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ミルピエ ~パリ・オペラ座に挑んだ男~

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パリ・オペラ座バレエは言わずと知れた世界屈指のバレエ・カンパニーであり,この芸術のプロフェッショナル集団から繰り出される舞踊,音楽,舞台芸術は,劇場を訪れた,また映像を目にした者の心をとらえて離さない。

創設はルイ王朝時代の17世紀にさかのぼる。厳格さ,優雅さ… これみよがしでない,しかし威厳のあるフランスを体現するバレエはセルジュ・リファール,ルドルフ・ヌレエフ,そして前任のブリジット・ルフェーブルといった歴代の芸術監督によって継承された。しかしその舞台裏は「エトワール」(2002)に見られる残酷な階級社会であり,ダンサーたちはその閉ざされた社会に生活のすべてを捧げている。

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なぜパリ・オペラ座はミルピエを選んだのか

ミルピエはハリウッド映画「ブラック・スワン」で一躍有名になったボルドー生まれの振付家である。彼の活動の基盤はアメリカにあり,活躍の場は振付のみにとどまらない。芸術監督,ダンス映画作製,起業。彼がアメリカで培った数々のダンスに対するアプローチは,ダンスに関わる人々のプロフェッショナリズムの確立への情熱を感じさせる。パリ・オペラ座はミルピエに,プロフェッショナル集団としてのパリ・オペラ座の再編成を期待したにちがいない。

なぜミルピエはパリ・オペラ座を選んだのか

この映画はパリ・オペラ座バレエのファンの期待を“ある意味”裏切っている。見慣れたパリ・オペラ座が見られないからだ。2015年のシーズン初日への道のりを取り上げたこの映画のなかで,バレエ団を牽引する“エトワール”,つまりスターダンサーの姿はない。その代りに見られるのは格式高いガルニエ宮の中にある,現実であり未来である。ミルピエの目にパリ・オペラ座バレエはどのように映っていたのか。世界最高峰のバレエ団の芸術監督という名誉,イノベーションを創造するリーダー,優れた人材・資源を操るマネージャー… いずれにせよミルピエはパリ・オペラ座を選び,短期間で退任するに至った。しかし映像に見られる若いダンサーたちの流れるような動きは,ミルピエの変革への受容を感じさせる。

ミルピエの退任を多くの人は敗北と捉えるだろう。しかしこの映画からみるミルピエは,確実に何かを成し遂げたのだ。

□公式サイト:www.transformer.co.jp/m/millepied/

『ミルピエ ~パリ・オペラ座に挑んだ男~』
12月23日(金・祝)より、Bunkamuraル・シネマ他にて全国順次ロードショー
©FALABRACKS,OPERA NATIONAL DE PARIS,UPSIDE DISTRIBUTION,BLUEMIND,2016
出演:バンジャマン・ミルピエ(『ブラック・スワン』)
出演ダンサー:レオノール・ボラック、ユーゴ・マルシャン、ジェルマン・ルーヴェ、アクセル・イーボ、エレオノール・ゲリノー、レティツィア・ガローニ、マリオン・バルボー、オーレリー・デュポンほか
監督:ティエリー・デメジエール/アルバン・トゥルレー
音楽:ピエール・アヴィア
<公演参加クリエイター>
音楽:ニコ・マーリー(「拘束のドローイング」) 衣装:イリス・ヴァン・ヘルペン 指揮:マキシム・パスカル
<DATA>
2015年/フランス/114分/シネスコ/5.1ch/原題:Relève/日本語字幕:古田由紀子/配給:トランスフォーマー/後援:在日フランス大使館、アンスティチュ・フランセ日本
<お問い合わせ>
【配給】トランスフォーマー(配給:加藤、東浜/宣伝:吉田、東浜、國宗)TEL:03-5457-7767 FAX:03-5457-0080
【宣伝】ポイント・セット(長友、我妻)TEL:03-3549-5789 FAX:03-3549-5790 gazou@pointset.jp

投稿者:よしかわみきこ
profile:1981年富山県生まれ、クラシックバレエと人間学に日々没頭するリケジョ。

 

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