フランスからグローバリゼーションとオルタナティブを考える新しいフランス学

9月の1曲 “Démons et Melveilles” Cora Vaucaire

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朝開いた新聞にコラ・ヴォケールの名前があった。シャンソンの世界の往年の名花。享年83才。誰もが知っているわけではないけれど、その歌声を一度でも聞いたことのある人には、忘れられない存在でした。ピアフ的と呼ばれる歌手はこれからもでてくるだろうけれど、コラ・ヴォケールのようと讃えられる歌い手は現れるでしょうか。

ピアフの歌がフランスのアーシーなソウル・ミュージックだとするならば、コラの歌はカーメン・マクレエといった一流どころのジャズシンガーが歌うトーチソングを思わせます。声を張り上げない、繊細で完璧なヴォーカル・コントロール。磨き上げられた言葉の表現。かといって、居ずまいを正さなきゃ、という堅苦しさはない。シンプルな伴奏とともに彼女が一曲ごとに作り出す小さな世界には、静かに耳を傾けたくなる魅力がありました。こちらから歩み寄って、息をひそめて向き合いたい音楽もあるのです。

YouTubeでひさかた振りに彼女の歌を聞いて発見したのは、ある種のきびしさでした。感情に溺れず、メロディにもたれかからず、歌手としての「私」より彼女が感じ入った歌の魅力を前に出そうとする姿は、禁欲的ですらあります。(レコードジャケットで見る彼女は、やわらかい不思議なコケットの持ち主なのですが。)

今やシャンソンであったことすら忘れられている感のある『枯葉』(彼女が世に送り出した歌だ)を聞いてみると、よくわかります。あの強いメロディのおかげで誰が歌ってもそれなりのムードに持っていけるのだけれど、彼女の歌には聞き手をセンチにするようなところはみじんもありません。あるのは、コラ・ヴォケールという個性が、プレヴェール=コスマの作った歌に出会って生まれたもの。それだけなのです。

訃報の後は関連動画のカウンターが跳ね上がり書き込みも増えるものだけれど、数もコメントもさしたる変化はなく寂しい限り。フランス本国でもold-fashionな存在として忘れられようとしているのでしょうか。まっさらな耳にこそ聞いて欲しい。

マルセル・カルネの映画『悪魔が夜来る』の主題歌として知られているこの曲を選んでみました。聴いてみたい方はこちらでどうぞ。

youtu.be/TD-wH04uA5w

プレヴェールの詩を、コラが朗読しています。フランス語の響きがこれほどきれいなものとは!日本語の対訳をみながら聞くといっそう胸にせまります(「もっと見る」をクリックして下さい)。

youtu.be/QA53Uti8ct4

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GOYAAKOD=Get Off Your Ass And Knock On Doors.

大阪市内のオフィスで働く勤め人。アメリカの雑誌を読むのが趣味。 門外漢の気楽な立場から、フランスやフランス文化について見知った事、思うことなどをお届けします。