フランスからグローバリゼーションとオルタナティブを考える新しいフランス学

シャルル・トレネを歌うロッド・スチュワート

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2016年6月10日、イギリスの歌手ロッド・スチュワート(Rod Stewart)にナイトの爵位を授けられることが発表された。エリザベス2世女王の90歳の誕生日を祝う事業の一環とのこと。ロック歌手の叙勲など、もはや珍しくも何ともない話だが、ロッドといえば、少し気になっていたことがあったので、この機会に一言述べておこう。

ロッド・スチュワートは、「往年のロック歌手」ではない。2000年代に入ってからも、何度もアルバムをトップ10にチャートインさせている、現役歌手である。とくに有名なのが、10年近くかけて精力的に取り組んできたThe Great American Songbookというカバー・シリーズだ。タイトル通り、ガーシュウィンやコール・ポーターなどの、いわゆるジャズ・スタンダードと呼ばれる、主に20世紀前半の名曲を、ピアノとオーケストラをバックに歌ったもので、現在5作目まで発表されている。

注目したいのが、このシリーズのなかで、ロッドがシャルル・トレネ(Charles Trenet)の作品を2曲取り上げていることだ。第4作目の”Thanks for the memory” (2005)に収録された”I Wish You Love”(原題:Que reste-t-il de nos amours ?)と、第5作目の”Fly Me To The Moon” (2010)に収録された”Beyond The Sea”(原題:La Mer)である。どちらも英語版なので、原曲を知らなければ、フランス原産とは気づかないかもしれない。

それもそのはず、シャルル・トレネ自身が、アメリカン・ジャズに夢中になったシンガー・ソングライターだったのだ。南仏のナルボンヌに1913年に生まれたシャルル少年は、父親所有のガーシュウィンのレコードを聴いて育った。トレネを特徴づけるスウィングのリズムをはじめ、彼はフランスのポピュラー音楽にジャズ・イディオムを定着させた一人である。

そのトレネのメロディーが、アメリカで英語詞を付けられ、サム・クックを最も尊敬すると公言するイギリス人歌手によって歌われる。そこには、100年に及ぶポピュラー音楽の歴史を垣間見るような面白さがある。それにしても、ロッド卿(Sir Rod)の歌声の素晴らしいこと! 味わい尽くすべし。

www.inquisitr.com/3191346/rod-stewart-knighted-by-queen-elizabeth-i

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1975 年大阪生まれ。トゥールーズとパリへの留学を経て、現在は金沢在住。 ライター名が示すように、エヴァリー・ブラザーズをはじめとする60年代アメリカンポップスが、音楽体験の原点となっています。そして、やはりライター名が示すように、スヌーピーとウッドストックが好きで、現在刊行中の『ピーナッツ全集』を読み進めるのを楽しみにしています。文学・映画・美術・音楽全般に興味あり。左投げ左打ち。ポジションはレフト。