フランスからグローバリゼーションとオルタナティブを考える新しいフランス学

FRENCH BLOOM NET 年末企画(2) 2012年のベストCD

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年末企画の第2弾は2012年のベストCDです。今回はNHKラジオフランス語講座でおなじみの國枝孝弘さん、文芸評論家の陣野俊史さん(『じゃがたら』『フランス暴動 移民法とラップ・フランセ』など音楽関連の著作もあり)にも参加していただきました。毎年、variété française から選んでくださる Manchot Aubergine さんは今年のベストアルバムにフランソワーズ・アルディーを挙げていらっしゃいます。

Second TourAllelujah! Don't Bend! Ascend!リトルメロディ

陣野俊史(@jinnotoshifumi)
1. Zebda, Second Tour
2. Godspeed you! Black Emperor, Allelujah! Don’t Bend! Ascend!
3. 七尾旅人『リトルメロディ』

■フランスと関係あるのは1だけだが、どのアルバムも結構、繰り返し聴いた。どれも2012年にリリースされた。1はアンチ・サルコジを念頭に置いていたし、2はカナダで可決されたデモを規制する法律に反対するために作成された。3に収められた「圏内の歌」は、福島の原発事故が念頭から去らない者たちには、とりわけ忘れがたい名曲。音楽について「説明」するのは難しいが、オレは音楽批評家ではないので、好き嫌いだけを述べさせてもらう。上記の3枚以外だと、夏に坂本龍一が企画して開催された NoNukes のフェスで見たクラフトワークが忘れられない。「ラジオアクティヴィティ」という曲を何度聴いたことだろう。大友良英のさまざまな活動や、面影ラッキーホールの新譜もインパクトが強かった。あと、断末魔のようにしてときどき届けられる Noir Désir の音源も、やっぱり何度も聴いてしまった。Cantat は本当に戻ってくるのか……。

変身(初回生産限定盤)(DVD付)Howard Tate

國枝孝弘(@TakaKunieda)
1. チャットモンチー 『変身』(2012)

■2人組になったチャットモンチー。歌詞が弱くなったのは否めないが、「バンドやろうゼ!」っていう2人の真直ぐな姿勢が眩しい。
2. Howard Tate 『Howard Tate』(1971, 2012)
■今年の強烈な出来事といえば、アトランティックソウル&ブルース一気に100枚。1枚千円攻撃だった。その中で驚いたのがこのハワード・テイト。男性ヴォーカルのパンチの効いた高音ヴォーカルに腰砕け。
3. Bloodthirsty butchers 『血に飢えた四半世紀』(2012)
■留萌出身の「元」パンクバンドのこれまでのアルバム12枚とDVD1枚を収めたボックスセット。自分にとっては パンクよりも、とにかくギターの音圧によるひずんだノイズを美しいメロディにのせられる希有なバンド。

不知火検校
1.エレーヌ・グリモー(ピアノ、8月20日、ルツェルン)
2.アルド・チッコリーニ(ピアノ、12月1日、東京)
3.中野振一郎(チェンバロ、3月28日、東京)
Resonances
■最近はCDを買うことが減り、もっぱら生演奏にばかりこだわっています。1のグリモーについてはブログで報告した通りです。2のチッコリー二ですが、87歳の老ピアノ弾きがドビュッシーを弾いている姿を間近で見るだけで思わず泣けてくる、そんな演奏会でした。3はいまや日本を代表するチェンバロ奏者となりつつある中野の名バッハ演奏です。その他、曽根麻也子(チェンバロ)、諏訪内晶子(バイオリン)、小山実稚恵(ピアノ)などのベテラン勢は安定した演奏を聞かせてくれました。

