フランスからグローバリゼーションとオルタナティブを考える新しいフランス学

DSK事件が明らかにしたフランスとアメリカの違い – 「ル・モンド」より

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1998年アメリカ大統領ビル・クリントンが、20歳の研修生モニカ・ルインスキーとの性的関係を隠そうとしたことで、罷免されそうになったとき、フランスは驚嘆と皮肉、そしてある種の喜びの入り混じった感情(それを否定しなくてはならないだろうか?)を持ってこの光景に立ち会った。自らのピューリタニスムの罠にはまったアメリカ。些細な私的なレベルの出来事で世界一の強国の政治が麻痺してしまっている!この大西洋の両側のあいだに横たわる無理解のおかげで、「ル・モンド」は最大の売上を記録する。クリントン氏の私生活の最もプライベートな面を書いたスタール判事のレポートの出版のことである。

今日状況は逆になっている。あるいはほとんど逆だ。今回問題となったのはフランスの政治家で、アメリカはその過ちを正す側の役割だ。アメリカはレイプ未遂という罪状で、2012年大統領選挙のすべての調査においてトップだった人間を最も見世物的なやり方で逮捕し、彼を世論の格好の餌にし、さらに被告人女性の嘘を公表することで混沌を撒き散らし、フランスの政治を混乱に陥れた。またもや完璧な無理解。

フランスとアメリカの新たな仲たがいが問題なのではない。ワシントンとパリはニューヨーク州の司法機関に主導されたドミニク・ストロスカーン=DSK事件に対して賢く距離を保った。しかし二つの国でストロスカーン氏の受けたメディア的、政治的待遇の不釣合いは、少なくとも4つの分野における深い溝を明らかにした。それらは司法、男女関係、透明性、お金である。

まずは司法について。おそらくそれぞれの歴史に由来するのだが、アメリカ人と暴力との関係はヨーロッパ人と暴力との関係とは異なる。私たちはいつも彼らの銃に対する寛容さ、死刑制度に頼ることに対する寛容さをなかなか理解できない。それと同じように手錠をかけられた被疑者をさらし者にすること、二人の警官に挟まれた、あの名高い perp walk (直訳すれば罪を犯した者の行進)についても理解に苦しむのだ。それはDSK事件においてフランス人に著しい衝撃を与えたが、これはアメリカ司法のありふれた付随物なのだ。推定無罪と予審に基づくフランスのやり方とは裏腹に、アメリカの司法システムは、断罪的なのだ。

DSKは7月1日に戻ってきたが、同じようにそれは検察が被害者の信用性の欠如を認めたからで、フランス人にとってありえないことのように思えた。しかしながらそれがアメリカ式の告発の仕方なのである。アメリカの司法は告発し、調査し、もし調書の内容が調査の過程で覆るようなことがあれば訴訟を最後まで進めるよりも、それをむしろ公表する。それとは逆にDSK事件よりも極端な展開を見せた、悲しくも有名なフランスのウトロー事件(注1)では、主要な原告であるミリヤム・バダウイが証言を撤回したときでさえも法廷は前の判決を取り消さなかった。被告人たちは有罪を宣告され、控訴して初めて最終的に無罪になった。

男女関係について。その溝は深い。DSKの仮釈放に対するフランスの最初の反応は「社会党にどのような影響があるか」だった。アメリカではまず、DSKの逮捕によって惹起された女性の発言の自由に対する影響が問われた。非難されるべき女性関係のせいで辞職に追い込まれたアメリカの政治家たちは数えられないほどである。あきらかにアメリカの男たちはフランス人よりも男女の平等に関して、セクハラに対する闘争に関して敏感である。WSJは6月29日に「ラガルド氏、IMFを指揮する始めての女性に」という大見出しを掲げた。フランスの新聞はこんな見出しを思いつきもしなかった。

透明性について。真実の徹底的な追求はアメリカの公的な生活の不変の特徴である。ビル・クリントンが身に招いた厄介事はモニカ・ルインスキーとの関係が原因だったのではなく、「この女性と性的な関係がなかった」と嘘をついたからだ。法廷での偽証は重大な罪である。有権者とメディアはすべてを知ることを要求できる。公的な重要人物の私的な生活は。選挙の候補者は家族について、遺産について、健康状態に対しての透明でなくてはならない。

アメリカではメディアは知ることを自由に関する法律に基づいて公的な文書に対し広範囲にアクセスが保障されている。フランスではプライベートライフを保護する傾向の強い法律によって政治家たちに対する調査の権限は制限されている。結果的にフランスの伝統にしたがって政治家たちの私的生活は彼らにしか関わらないことだ。

お金について。2004年の大統領選でブッシュと戦った民主党候補のジョン・ケリーは莫大な遺産の相続人であるテレサ・ハインツ(注2)と結婚していた。彼女は選挙戦で彼に多額の資金援助をした。アメリカでは左派であると同時に金持ちであることが可能なのだ。しかしフランスはそうではない。DSKの逮捕と月5万ドルの家賃の邸宅の衝撃の前に、DSKを打ちのめした「ポルシェ・スキャンダル」(注3)をみればわかるのだろう。少なくともふたつの国に共通することがあるとすれば、それはメディアの熱狂である。

注1)2004年北フランス、ウトローでの子供の性的虐待事件の裁判。主要な目撃者が容疑者の関与について嘘の証言をしたので、数人の容疑者が何年も拘留され、ひとりが自殺した。
注2)ハインツ社のオーナー、H・ジョン・ハインツ三世の未亡人。ジョン・ハインツ三世が1991年、飛行機事故で死亡した後5.5億ドルの遺産を相続。
注3)ストロス=カーン夫妻がポルシェに乗り込む写真をきっかけに、メディアによって彼らの莫大な資産が暴かれた。あらゆる一等地に所有された不動産の総額は数千万ユーロと見積もられた。

Ce que l’affaire DSK révèle de nos différences Le Monde
| 05.07.11 |
Sylvie Kauffmann
traduit par cyberbloom

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