フランスからグローバリゼーションとオルタナティブを考える新しいフランス学

911から10年「アメリカ同時多発テロとパールハーバー」

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■L’Amérique sous le choc d’un «Pearl Harbor» terroriste
■Les attaques kamikazes révèlent les failles de la sécurité aérienne

これはアメリカの同時多発テロの直後に出た、フランスのル・モンド紙(2001年9月13日付)の見出しである。ひとつめには「パールハーバー・テロリスト」、ふたつめには「カミカゼ攻撃」という表現がある。フランスでは「自爆テロ」が起こるたびに、カミカゼという言葉が使われる。カミカゼは辞書にも載っている、日常的に使われる言葉だ。しかし、4年前の同時多発テロと、60年前の太平洋戦争に何の関係があるのだろうか?

その日のルモンド紙にはさらに、パールハーバー奇襲と山本五十六の写真が掲載されていた。日本人にはあまりピンと来ないかもしれないが、アメリカが他国に奇襲された記憶をたどると、パール・ハーバーに行き当たるわけだ。

同時多発テロが起こった日、私はパリのある学生寮に滞在していた。キッチンで食事の準備をしていたら、ベルギー人の友人が階段を駆け上がってきて「大変なことが起こった」と興奮して叫んだ。その後、みんなサロンのテレビに釘づけになった。炎上し、崩壊するツインタワーや、オサマ・ビン・ラディンの映像の合間に、不思議なことに、日本の特攻隊がアメリカの戦艦に突っ込んでいく映像が流されていた。それが何度も繰り返され、あたかも日本と同時多発テロが関係あるかのような演出だった。アメリカならともかく、なぜフランスのメディアがこういう映像を流すのか理解できなかった。ほとんどが西洋系の学生の中で、そのような映像を見せつけられることは気持ちの良いものではなかった。

つまり、特攻隊もアルカイダも、西洋的な理性によっては理解できない、東洋人の野蛮で、狂気じみた行為として結びけられ、思い出されていたのだ。NYを突然襲ったテロに対する驚きと恐怖を表象するのに、太平洋戦争時の日本のイメージが徹底的に用いられたのだ。それは決して過去の遺物ではなく、今も確実に流通しているイメージだ。そのことを思い知らされた。こういう緊急に作られた特別番組こそが、西洋人の無意識の欲望をあからさまな形で誘い出すのかもしれない。

■Après Pearl Harbor est venu Hiroshima

新聞にはさらにこんな見出しもあった。「パールハーバーのあとにはヒロシマが来た」。つまり、パールハーバーの報復として広島と長崎に原爆を落としたように、アメリカがテロ(=奇襲)の報復として核兵器を使うかもしれない。テロの直後、そういう記事をよく見かけた。非西洋的な狂気には西洋的な理性の力、核兵器がふわさしいと言わんばかりに。

日本人は敗戦という決定的な断絶によって、戦前/戦後と分けて考えてしまう。またイラク戦争に対してはアメリカと同調し、自衛隊を派遣したことで、アメリカと同じ視線でイラクを見ていた。しかし、アメリカにとっては、太平洋戦争と、湾岸戦争やアフガン・イラク戦争は連続性のある行動なのだろう。フランス人の友だちに「なぜ日本人は原爆を落としたアメリカを憎まないのか」と聞かれることがある。毎年夏になると、広島や長崎、あるいは空襲をテーマにしたドラマやドキュメンタリーが集中して放映される。みんな戦争が憎いというけれど、アメリカに対する感情は屈折して、決して表に出てこない。

10年前のル・モンド紙の見出しは、あの日の日本と911後のアフガンやイラクを思いがけなく重ね合わて見せてくれた。確かにこの視点にはアジアに対する加害者という視点が抜け落ちているが、この想像力は意外に重要かもしれない。

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