フランスからグローバリゼーションとオルタナティブを考える新しいフランス学

今月の1曲 Tift Merritt & Simone Dinnerstein “Night” (2013)

posted by
「コラボレーション」という言葉が当たり前に聞かれるようになって久しい。コンビニの企画もの商品をつい連想してしまう、お手軽さ、チープさが目立つ言葉になってしまったけれど、もっと緊張感と期待感を持たせるものだったはずではなかった? Night今の状況を作ったのは、「コラボレーション」が、聞き手を揺さぶるほどの結果を生まなかったからかもしれない。異なる2者の、おもしろいけれど意外なほど「きれい」な混り合い、はまり具合は、気持ちよくさせてくれはするものの、それだけだ。互いのエッジをぶつけ合うのではなく、最初から歩み寄ることを前提にしていたんではないかなどと、秘かに思ってしまうのである。 久しぶりに「コラボレーション」を新鮮に感じる1枚に出会えたので、ご紹介したい。オルタナ・カントリー系シンガー・ソングライター、ティフト・メリットとクラシックのピアニスト、シモーヌ・ディナースタインが一緒に作り上げたアルバム、“Night”。 それぞれ自分名義のアルバムを発表しそれなりのキャリアを積み上げてきた二人が、クラシックの雑誌の企画で対談する。お互いの音楽については知らなも同然だけれども、愛して止まない「音楽」について語り合ううちに、意気投合してしまう。音楽に寄せる思いから、音をどうやって表現してゆくかといった方法論に至るまで、共感できることがいっぱい!驚いた二人は、一緒に音楽を作ってみることにした。よりすごい音に出会える期待や音楽的野心からの試みではなく、あくまで友情の証として。 片や長年にわたってクラシック音楽を叩き込まれ、楽譜に書かれた音をいかに美しく表現するかを追求してきた演奏家。片や、幼い頃に父から口伝えで歌うことを習い、今ここの気分を即興的に音にしてきたシンガー。互いの音文化や背景の違いは大きく、そうやすやすと二人の出す音を組み合わせてはくれない。しかし、二人はどちらかの世界に巻かれてそちら流の音楽を作るのではなく、違いも「込み」で美しく響く瞬間を探す―基本的にピアノと声のみで。 例えば、クラシックの名歌が取り上げられているが、シモーヌの端正なピアノに乗って、ティフトは(その曲について彼女なりの理解を深めた上で)いつもの彼女らしい素直な歌い方で歌ってみせている。正統派ソプラノ歌手のコントロールを極めた歌とはかなり違う仕上がりで、聴く人によっては好き嫌いがはっきり分かれるかもしれない。しかし、そういったテイクも排除せず、お互いの音楽性の境界線に立って、選んだ歌をどう表現するか真剣に向き合ったこのアルバムには、どの曲にも静かな緊張感が満ちていて、妙にすがすかしいのである。 アルバムのタイトルにもなっている曲を選んでみた。シンガー・ソングライター、パティ・グリフィンのちょっとメランコリックな曲で、聴き手の気持ちにすっと入ってくるティフトの声と、シモーヌの少ない音数ながら気配や色を感じさせるピアノの音色が絡み合って独特の静けさ、クールさをかもし出している。暑い夜に聞くと、一瞬汗を忘れる―そんな一曲だ。 聴いてみたい方はこちらでどうぞ。(ライブヴァージョンにつき、リラックスした仕上がりになっています。) GOYAAKOD 人気ブログランキングへ ↑ポチッと、Merci!!

posted by

人気ブログランキングへ

FBN-banner01 FRENCH20BLOOM20STORE-thumbnail2

GOYAAKOD=Get Off Your Ass And Knock On Doors.

大阪市内のオフィスで働く勤め人。アメリカの雑誌を読むのが趣味。 門外漢の気楽な立場から、フランスやフランス文化について見知った事、思うことなどをお届けします。