フランスからグローバリゼーションとオルタナティブを考える新しいフランス学

グローバリズムの陰画としてのパリ同時テロ

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まずは犠牲者を悼むしかない。わたしたちの住むこの世界では、サッカーを観戦し、コンサートを楽しみ、テラス席で食事するのは、なんら咎められるべきことではなく、彼らが殺されるに値する理由など何もない、ということを、はっきりと述べておかなければならない。彼らとは、11月13日の夜、パリの同時テロで亡くなった方々である。

ダーイシュ(Daech, フランス政府やメディアが使用するISの別称)の声明によれば、今回のテロ――という言い方が、すでに他のテロを念頭に置いていて、嫌な気分になるが――は、フランス軍によるシリア空爆の報復であるという。彼らの側からすれば、空爆を支持したフランス人は、誰でも復讐の対象になるということである。

この論理を裏返すと、無辜のパリ市民を殺害したダーイシュが許されるはずはなく、復讐しなければならないことになる。こうした報復の応酬には、どちらかの全滅以外に決着点はない。事実、すでに有志連合軍に参加しているフランス政府は、まさにダーイシュの全滅を目指しており、パリでのテロを受けて、空爆を強化する、と発表した。

だが、気をつけておきたいのは、ダーイシュは、建前としては、イラクを中心に、地理的な根拠をもった国家の樹立を目指してはいるものの、現実には構成員が、既存の国のパスポートを使って国境を越え、複数の言語を横断して、各地の支持者と連携する組織である、ということだ。報道によると、実行犯たちは、シリアで人脈を得て、ベルギーでテロを計画し、「流暢なフランス語で」(バタクラン劇場の生存者による証言)、冷酷な凶行に及んだ。定義だけ見ると、まるで「グローバル人材」そのものであるような連中が、世界各地でテロを起こしているのだ。だからといって、世界中を空爆するわけにはいかないだろう。

グローバリズムは、常にポジティブな結果をもたらすわけではない、という当たり前のことを、もう一度思い出しておきたい。抑圧された、と感じる少数者が、情報と人とカネ(による武器入手も含む)の地球規模での拡散を通じて、従来の国家の枠組みでは不可能だったはずの力を得る、という事態が可能になったことを認めなければならない。今回のテロは、その意味で、グローバリズムの陰画である。

もう一つ気になるのは、シリアとイラクの内戦を避けてヨーロッパに流入した膨大な難民のことだ。自爆した実行犯の一人は、ギリシアから入国した難民のパスポートを所持し、彼の指紋と登録されていた指紋が一致したという。これを機に、難民はテロリスト予備軍である、という風説が流布しないか、心配している。パリは、テロにもかかわらず、もはや住めない町、ではない。フランス人が、今後大量に亡命する事態は、まず起きることはない。テロを通じて、むしろ、住みたい場所に住めない難民、住み続ければ生命を奪われてしまう境遇に陥った難民を思いやって欲しい、と切に願う。

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1975 年大阪生まれ。トゥールーズとパリへの留学を経て、現在は金沢在住。 ライター名が示すように、エヴァリー・ブラザーズをはじめとする60年代アメリカンポップスが、音楽体験の原点となっています。そして、やはりライター名が示すように、スヌーピーとウッドストックが好きで、現在刊行中の『ピーナッツ全集』を読み進めるのを楽しみにしています。文学・映画・美術・音楽全般に興味あり。左投げ左打ち。ポジションはレフト。