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お見逃しなく!! フランス製サスペンス・スリラーの秀作 ”Tell No One”

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インターネットのおかげで、世界各地の映画祭の情報が詳細にわかるようになりましたが、悩ましいのが「ぜひ見たい!」と思った映画が入ってこないこと。著名な国際映画祭で評判になっても、映画館での上映はおろか、DVD化もない。トレイラーとレビューで期待はいやますばかりなのに・・・どうして?

そんな映画ファンのイライラに応えるスペシャルな上映会が開催されます(大阪では9月10日からテアトル梅田で)。カンヌ・ベルリン・ヴェネツィア国際映画祭で受賞した選りすぐりの作品がようやく日の目を見ることに。マイク・リーの『Happy-Go -Lucky』など、とっくに上映されてなアカンやん的なメジャーな作品もセレクトされていて、待ち遠しいったらないのですが。  ぜひとも見て頂きたいのが、おまけで上映されるフランス製のサスペンス・スリラー、”Tell No One”(邦題は『唇を閉ざせ』。ちょっと違うのでは・・・)。海外で偶然見る機会があったのですが、とても面白かったんです。

暑い夏の夜、思い出の湖で泳ぎ戯れる夫婦。まどろむ夫を目覚めさせたのは、対岸で暴漢に教われている妻の悲鳴。助けようと立ち上がったところ頭を強打され、意識を失う。目覚めた彼を待っていたのは妻の死という非情な現実だった。それから8年。愛する妻を救えなかったことにとらわれ、医師として仕事だけに打ち込んできた彼のもとに、謎のメールが届く。それは死んだはずの妻の生存をほのめかすものだった・・・さわりの部分をまとめるとこんな感じ。

謎が謎を呼び思いがけないところへ連れていかれるストーリーのおもしろさに加え、サスペンスとしても一級の出来映え。なで肩で、“フランス流に洗練されたダスティン・ホフマン”を思わせる主演俳優、フランソワ・クリューゼが体を張って、ここまでさせるの!というぐらいの運動量をこなしています。大柄でないことを逆手に取り街を走り回るシーンは、見ている方も横っ腹が痛くなりそうなほど。悪役も、ハリウッド映画ではお目にかからないタイプが登場。相手を制圧する方法も意表をついていて、実にコワい(どうコワいかはぜひご自身の目で見て頂きたい。ああいう目には合いたくないもの)。

スリラー映画が謎解きと悪との戦いに終始して終わる傾向にある中、この映画は「愛」についてもきちんと語ろうとします。奪われた妻を求めて嵐の中に身を投じる男の「愛」。妻の親の、娘に対する「愛」。そして闇に潜むもう一つの「愛」。複雑に絡み合った「愛」が映画を深く、官能的にしています。この試みが成功したのは、フランス映画だからこそ実現できた個性あるキャストのおかげかもしれません。とりわけ女達の魅力的なこと!主人公の妻を演じるマリー=ジョセ・クローズのシンプルなサマードレス姿も印象的ですが、クリスティン・スコット・トーマスが最近の傾向とは違う、ちょっと弾けた女性を演じているのもおもしろい。

音楽の使い方にもご注目を。上質のヨーロッパ映画に共通して言えることですが、アメリカのポップスの取り込み方は、ハリウッド映画より数段すぐれているのではないでしょうか。歌詞や曲のイメージに捕われ過ぎないで、音そのもののセンシュアルな面も計算に入れて使っているように思います。この作品の通奏低音となっているロマンティックな感情を支えているのは、アメリカ製の音楽です。

また、雑誌や本でマスコミがアナウンスする「お洒落フランス」の枠外にある、リアルなフランスがかいま見れるのも興味深い。フランス人もU2が好きだし、インターネットカフェに行くし、みんながみんなこじゃれた格好をしているわけではないんです。(このへんの「普通」さが、日本での公開が見送られ続けた理由のひとつかも。)

レコ屋の店主の殺し文句「あるうち買うときヤ!」ではありませんが、「劇場でかかってるうちに見ときヤ!」と今回ばかりは声を大にしていいたい。これはフランス映画として作られたからこそ上手くいった、大人のための映画です。(ベン・アフレックがメガホンを取ってハリウッドでリメイクするとの噂も聞きますが)。大満足で劇場を出られること請け合い。期間限定です。くれぐれもお見逃しなく。 トレイラーはこちらで。海外向けの方を選んでみました。見に行かれるなら、こちらをチェックせずに行かれる方がずっとおもしろいかも。

 

上映会のウェブサイトはこちらでどうぞ。東京でも公開中。他の地域でも順次公開される予定のようです。 sandaifestival.jp/

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GOYAAKOD=Get Off Your Ass And Knock On Doors.

大阪市内のオフィスで働く勤め人。アメリカの雑誌を読むのが趣味。 門外漢の気楽な立場から、フランスやフランス文化について見知った事、思うことなどをお届けします。