フランスからグローバリゼーションとオルタナティブを考える新しいフランス学

今月の一曲 “Up On The Roof” Carole King

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好きな作詞家の一人、ジェリー・ゴフィンが亡くなった。ソングライターチーム、ゴフィン—キングの片割れとしてつとに有名だけれど、奥方でもあったキャロル・キングの、コンビ別れしてからの活躍があまりに輝かしくて、その影に隠れてしまっているような気がしてならない。(シンガー・ソングライター、キングの代表作であるアルバム ”Tapestry” だって、キーとなる曲はゴフィンとの共作だったりするのだが。)

GOFFIN & KING確かに誰もがこぞって ”Poet” というラベルを貼りたくなるような作風の人ではないだろう。ストーリー性、粋な言葉使いというものが目だつ歌詞ではない。そもそもゴフィン—キングの黄金時代は、バブルガム・ポップスの全盛期。3分間でティーンのハートをつかむ「売れるもの」を量産するのがソングライティングであった頃で、作家に自由が与えられていなかったこともある。しかし、キャロルの作るメロディーにジェリーのやさしいコトバが乗っかると、なんとも人懐っこくてつい口ずさんでしまうような楽しい歌が誕生した。二十歳そこそこのカップルが作る歌は、英語圏でない国も含め世界中のカーステレオから流れて出て、無数の人々の人生の一部になった。リズムやアレンジを変え、歌い手の年齢や性別の壁を越えて息長く歌われ続けているのも特徴的だ。歌作りのプロとして、立派なことであると思う。コンビ解消後も、寡作ではあるが折りにふれてヒット曲を手がけた。ネスカフェのCMで日本でもおなじみのあのダイアナ・ロスの歌も彼のペンによるものだったりする。

 そしてジェリー・ゴフィンは、彼にしか書けない歌を残している。以前浅川マキの自由訳版を紹介した『それはスポットライトではない』しかり。そして今回紹介する ”Up On The Roof” も。ドリフターズがヒットさせた、しごく陽気なポップソングだが、歌詞は意味深だ。まず発想の転換がある。ゴフィンは、屋上にアサイラムを見いだした。

「いろいろあってしんどいな、と思ったら、屋上にあがってごらん。ゆううつな気分が溶けてくよ。静かな気持ちになれることこの上ない。世間の喧噪は、はるか下。誰も邪魔しにこない。夜になれば星空のショーだって楽しめる。都会のど真ん中にある、やっかいごととは無縁な二人だけの場所。屋上においでよ」

ブルックリン育ちのニューヨーカーであるゴフィン本人の経験を下敷きにしているのかも知れないけれど、この歌は誰しもの胸にすとんと入ってくるだけでなく、さりげなく救いの手を差し伸べているようにも思う。

秀作ドラマ『ナース・ジャッキー』でこの曲が効果的に使われていた。心の病に苦しむ小学生の娘に向かって、主人公のジャッキーがカラオケで歌いかける。残念ながら、幼い娘にはママが何を伝えたいのかわからない。ただ、テレビの前の大人には、ジャッキーの気持ちが痛いほど伝わるのだ―なんとかして娘をしんどさから救いたいという彼女の気持ちが。

「自分にはプロテスト・ソングを書く才能はない。しょせんソープ・オペラの枠の範囲の歌しかつくれない。」と生前語っていたゴフィン。しかし、彼がすくい上げ平易な言葉で歌にしたものは、時を超えこれからも人の側にあり続けるように思う。

聴いてみたい方はこちらでどうぞ。 youtu.be/CRBE06gR6KY

goyaakod

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大阪市内のオフィスで働く勤め人。アメリカの雑誌を読むのが趣味。 門外漢の気楽な立場から、フランスやフランス文化について見知った事、思うことなどをお届けします。