フランスからグローバリゼーションとオルタナティブを考える新しいフランス学

FRENCH BLOOM NET 年末企画(1) 2015年のベスト映画

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恒例の年末企画、第1弾は2015年のベスト映画です。ちなみに老舗仏映画雑誌『カイエ・デュ・シネマ』のベスト3は、1位はナン二・モレッティ『Mia madre (母よ!)』、2位はアピチャートポン・ウィーラセータクン『Rak ti Khon Kaen (Cemetery of Splendour)』、3位はフィリップ・ガレル『L’Ombre des femmes(女たちの影)』でした。1位は3月に日本公開が決定、2位はタイ映画で今年のカンヌの「ある視点」部門にも出品。『マッド・マックス 怒りのデス・ロード』が5位に、黒沢清『岸辺の旅』が10位に入っていました。また仏雑誌、Les Inrocks 掲載の Toutes les bandes annonces des films de 2015 en une vidéo (2015年のすべてのトレーラーを1本で bit.ly/1J0wQKC ) では、2015年に公開されたすべての映画のトレーラーをマッシュアップして見せてくれています。

不知火検校(FBNライター)

1. クリント・イーストウッド『アメリカン・スナイパー』
■すでに齢80を超えてもまだ作品を撮っているというだけでも驚くべきことなのに、常に最も困難な題材に挑み続ける映画監督イーストウッド。その不屈の精神にはただただ畏れ入るほかありません。この監督、どこまでやってくれるのでしょうか。
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2. アラン・レネ『愛して、飲んで、歌って』
■『去年マリエンバートで』、『ヒロシマ・モナムール』…。あれほど難解な作品を撮っていた監督が、これほど単純で明快な作品を最後に撮って世を去っていったという事実には驚かされます。演劇への愛、俳優への愛が随所に感じられる秀作です。
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3. 塚本晋也『野火』
■この夏、安保法制に対してただひとり純粋に「映画」で立ち向かおうとした作品と言ってよいのではないでしょうか。戦争の真実をここまで克明に描き出した作品はないと思います。大岡昇平の作品が見事に21世紀に蘇りました。
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4. 黒沢清『岸辺の旅』
■黒沢清が「愛」を描こうとしたというその事実だけで、この映画はかくも忘れ難い作品になりました。ひとりの映画作家の歩みをこれほど期待して見守るということも、いまでは貴重な体験になりつつあります。次の作品が早くも楽しみです。
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5. 是枝裕和『海街 diary』
■是枝監督はとにかく役者を見る目があると思います。今回もすべての役者(とりわけ4人の女優、綾瀬はるか、長澤まさみ、夏帆、広瀬すず)がみな見事に役にはまり、これがフィクションであるということを忘れさせるほどです。傑作です。
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アメリカン・スナイパー [DVD]愛して飲んで歌って [Blu-ray]海街diary DVDスタンダード・エディション

MANCHOT AUBERGINE(FBNライター)

1. アクトレス ~女たちの舞台~ / オリヴィエ・アサイヤス
■いつまでも若手のイメージの抜けないアサイヤスも、今年還暦。今回の作品はジュリエット・ビノシュ主演の女優もの。脚本も演出も超一流。スイス南東部の神秘的な自然美も味方につけ、堂々の巨匠仕事。俳優陣の演技も素晴らしい。ビノシュが苦手な方も、見ないと絶対に損です。
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2. 黒衣の刺客 / 侯孝賢
■唐時代の中国を舞台にしたホウ・シャオシェンのコスチュームプレイ。説明を極力排した無愛想な物語展開は観る者にかなりの緊張を強いるが、映像の美しさはただごとではない。紗を通した室内の人物描写、騎行の一団を横長にとらえた屋外ショットなどはため息の出るほどの素晴らしさ。
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3. 若き詩人 / ダミアン・マニヴェル
■若い監督の長編第1作。詩の霊感を求め夏の南仏セートをあてもなくさまよう若者の物語。光と空気と感情の初々しさ。海、墓地、町並みをとらえる構図の妙。配給元の宣伝文句ではトリュフォーやジャック・タチが引き合いに出されているが、むしろタネールの『白い町で』やロメールの『獅子座』なんかを思い出した。今後が楽しみな人です。
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■今年は他に、ギヨーム・ブラック『やさしい人』、ゴダール『さらば、愛の言葉よ』、ブレッソン『やさしい女』などが印象に残った。

