フランスからグローバリゼーションとオルタナティブを考える新しいフランス学

今月の一曲 “India Song” Jeanne Moreau 

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日差しがおだやかになり、秋へと一気に舵を切る頃に、いつも聞きたくなるのがマルグリット・デュラスの映画『インディア・ソング』のテーマ。映画を見てしまったものの中に忘れ難い印象を残してくれますが(耳にするたびにデルフィーヌ・セイリグの白い背中と紅いドレスが瞼に浮かびます)、最近デュラス本人が詞を付けた歌バージョンの存在を知りました。歌っているのはかのジャンヌ・モロー。低い、けだるい声と女優さんらしい歌へのアプローチのおかげで、同じメロディが違う表情を見せています。

聞いてみたい方はこちらをどうぞ。アレンジはこの曲を作曲したカルロス・ダレッシオが手がけています。
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せっかく話にでたので、女優デルフィーヌ・セイリグについて少し。以前も取り上げましたが、ほんとうに美しい人でした。わかりやすい映画にはあまり出なかったこと、生活感のあるリアルな女性よりおとぎ話の妖精から現代を生きる女吸血鬼といったあまり現実感のない役を演じてきたこともあってか、カトリーヌ・ドヌーヴのように世間でアイコンとしてもてはやされることはありませんでしたが、スクリーンの中の彼女を見れば見ほれてしまうでしょう。(勝手な推測にすぎませんが、萩尾望都の作品に登場する「ヨーロッパの美女」の原型は、デルフィーヌ・セイリグかと思います。)

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上品でエレガント、知性を感じさせるたたずまい。その一方でどこか謎めいていて、自然な官能の空気をまとっていました。ドン・シーゲルやフレッド・ジンネマンといった商業映画のマエストロが、脇役ながら鮮烈な印象を残す危うい美女の役にキャスティングしたのもうなずけます。

映画『インディア・ソング』は、デルフィーヌ・セイリグの存在感を最大限に活かした作品と言えます。フランス大使館の豪奢な室内をただよい、男たちと戯れ踊る美女というのが彼女の与えられた役。明確な筋立ても芝居をする余地もなく俳優らしさを封じられた上、花瓶に生けられた花やランプ、鏡といった部屋の中の「もの」と同じようにカメラの視線にさらされながらも、そのたたずまいによって難解な実験作を静謐ながら濃厚な香りの立ちこめる作品へと変貌させてしまいました。

数年前に作られたコレットの『シェリ』の映画版で、ミシェル・ファイファーがレアを演じてましたが、個人的には違和感があります。元高級娼婦という感じがしない。中年の頃のデルフィーヌ・セイリグがレアだったならどうだろう、などと妄想してしまいます。濃いメイクアップも、大きな宝石も、優雅な化粧着もなんなく味方につけて、複雑で魅力的な“ヌヌーン”を見せてくれたのではないでしょうか。対するシェリには、カール・ラガーフェルドの側にはべっていた頃のお若いバティスト・ジャビコーニ君が生意気でいいかも(ラガーフェルド撮影のシャネルの広告写真でも、完熟ジェリー・ホールを相手にシェリを演じていましたっけ)。さていかがでしょう?

デルフィーヌ・セイリグはルイス・ブニュエル監督の幾つかの作品にも出演しています。これまたフランスを代表する名花、ステファーヌ・オードランと共演した『ブルジョアジーの秘かな愉しみ』などもおすすめです。

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GOYAAKOD=Get Off Your Ass And Knock On Doors.

大阪市内のオフィスで働く勤め人。アメリカの雑誌を読むのが趣味。 門外漢の気楽な立場から、フランスやフランス文化について見知った事、思うことなどをお届けします。