フランスからグローバリゼーションとオルタナティブを考える新しいフランス学

フランス映画の現在の傾向

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第2次大戦後、ヨーロッパの多くの国々は、ハリウッド映画の猛威を受けて自国の映画産業に壊滅的打撃を被りました。そんな中、早くから国産映画の保護に力を入れたフランスだけは、アメリカ映画に対抗して生き残り続けることができたのです。2000年代に入ってもフランスで制作される映画数は増加傾向にあり、観客数も好調を維持。「映画大国」の名を今も保っていると言えるのですが、果たしてその実情はどうなのでしょう?

30年代の「詩的リアリズム」、60年代の「ヌーヴェル・ヴァーグ」、80年代にはBBC(ベッソン、ベネックス、カラックス)に代表される新世代の活躍と、華々しい過去を持つフランス映画ですが、90年代からこちら、最近の動向についてはどうもよく分からない。フランスに、あるいは映画に関心のある方の中にはそんな印象を持たれている方もおられるのではないでしょうか。「ひょっとして今のフランス映画は駄目なのかも」という印象を、薄々と、あるいははっきりと感じておられる方も、実は少なくないかもしれません。

林瑞絵、『フランス映画どこへ行く ヌーヴェル・ヴァーグから遠く離れて』、花伝社、2011年は、「古く寂れた豪華客船」にも喩えるべき、このフランス映画の現在の(見かけとは裏腹の)凋落ぶりを憂い、その理由を分析して示すものです。著者によれば、現在のフランス映画の抱える課題は次の5点に集約されます。
1 テレビと映画のお見合い結婚の破綻
2 シネコンが後押しする数の論理
3 自己チュ~な作家主義の蔓延
4 真のプロデューサーの不在
5 批評性の消滅
「ムッシュ・シネマ」と「マドモアゼル・テレビ」との力関係の推移など、語り口も親しみやすく、論旨は明快ながら、話を単純化しすぎることはなく、映画制作の現場の苦労が具体的・多面的に理解できる構成になっています。

あえて一言で要約してしまえば「商業主義の蔓延」が、テレビ受けのする「プチ・ハリウッド映画」の量産を生む一方、作家性の強い作品は資金難に喘いでいる、ということになるでしょうか。それに加えてヌーヴェル・ヴァーグ時代の悪しき影響として、「自己表現」こそが映画だといわんばかりのナルシズムの肯定が若い監督の間に見られ、結果として、作品の描く世界の小ささや社会との乖離を生んでいるのではないか、という著者の指摘には、個人的に強く納得させられるものがありました。

もっとも、著者はフランス映画の現状を厳しく批判するだけではありません。近年、映画人自身が改革の声を上げるに至っている事情を取り上げ、フランス映画の復活に期待を寄せています。 著者はフランス在住12年。プロデューサーや映画監督といった関係者へのインタビューを交えた、大変丁寧で良心的な仕事である点も高く評価したい好著です。「今のフランス映画」に少しでも興味のある方なら、「なるほど、こういうことになっていたのか」と納得されることが多いでしょう。 今の日本では「フランス映画は儲からない」と映画館からも敬遠される状況のようですが、今一度、フランス映画が栄光を取り戻すことを願いつつ、この本を多くの方にお勧めしたいと思います。

寄稿者:えとるた

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