黒衣の刺客 [DVD]インサイド・ルーウィン・デイヴィス 名もなき男の歌 [DVD]さらば、愛の言葉よ [DVD]

 藤島順二(元町映画館スタッフ)

1.『インサイド・ルーウィン・デイヴィス』
■コーエン兄弟の作品は、どコメディよりシリアスの中にある間抜けさが好きです。本作はええ案配で配合されており、しかもお得意の(マニア向け)音楽モンと来たら、どなたも適いません。大絶賛の嵐です。個人的にはキャリー・マリガンの超下品な罵倒に萌えー。猫ちゃんに「パルムキャット」あげて。
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2.『サイの季節』
■バフマン・ゴバディ監督作品は『酔っぱらった馬の時間』から全作ハズレ無しです。しかし今作はスコセッシが宣伝番長(?)ということで、ちょっとヤバい匂いぷんぷんでした。が、観てみるとあまりの素晴らしさに、要らぬ心配でした。そればかりか新境地に達した感まであり、巨匠でメジャーになってもゴバディは信用できそうです。
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3.『わたしの名前は…』
■あのアニエスベーが監督した作品です。さすがファッションデザイナーだけあって、カメラワークや編集にいろいろと凝っていて、ちょっとおちゃめで微笑ましいです。個人的にはTVパーソナリティーズの「Silly Girl」の選曲が、ソニック・ユースやメカスやネグリよりも嬉しい。色のセンスが良いので暗い映画もギャスパー・ノエとかと比べると可愛く仕上がっております。こう良いと2作目も期待しますね。て、あるのか?
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元町映画館:神戸・元町商店街4丁目に2010年8月21日に産声を上げ、早くも6年目に突入!HP, Twitter(@moto_ei), facebookで情報を発信してます!火曜日レディースデイ&水曜日メンズデーやってます♫  motoei.com

 サツキ(Small Circle of Friends)

1. 『ブラジル・バン・バン・バン~ジャイルス・ピーターソンとパーフェクトビートを探しもとめて~』
■世界的にもジャイルスが“今のブラジルを象徴する音楽作品” を制作する過程を映像にしたドキュメンタリー映画。ブラジルの音に特化した映画にもかかわらず、ブラジル音楽だけではないジャイルスの審美眼とまさに今でも続く世界中に溢れる音への探求心が、オーガニックと言う衣を着たブラジル文化の魂から湧き出す音を自ら紡ぎ、CDとしてフィジカル化する過程を描く。BRASILのまさに今の音楽、世界の有り様…。生活、不安、人間の思う今も昔から何も変わらない刹那も込め、音楽は此処其処に溢れているのだと心から感じた作品でした。ソンゼイラ!!!!
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2.『わたしの名前は・・・』 – アニエス・トゥルブレ (agnès b.)
■「カルネ」や「Zoo」を思い起こすような質感に、ざらっとした気持ちになるにもかかわらず、少女の可憐さと美しい赤そしてもちろん衣装も印象的で、「昔から見てきたフランス映画って不条理に終わってたよね?」な喪失感も、予定調和で心に残し数日…。すっかり忘れていたのに、なんだかふと思い出す。初監督という刷り込みが、彼女の映像テクニックへのトライも知名度という「ヴィジビリティ」があることも手伝い、斬新に挑戦した結果だと思うから、アレはアレなんだと思い起こす。と言ってもアニエスb。「ボーダー割り」なんかがあって、館内は「Basque Border t一色」なんてコトそうそうある光景でもなく、なんとまあ「閉じ感」(もちろん良い意味で)満載な映画ではあります。そういえば「雑誌オリーブは元来閉じた少女雑誌だったよね」。閉じ感って、フランス的なんだ。(サツキ調べ)
youtu.be/zqcQJWAqnNA
3.『セバスチャン・サルガド 地球へのラブレター』 – ビム・ベンダース 、セバスチャン・サルガド
■報道写真家、セバスチャン・サルガドのドキュメンタリー。息子のジュリアーノも撮影するリアルさが、写真家とその写真を映像にし音を加えるという言わば、観る側をも誘導し兼ねない危うさを、真っ向から演出と構成の素晴らしさで魅せるベンダースの才を改めて感じた映画でした。想いなど、言葉などすり抜ける世界を体感できる映像や語る言葉は圧巻。ただし、ソレを見たのはサルガド。この映画を観た後、自分がどれだけのイマジネーションでもって世界を地球を見れるか?想いを馳せれるかを、試されていると…。つくづく感じます。
youtu.be/WmedMl4hNd4
■どこでも、2015ベストは読まれる、見られるだろうとも思い。なんだか心に残った音楽とファッション、文化に特化した映画を選びました。その「なんだか」がキモ。
Small Circle of Friends:ムトウサツキとアズマリキの二人組。1993年、福岡にてスタート。1998年より拠点を東京に移し、Small Circle of Friendsとして10枚のアルバムをリリース。2014年10月08日、ムジカノッサ・グリプス(選曲・監修:中村智昭from Bar Music)より、12インチ・アナログ『Lovely Day EP』をリリース。2015年7月1日初のBEATSアルバム「STUDIO75 Best of LL」をリリース。現在、2016年リリースのアルバムに向けてレコーディング中。
www.scof75.com
www.75clothes.com

