その名もマクロン法)の導入を押し進められたのも、本人の大胆不敵さに加えて、それを応援する奥方の声援もあったのではないかと思います。

ブリジットはインタビューでこうも語っています。「一教師として、若者達とずっと関わってきました。これからも、若い人々のことを気にかけてゆきたい。」もしマクロンが大統領になったとしたら、若者の今を知る夫人の声が夫の国政によい形で反映される事を願ってやみません。

マダム・マクロンがどんな感じの人か知りたいかたはこちらをどうぞ。
人気のある先生だったのではないでしょうか。
youtu.be/Lo8SJxzfFlU
youtu.be/T87UWxEnJuw

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GOYAAKOD=Get Off Your Ass And Knock On Doors.

大阪市内のオフィスで働く勤め人。アメリカの雑誌を読むのが趣味。 門外漢の気楽な立場から、フランスやフランス文化について見知った事、思うことなどをお届けします。