L'amour FouLes PassagersVelvet Underground Song

Manchot Aubergine
1. L’AMOUR FOU (狂気の愛) / FRANÇOISE HARDY フランソワーズ・アルディ
■今年のベストワンは文句なくこれ。アルディの半世紀にわたるキャリアの中でも指折り数えるほどの傑作。とくに Calogero カロジェロ作の Pourquoi vous と Julien Dore ジュリアン・ドレ作の Normandia の2曲が秀逸。70年代アルディのファンにも、10代20代の若い人にもぜひ聞いてほしい。人生の不思議。生と死の秘密。希望。ノスタルジー。諦念。いろんなものがここにある。
2. LES PASSAGERS (乗客) / BERRY ベリィ
■ルックス、雰囲気、音楽性、声。私たちが思い浮かべる「フレンチポップ」の理想型のひとつ。ついでに言っておくと、去年出た Vincent Liben ヴァンサン・リベンのアルバムでのデュエット曲 Mademoiselle Liberté も忘れがたい名曲だ。youtu.be/Ov1KYo2Iom0
3. THIS IS A VELVET UNDERGROUND SONG THAT I’D LIKE TO SING / RODOLPHE BURGER ロドルフ・ビュルジェ
■やたらとCDを出す人だが、どれもこれもすばらしい。今回はヴェルヴェット・アンダーグラウンドの曲のカバー集だが、ざらついた感じのギター・サウンドと声がルー・リード作品と抜群の相性を示す。ちなみに彼は『何も変えてはならない』(ペドロ・コスタ監督)で Jeanne Balibar ジャンヌ・バリバールの横でギターを弾いていたカッコイイ中年男。伝説のロックバンド Kat Onoma カット・オノマの元リーダー。

CircusGrand Lievre

4. CIRCUS / CIRCUS サーカス ■Calogero カロジェロが盟友 Stanislas スタニスラス、Philippe Uminski フィリップ・ユミンスキー(ユマンスキー?)と結成したバンド(他のメンバーは女性二人。Karen Brunon カレン・ブリュノンと Elsa Fourlon エルザ・フルロン)。印象としてはバンドというより、カロジェロを中心としたバンド形態のプロジェクトという感じ。でもこのアルバム、とっても良いです。名曲揃いだし、作詞陣も豪華だし、全員ヴォーカルをとれるので多彩な声の妙味もある。最近のカロジェロのソロアルバムよりは水準はかなり上。
5. GRAND LIEVRE(大うさぎ) / JEAN-LOUIS MURAT ジャン=ルイ・ミュラ
■骨太シンガーソングライターの2年ぶりの新作。スタイルは変わらぬが相変わらずの高水準。限定盤のオマケについていた liveCD もなかなかのものだった。

対音楽(ALBUM+DVD)One Night Stand: Live at the Harlem Square ClubJO + JAZZ

bird dog
1. 中村一義 『対音楽』

■今年出たこの新作は、ベートーヴェンの交響曲1番から9番までを巧みに引用した全9曲。こう言うと企画物っぽいけれど、むしろ中村一義の過去の音楽をコラージュしたなかに、ルーツの一つとしてのベートーヴェンが取り上げられたという感じで、違和感はありません。デビュー曲「犬と猫」のあの「どう?」まで出てくるのには驚きましたが。相変わらず直球の歌詞が心に刺さります。
2. Sam Cooke 『One Night Stand : Live at Harlem Square Club』
■サム・クックのライブ盤は、『At the Copa !』をずっと愛聴していました。ようやくこちらも入手し、聴き較べることができました。白人相手のディナーショーっぽいコパのライブでは、一流のエンターテイナーぶりが魅力でしたが、黒人相手のハーレム・スクエア・クラブでは、ぞくっとするぐらいセクシーで、その声の表情の違いにびっくりしました。どちらを聴いても、サム・クックが不世出の歌手であることを納得させられます、ってそんな当たり前のことを今さら言うのも何ですが。
3. Jo Stafford 『Jo + Jazz』
■昔からこの人の折り目正しい発音と発声が好きでしたが、ジャズナンバーを歌ったこのアルバムも素敵でした。とくに “The Folks Who Live On The Hill” は、メロディーも歌詞も美しく、何度も聞き返しました。

exquise(@Kabcat) Foster the People “Torches” Torches
■2011 年の作品ですみません。最近のポップ・ミュージックなんてもうついてけない…と思っていたら、今年のサマーソニックに出ていた彼らのパフォーマンスにハマり、アルバムも買ってしまった。さまざまなジャンルの音楽を寄せ集めて「こしらえた」という表現がぴったりの曲の数々は、キラキラした華やかさもあれば、ちょっと懐かしく感じられるところもあって、何度聴いても飽きない。

