フランスからグローバリゼーションとオルタナティブを考える新しいフランス学

今月の1曲 “Serenade for Sarah” Michel Legland

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『愛と悲しみのボレロ』を劇場で見ました。小学生の頃ロードショー公開を見てから2度目の3時間。子供には見えていなかったあれこれもわかって、様々な思いが交差する事しきりでした。

フランスで300万人という歴史的な観客動員があったこの映画。ラスト、エッフェル塔を背にしたステージで『ボレロ』を踊る故ジョルジュ・ドンの神々しい姿も劇場に足を運ばせる理由の一つとなったのでしょうが、当時のフランスの大人達にとって、「総決算」を意識させる映画だったからではないかとも思うのです。

親の腕に抱かれて第2次世界大戦をくぐり抜け、平和を手にしたと思ったらアルジェとの戦争にも駆り出される。戦いの記憶を引きずったまま年を重ね、気がつけば命令される立場でなく人を動かす側になっていた—そんな世代の一人でユダヤ系フランス人であるクロード・ルルーシュ監督は、こう問いかけたかったのかもしれません。「時代の奔流に乗って私たちはここまで来た。そしてこれから、どこへ向かうのか?」

フランス、ロシア、アメリカ、ドイツとそれぞれの国で人が起こした醜悪の最たるものである戦争を生き延びた大人達とその子供、孫の世代が、その身に降り掛かった事を抱えながらも一同に会し、人が創り出した美しいもの、生とエロスがほとばしる舞台を共有する。言葉にしてしまうとなんともおそまつですが、時間をかけ積み重ねられた登場人物達の浮き沈みの物語に寄り添った果てに観る『ボレロ』は、胸に迫るものがありました。

舞台がはねて、三々五々淡々と散って行く人々を捉えたラストシーンの映像は重いものがあります。素晴らしい瞬間を体験しましたがこれで大団円、ということではないのです。時は止まることなく刻まれ、カレンダーはめくられて行く。次に何があるのかは誰もわからない。ただ、そこには希望のようなものも漂っていました。空撮が捉えた、列をなして会場を去るトラックの背にまたたく赤十字のマークが目に残っています。

今、フランスが必要としているのは新たな「総決算」ではないかと思うのです。様々なルーツを持つ人々が出会い、互いの「今」と「これまで」に起こったことを認め合い、静かにひとときを共有できる場がもたれれば、と。芸術が、鍵になるのかもしれません。

愛と哀しみのボレロ Blu-ray大人になって発見したものの一つは映画で音楽でした。ルルーシュ監督の相棒フランシス・レイと、重鎮ミシェル・ルグランが思いを込めた様々なフランス的なメロディが全編を彩り、語りかけます。特に気に入ったのは、グレン・ミラーをモデルとしたらしい、フランスへ従軍するアメリカのスイング・バンドのリーダー(ジェームズ・カーンが好演)が、第2次世界大戦開戦の最中に生まれた娘に捧げたこの曲。『ムーンライト・セレナーデ』をほんのり連想させますが、より洗練された、胸にせまるルグランらしい曲になっています。曲に付けられた「(赤ん坊の君が)目を開けば、空を、その青い色の意味を知るだろう」という歌詞につながる「希望」が、そこにはあります。

聴いてみたい方はこちらでどうぞ。(前半の曲がそう。後半の曲も映画で使われていたもの。こちらも実にフランス。)

youtu.be/WMr2yhrn6Nc

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GOYAAKOD=Get Off Your Ass And Knock On Doors.

大阪市内のオフィスで働く勤め人。アメリカの雑誌を読むのが趣味。 門外漢の気楽な立場から、フランスやフランス文化について見知った事、思うことなどをお届けします。