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トリュフォー没後30年特集③―トリュフォー映画・独断的ベスト10(その1)―

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トリュフォー映画ほど人によって好みが変わるものも珍しいのではないだろうか。『恋のエチュード』を最高という人もいれば、「あの主人公の優柔不断さだけは絶対に許せない」と憤慨する人がいるという具合に、映画ファンの中でも毀誉褒貶の幅が激しいのがトリュフォーの映画である。そんな彼の映画を今回は執筆者の独断と偏見で順位付けをしてみよう。何と言っても監督作は25本あるので、ベスト10を決めるには半分以上の作品を落さなければならないが、これはなかなか厳しい。さて、果たしてどうなるだろう。まずは10位から6位を発表してみよう。

10位:『大人は判ってくれない』(1958)
トリュフォーの長編デビュー第一作であり、「ドワネルもの」の第一作であり、また、J=P・レオーが映画界に入った記念碑的作品なので、外すわけにはいかないだろう。レオーの演技はいま見てもすべての場面においてみずみずしく、こちらが気恥ずかしくなるほどだ。偶々撮影現場の近くの劇場に出演中だったジャンヌ・モローと友人ジャン=クロード・ブリアリに頼み込み、愛犬を探すカップルの役で出てもらった場面も興味深い。リヴェットの短編『王手飛車取り』(1956)と同様に、「使える友人は誰であれ使ってしまう」というヌーヴェルヴァーグの精神が見事に表われたエピソードである。

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9位:『突然炎のごとく』(1961)
本当はこんな有名な作品をベスト10には入れたくないのだが、オスカー・ウェルナーとジャンヌ・モローが戯れるスチール写真を見返すと、やはり無視する訳にも行くまい。実は私は初めてこの映画を観たとき、「はあ?」と思ってしまうほど、この世界の中に没入することが出来なかった。しかし、ポール・マザースキーがこの映画に感化されて作った『ウィリーとフィル』(1980)を観たとき、そのあまりの悲惨さに、この映画の偉大さを再認識したのである。「二人の男と一人の女の恋と友情」なんてまともな映画になるわけがない。だからマザースキーは決して才能がなかった訳ではない。ただ、トリュフォーはこのテーマを奇跡的な美しさで映画に仕上げたのである。その意味で、これはトリュフォーにしか撮れないタイプの映画なのかもしれない。

8位:『日曜日が待ち遠しい!』(1983)
ファニー・アルダンが主演する映画は『隣の女』とこれの2作だが、どちらかを選べと言われたら、やはり『日曜日~』を選ぶことになるだろう。何と言ってもトリュフォーの遺作であるし、ジャン=ルイ・トランティニャンが相変わらず渋い。それに、最初から最後まで実に軽快なテンポで、観客を飽きさせることはない。晩年に低迷に陥ったヒッチコックが遺作『ファミリー・プロット』(1976)で軽快なサスペンスを復活させて鮮やかに散っていったように、トリュフォーは遺作でヒッチコキアンたる面目を見事に果たしたと言える。エンドロールへとつながる最後の場面で子供たちが戯れる姿はまさにトリュフォーならではの世界。

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7位:『アデルの恋の物語』(1975)
主演はイザベル・アジャーニ。率直に申し上げて、アジャーニが出た唯一のまともな映画ではないか。とまで言っては言い過ぎかもしれないが、彼女の映画の中で別格の位置にある事だけは確かである。ネストール・アルメンドロスのカメラ、モーリス・ジョーベールの音楽。脇役の演技陣に至るまで完璧な水準に到達した作品と言えるだろう。狂おしく恋していた相手を見分けられなくなるほどにまで錯乱するアデル=アジャーニの姿を捉えてこの映画は終わる。トリュフォーはこの終わりをハッピーエンドと呼んでいた。「これで彼女はもう苦しまなくて済むから」。

6位:『逃げ去る恋』(1979)
  「ドワネルもの」から『大人は判ってくれない』以外にもう一本選ぶとしたら、シリーズをしめくくるこの作品になるのではないか。もちろん、『夜霧の恋人たち』(1968)も素晴らしいが、これはD・セイリグの蠱惑的な美しさによるところが大きい。他方、『逃げ去る恋』は過去の名場面を見事な編集によってつなぎ合わせ、ドワネルという人物の魅力を余すところなく伝えようとし、またそれに成功しているという点で、『夜霧~』をわずかの差で上回るように感じる。トリュフォー嫌いは『逃げ去る恋』から観るのも良いのではないか。この軽妙洒脱なテンポには誰もが驚かされるであろう。

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普段はフランス詩と演劇を研究しているが、実は日本映画とアメリカ映画をこよなく愛する関東生まれの神戸人。
現在、みちのくで修行の旅を続行中