フランスからグローバリゼーションとオルタナティブを考える新しいフランス学

1月の一曲 “At Last”   Etta James (1961)

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「希望」を感じる曲はないか、と思いめぐらして浮かんだのがこの曲。先頃亡くなったエタ・ジェイムズが20歳そこそこで歌った、オールディーズ感たっぷりなバラードです。

オリジナルのレコーディングは1940年代。グレン・ミラー楽団でした。エタが吹き込んだ当時でさえ懐メロだったわけですが、彼女の尋常じゃないパワフルな歌声は、歌に新しい命を吹き込みました。

夢に見た相手(希望と読み替えてもいいかもしれません)とようやく巡り会えた・・・喜びにうち震える瞬間を歌った甘い内容の歌です。が、エタならではの直球ど真ん中!な真っすぐさとメロディを浸食するブルージーなにじみは、歌に独特の陰影と狂おしさを与えています。「あなた」を求め焦がれて必死に手を伸ばす気持。「あなた」とついに向き合った時にわき起こる胸のざわめき。恐れ。不安。あれこれ入り交じった感情がふつふつとわきたっているのが聞こえます。

この陰影には、エタ・ジェイムズという一人の女性が歩んできた人生の複雑さも関係しているかもしれません。1930年代末の西海岸に黒人の不良少女の私生児として誕生。父親は「白人」というということしか知らない(母親は「あんたの父さんは伝説のハスラー、ミネソタ・ファッツだ」とうそぶいていたそうだけれど)。親の愛とは縁遠く、15才で年をごまかして芸能界入り。生きるためにステージに立ち続け、彼女を認めてくれた新しいレーベルのために吹き込んだのがこの曲でした。それから他界するまで50年余り。警察のごやっかいになるなど人並み以上の浮き沈みを経験することになりましたが、エタは歌うことを止めませんでした。彼女はインタビューでこう語っています。「歌うとね、ため込んできたいやなこと、あれやこれやをばーっと吐き出せるの。」新しい場所で、歌手として再スタートを切った若いエタのいろいろな思いが、そっくりそのままこの曲に落とし込まれているようにも聞こえるのです。

この曲は、ハッピーエンドではなく、始まりの曲でもあります。ついに私のものとなった「あなた」と手を取り合って、さてどこへ行きましょう?不安と高揚が入り交じるスタート。さあ、2012年はいかなる年となるでしょうか。

聴いてみたい方はこちらでどうそ。 youtu.be/_1uunRdQ61M

 

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GOYAAKOD=Get Off Your Ass And Knock On Doors.

大阪市内のオフィスで働く勤め人。アメリカの雑誌を読むのが趣味。 門外漢の気楽な立場から、フランスやフランス文化について見知った事、思うことなどをお届けします。