PlacesVisions

Mélusine
1. Katie-Jane Garside Lalleshwari / Lullabies in a Glass Wilderness (2005)
■Daisy Chainsaw の頃のわめきたてるような歌声から感じられた、ひりひりするようなむき出しの自意識が年月を経てじっくりと熟成され、いまや、そのお声とお姿に神々しさすら湛えておられます。哀愁女王と呼ばせていただきたい。
2.Lou Doillon / Places(2012)
■深いハスキーボイスが放つ存在感にノックダウンされること請け合い。彼女の歌声に、シャルロットやジェーンを探すのは無意味。その歌詞は、痛々しく、苦しく、でも愛に溢れている。哀愁番長と呼ばせていただきたい。
3.Grimes / Visions (2012)
■カトリック教徒の家庭に違和感を覚え、自分は魔女だと言い聞かせる少女時代を過ごしたという彼女。ベビーボイスとガーリーな外見に注目が集まっているようですが、わたくしとしては、何となくもてあましているような彼女の内面の「暗さ」の今後に興味アリ。哀愁の女予備軍と呼ばせていただきたい。おー、我ながら見事に上から40代、30代女、20代に分かれましたわん♪

月世界旅行(DVD付)Et Vous Tu M'aimesアデュー 世界戦争

cyberbloom
1. AIR – Le voyage dans la lune (2012)
2. Brigitte – Et vous, tu m’aimes (2011)
3. 世武裕子 『アデュー世界戦争』(2012)

■1993年に偶然発見されたカラー版がデジタル修復されたジョルジュ・メリエスの『月世界旅行』。時間を超えたコラボとして AIR がそのサントラを作った。明らかにビートルズの『サージェントペパーズ』を意識している。アウタートリップはインナートリップ。アポロ11号の月面着陸と LSD が同時代の産物だったことを思い出させてくれる。
■ところで、フランスでブリジットと言えば、ブリジット・バルドーかブリジット・フォンテーヌだろうか。最近のブリジットはシルヴィー&オレリーの女性デュオ。グループの名前はやはりバルドーとフォンテーヌへのオマージュなのだと言う。’Battez-vous’ のクリップを見て以来、彼女たちのことが気になってしょうがない。ハモリの美しさやキレも特筆すべきだが、キャラにも萌えた。あまりフランスにいなかったタイプ。挙げたアルバムは去年のものだが、今年の12月にも新しいアルバム ”Encore” を出して快進撃は続く。
■またツィッターのやり取りする中でアーティストの方から直接サンプルをいただきCD評を書くという貴重な体験もした。世武裕子さんの『アデュー世界戦争』のことである。パリのエコールノルマルで映画音楽を学んでいるという新しい世代のフランス系アーティストのさらなる活躍を期待したい。
■ところで iPod の今年のヘビロテは Can だった。音楽の使い方に定評のあるトラン監督の『ノルウェイの森』で流れていたのを聴いて「Can ってこんなにカッコよかったっけ」と再発見。そういえば去年、’Tago mago’ の2004年のリマスター盤がレアライブ付きで再発されたところだ。昔と違うのは動画サイトでダモ鈴木のパフォーマンスが堪能できること。
■音楽と直接関係ないが、「ギターの弦を捨てないで。それはニッケル製です」という記事を訳して紹介したら5000 RT を超え、100万人に拡散した。フランスでギターの弦(レアメタルであるニッケルを使う)のリサイクルが始まったという内容だ。「自活する美術館」が象徴的だが、経済格差の拡大や緊縮財政の時代にあって人々の関心は確実にアートとコストのバランスに向いている。

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