exquise(FBNライター)

彼は秘密の女ともだち [DVD]アデル、ブルーは熱い色 [DVD]罪の手ざわり [DVD]

1. ジョナサン・グレイザー『アンダー・ザ・スキン 種の捕食』
スカーレット・ヨハンソンが主演のSF映画でヌードも披露、ということで話題になったが、それはこの作品のほんの一部の情報でしかない。SFともスリラーとも人間ドラマとも呼べないような、奇妙で、おかしくて、また切なくもある映画で、昨年のカイエのベスト映画第3位というのもうなずける。「補食」シーンの映像と音楽は、まるで能の一節を観ているかのような気分にさせられます。
youtu.be/Qfc2Uu5bEeU
2. アレハンドロ・ゴンザレス・イニャリトゥ『バードマン あるいは無知がもたらす予期せぬ奇跡』
入念に執筆された脚本と高度な撮影技術、そして秀逸なキャストが融合して華々しく成功した快作で、最初から最後までダレることないテンポの良さが最高。音楽もすばらしい。監督、このところノリに乗ってますな。
youtu.be/_XOBBmyYNJA
3. ジャ・ジャンクー『罪の手ざわり 』
■中国で実際に起きた4つの事件を、スタイリッシュで冷徹な映像で描いた作品。この監督は長編デビュー作から好きでその後の作品も観ているけれど、一作ごとにスケールと力強さが増していっている。今回は武侠映画からヒントを得たそうで、アクションシーンにはひとつの美学が感じられ、娯楽映画としても楽しめる作品でした。
youtu.be/MEvTuCuNQ3k
■今年も本数はたくさん観られなかったけれど、結構「当たり」の作品が多かった。ベストで挙げたほかにも『アデル、ブルーは熱い色』、『彼は秘密の女ともだち』、『ウォールフラワー』、『めぐり逢わせのお弁当』などが記憶に残る。『マッド・マックス 怒りのデス・ロード』もすごかったな〜

GOYAAKOD(FBNライター)

『ヴィヴィアン・マイヤーを探して』
■今年も映画はテレビの前に座ってみるものでした。が、映画館まで足を運んだ数少ない2015年の公開作品のうち、機会があればぜひどうぞとお薦めしたいのがこの1本。ガレージセール的なオークションで偶然に手に入れた大量の古い写真のフィルム。それはナニー(乳母)として家々を渡り歩きつつ、首から下げたローライフレックスを唯一の友として我が道をつっぱしった無名の写真家の、アメイジングな作品だった…写真の持ち主が自らこの謎の人物、ヴィヴィアン・マイヤーに迫ったアメリカ製ドキュメンタリー映画です。映画の中でたくさん登場するマイヤーの作品にとにかくうなりました。プロの写真家の代表作クラスの写真がばんばん登場します。多彩でオリジナルなアイデアに溢れ、冒険を恐れない。結果、残された作品群は「独りアメリカ現代写真史」と呼びたくなるほどの充実ぶりです。そしてどの一枚にも、じっと眺めたくなる独特な存在感があります。この写真を見るためだけでも映画を見る価値がある、と言い切ってしまいましょう。 また、これほどの写真を生涯誰にも見せる事なく亡くなったヴィヴィアン・マイヤー本人も、作品におとらず興味深い。関わりのあった人々の証言から浮かび上がるのは、逸話をつなぐだけで映画が撮れそうなほどの変人。私だけの美を追うあまり自ら築いた頑さの穴の中へと落ち込んでゆくしかなかった彼女の「情熱」に、言葉を失います―作品の放つ輝きの強さを思うとなおさらに。
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セドリック・クラピッシュ/グザヴィエ青春三部作DVD-BOXボヴァリー夫人とパン屋 [DVD]憎しみ [DVD]

