フランスからグローバリゼーションとオルタナティブを考える新しいフランス学

フランス語は役に立つのか?―労働経済学の視点から

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今やどこの大学もグローバル人材の養成を看板に掲げるようになりましたが、ところで「グローバル人材って、一体どんな人材?」と問われたときに端的に答えられる方は意外と少ないのではないでしょうか。

答えのひとつを得るために、労働経済学の視点から考えてみましょう。この分野の専門家である大阪大学の松繁寿和さんはグローバリゼーションを「直接投資の増加という経済の質的変化」と定義されています。2000年に入ってからの日本経済の変化のひとつに貿易依存度が高まったことが挙げられますが、それ以上に「資本や人が直接移動する」ようになったことが問題だと主張しておられます。

「直接投資は、他国に工場を移転したり支店を開設したり、工場を移転したり支店を開設したりすることである。生産活動を他国に移し、そこでの生産活動に直接関わることになる。貿易にくらべれば、人と人とが接触する機会が多く、共同で作業をする現場を多く生み出す」

エコノミスト 2014年 1/14号 [雑誌]日本では、海外直接投資は1990年代後半から上昇率が上がりましたが、大きな変動率が特徴で、それは「リスクが大きい」ことを意味します。「直接投資を、いつどのような水準で行うかを決定するためには、世界の経済情勢を十分に把握しておくことが企業経営上極めて重要な条件となっている。必要な情報の収集と、正確かつ大胆な経営判断が必要とされる」ということです。松繁さんは、こうした直接投資が拡大する時代において、対面あるいはインターネットを介したコミュニケーションを見据えた語学教育が必要になること、さらに英語以外の語学学習も重要になることを説いておられます。

直接投資と関連することですが、海外採用比率を上げている日本企業も増えています。つまり国内企業においても外国人と日本人が競合関係に置かれるということです。2013年度新卒採用において、パナソニックは国内採用350人に対し海外採用1100人、ユニクロを傘下に持つファーストリテイリングは国内採用500人に対し海外採用950人だったそうです。最近読んだ経済誌の記事では、「シンガポールや上海あたりには、3か国語を話し、トップ大学を卒業して、米国系企業で修行した人材がかなりいるので、(日本人ではなく)そういう人を雇ったほうが手っ取り早い。中国やシンガポールでのオペレーションにおいて、何もわからない日本人を(現地に)派遣するのは時代遅れになるだろう」という記述がありました(「増加中「海外赴任嫌いの若者」に、意識改革を促す必要がない理由」)。

ようやくフランス語の話に入りますが、実は世界規模においてフランス語の話者は増えています。2010年現在、世界でフランス語を話す人は2億2000万人いますが、今後、アフリカの人口増加で2050年にはフランス語話者は7億人に達し、アフリカ諸国が85パーセントを占める見込みです(⇒資料参照)。現在の2億2000万人のうち、60%が30歳以下の若い人たちが占めていることがフランス語の将来性を物語っています。ノマド論で知られるフランスの経済学者、ジャック・アタリ氏も「仏語を話す人が増えれば遠隔医療・教育など仏語サービス市場が広がる。仏語はフランスにとって重要な道具だ」と述べています(※)。すでに多くの中国人がアフリカの資源を求めて進出しており、中国の大学においてもフランス語学習者が増えています。

2013年1月にアルジェリアの天然ガス精製プラントを舞台にした痛ましい人質拘束事件が起こり、日本人も犠牲になりましたが、多くの日本企業がすでにプラント建設やインフラ整備のためにアフリカに進出していることが改めて認識されました。イスラム武装勢力の暗躍や長引く内戦など、アフリカはまだまだ多くの問題を抱えていますが、一方で、びしっとスーツできめ、高級腕時計を身に着けたアフリカ系のビジネスマンたちをパリでよく見かけるようになりました。

1990年代に2050年の英語の未来を予測した英国の言語学者、デイビッド・グラッドル氏は著書『英語の未来』の中で、一定規模以上の広がりを見せている英語の強さを認めながらも、他の言語が台頭してくると予測しています。日本で、英語以外の外国語教育を実践する高校が減り続けていることは、日本政府の言語政策の疎さを露呈するもので、先の松繁さんは「アメリカ人が手を広げないところにビジネスを拡げるため、習得する言語を戦略的に選択」すべきであり、「例えばアフリカを巨大新興市場ととらえれば、フランス語、アラビア語の習得者を増やす意味を理解できるはずだ」と述べています。

こうした世界の経済状況を踏まえ、EU諸国でも、「英語+複数の外国語」学習が重要だと認識されるようになってきており、日本のような語学学習者の多様性のなさはグローバル進出にとってもはや致命的とさえ言えます。また複数の外国語を同時に学習するわけですから、外国語を効率よく習得する学習ストラテジーも不可欠です。今やそのためのノウハウも十分蓄積されており、日本の高等教育でも活用すべきでしょう。

私の授業を取られた方は、私が中国に行ったとき、現地の文化習慣に疎かったためにやらかしてしまった失敗談を聞かれたことと思います。基本的な外国語能力(聞く・話す・読む・書く)と同時に、文化や習慣の違いについての知識も求められることになるでしょう。French Bloom Net はこうした「異文化」についても学べるような構成になっています。

『ふらんす』(白水社)という老舗の雑誌もフランス語学習やフランスの今を知るのに役立ちます。手前味噌になりますが、4月号にFBNが『帰ってきた時事ネタ会話』という10ページにわたる記事を書いています。パリ政治学院で国際政治を学ぶ日本人留学生春樹君と、パリ第7大学で日本語と日本文化を学ぶフランス人学生 Margo さんが、フランスの政治や日常生活をネタに繰り広げているフランス語の会話とその解説です。フランスの今を学ぶと共に、エスプリの効いたフランス語の表現も同時に学んでください。

※推計とジャック・アタリの発言は『エコノミスト』2014年1月14日号「英語と経済」特集から引用。

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