フランスからグローバリゼーションとオルタナティブを考える新しいフランス学

元老院がベーシックインカムの試験導入を答申

posted by

18歳から65歳までの2~3万人を対象とし、月額500ユーロを3年間にわたって支給するベーシックインカムの試験導入を元老院が強く求めている。

元老院の答申によると、制度採用を求める地域においていくつかの異なった方法で早急にベーシックインカム――長きにわたってフランスの政策論争の議論の的となっている――を試験運用することを推奨している。

senat_francais02
□L’hémicycle du Sénat français(フランスの元老院=上院 Par Romain Vincens, CC BY-SA 3.0)

「フランスにおけるベーシックインカム、ユートピアから実験へ」と題され、10月19日水曜日に公表されたレポートによると、この提案は社会主義的立場のグループの主導のもとに押しすすめられ、27名の超党派の元老院議員が賛同しており、現行の最低所得保障制度に代わる「代替案」として期待されている。普遍給付と呼ばれることもあるベーシックインカムのアイディアは一見したところシンプルである。それは、社会の構成員すべてに無条件で、所得水準の違いを考慮に入れず、一定額の現金を支給するというやりかただ。

フランスは社会保障に6900億ユーロ(国内総生産の3分の1にあたる)を費やしているが、貧困率は14,1%と依然として高い水準にある。さきの元老院議員たちによると、現行の給付システムのせいで、「同朋たち」が「道端に追いやられたままである」との認識がある。「現行の社会保障制度とベーシックインカムが統合されたものだと思わないようにしよう」 水曜日、元老院においてこの政策の主導者であり、「民主主義・独立連合(UDI)」に所属するジャン・マリ―・ヴァンルベルグ元老院議員は述べ、さらに付け加える。「このアイディアをわかりやすいものにし」そして「フランスに定着させることだ」

18歳から65歳までに月額500ユーロ

「十分な条件」と「明白なメリット」がないので、すぐさまベーシックインカムを導入することにこだわっているわけではないが、元老院議員たちは「きょうからでも実験することは必要不可欠だ」と判断し、さらにベーシックインカムのコンセプトは「革新的特徴を備えている」という。

実験モデルとして、18歳から65歳までの2~3万人に、3年間にわたって月額500ユーロを給付するわけだが、「費用としては年間約1~1,5億ユーロとなり、国がそれを負担する」という。「制度採用を求める地域において」導入し、この実験のおかげで「何層もの社会階層、とりわけ「より不安定」とされる18歳から25歳そして50歳から65歳までの人々を対象に、おなじく複数の形態の異なるベーシックインカムを導入し、その具体的効果をテストし比較することが可能となる」と主張する。

「積極的連帯所得手当(RSA)に勝るとも劣らない」こうした支援が、「この実験の対象者となる人々がよく理解している従来の社会保障制度(RAA,ASS)などの役目を果たすようになるだろう。受給者が権利を侵害されないために、ベーシックインカムによって受け取ることのできる500ユーロ以上を給与で取得しても差額が天引きされるようなことはないと、報告書では述べられている。

さらにそれによると、以下の3つの給付システムが試される見込みだという。

 *条件なしの給付:「ベーシックインカムのもっとも理想的な姿」に近いもので、受給者は自らの購買力にかかわらず一定の金額を受け取ることができ、その使い道もまったく自由である。

 *特定の目的にかなった使い方が義務づけられた、条件なしの給付:どの受給者も一定の金額を受け取ることはできるが、その使い道はもっぱら食料品の購入、教育や職業訓練、交通費などに限られることになる。報告書では「この形態はとりわけ若年層を念頭に置いたものである。よりよい形で社会に参画することが可能となるような活動に給付金を使うよう仕向けることが望ましいと思われる」と述べられている。

 *特定の義務に関して条件づけられた給付:このアイディアは特定の義務を果たす代償として給付金を受け取ることになる。「教育や職業訓練、積極的な職探しがなされているかについての追跡調査を受けることになる」 報告書によると、はじめから給付金を受け取ることはできるが、もしも義務を果たさなかった場合は給付を撤回する案と、義務を果たした後ではじめて給付金を支給する案がある。

大統領選に一石を投じる

「ベーシックインカムを口にする人々は自分たちのヴィジョンや理想を我々に語りかけてきた。我々はそれにじっと耳を傾けてきた」と述べるのはこの答申を報告したダニエル・ペルシュロンであり、さらにこう付け加える。「大統領選に一石を投じることになる」

元老院による「ハードワーク」に敬意を表しつつも、「ベーシックインカムに向けてのフランスの運動(MFRB)」というベーシックインカムを導入することを強く求めている団体は一連の流れを好機ととらえ、「次回以降の大統領選や国会議員選挙の際に候補者たちはベーシックインカムについてどう考えているか意見を述べるべきだ」との声明を発表した。

右派左派を問わず、さまざまなベーシックインカムのあり方が提案されており、ナタリー・コシュースコ=モリゼ (訳者註:共和党員)やブノワ・アモン(訳者註:社会党員)といった大統領予備選候補者らも同様だ。

9月には、マニュエル・ヴァルス首相が「新しい展望を切りひらくときだ」とフェースブック上で発言し、さらに「ベーシックインカムとは、18歳以上のすべての人に開かれた申し分のない給付のことであり、現存するいくつもの社会保障制度にとって代わるものだ」という。今年4月にシリュグが報告書(訳者註:彼は今年4月にベーシックインカムについての報告書を首相に提出している)で強く主張したように、条件なしのベーシックインカムの導入によって、いまあるいくつかの給付制度を統合することにつながっていくだろう。いずれにしても、首相はこれまでのところこれからベーシックインカムについてどう取り組んでいくかについては口を閉ざしたままである。

Des sénateurs recommandent l’expérimentation du revenu de base
Le Monde.fr avec AFP
19.10.2016

posted by

人気ブログランキングへ

FBN-banner01 FRENCH20BLOOM20STORE-thumbnail2

専門はフランス思想ですが、いまは休業中。大阪の大学でフランス語教師をしています。

小さいころからサッカーをやってきました。が、大学のとき、試合で一生もんの怪我をしたせいでサッカーは諦めて、いまは地元のソフトボールと野球のチームに入って地味にスポーツを続けています。