cyberbloom(FBN管理人)

1. セドリック・クラピッシュ『ニューヨークの巴里夫』
■『ニューヨークの巴里夫』は神戸では今年1月公開だったので悪しからず。クラピッシュの青春3部作の完結編だが、「同性婚」「複合家族」「精子提供」など、時代の先端をいく家族形態を盛り込んだ作品。原題の Casse-tête chinois は「はめ絵遊び」のこと。最初から家族の理想のモデルがあるのではなく、そうなってしまった現実を受け入れ、与えられた条件の中でそれぞれが最適なピースを見つけていくことが幸せに至る道なのだろう。近代の黎明期の理想的な人間像がレミゼのジャン・ヴァルジャンに体現されているとすれば、グローバル化した時代のリアルな人間像はグザヴィエのような優柔不断でヘナチョコなお兄さんが体現せざるをえないのだろう。『ふらんす』2月号の対談記事でも扱ったので読んでください。
youtu.be/6A3Ldyqf45g
2. アラン・テイラー『ターミネーター:新起動/ジェニシス』
■『ターミネーター』の5作目は本シリーズにハマっている子供にせがまれて一緒に見に行った。このおかげで英語にも興味を持っているのでまあいいか。恥ずかしながら3D初体験。今やサイバーダイン社は実際に存在するし(医療&福祉用ロボットを開発する日本のベンチャー企業)、AIやスマートテクノロジーの実用化も進みつつある。それにしても何回も歴史の書き換えを許してしまったら、際限のない相対化に陥ってしまう。それにジョン・コナーがいきなり悪者になったらファンも失望しちゃうよね。そこらへんが失敗では。
youtu.be/-D-iioibn40
3. マチュー・カソヴィッツ『憎しみ』
■授業でこの映画を扱った直後にパリで同時多発テロが起こった。これは1995年の作品。それから10年後の2005年にパリで暴動が起こり、さらに10年後の2015年パリで2度のテロが起こった。『憎しみ』の主人公たちや、サルコジにゴロツキ呼ばわりされた2005年の若者たちは漠とした憎悪を形にできなかったが、今やそれは IS によって先鋭化し、明確なターゲットと手段を得てしまった。またパリで大規模テロを計画する若いフランス人ジハーディスト集団に独立系ジャーナリストが潜入するというストーリーの映画『Made in France』(つまりフランス製のテロリスト予告編⇒ youtu.be/TiDhVoYPFTM )の公開が11月13日のテロによって延期になった。現実が映画を超えてしまった。
youtu.be/yk77VrkxL88
■今年特にTWITTERのTLを賑わせていたのは、『私の名前は…』『ボヴァリー夫人とパン屋』『EDEN』あたりだろうか。『私の名前は…』はアニエスベーが初めて映画を撮ったということで、未だに○○のひとつ憶えのようにアニエスベーの服を買い続けている私の世代をざわつかせた。4月にある文学サロンのパーティに出たらフランス文学の大御所の先生たちがフランス文学が忘れ去られつつあると嘆いておられたが、『ボヴァリー夫人とパン屋』のような形でネタにされていくのは面白い。『EDEN』はテクノチューンにのって疾走するフレンチテクノの半伝記的映画。Daft Punk も登場する。フランスがこのシーンを先導して久しいが、このような映画が撮られるほどの年月を蓄積した証しなのだろう。

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cyberbloom

当サイト の管理人。大学でフランス語を教えています。
FRENCH BLOOM NET を始めたのは2004年。映画、音楽、教育、生活、etc・・・ 様々なジャンルでフランス情報を発信しています。

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