フランスからグローバリゼーションとオルタナティブを考える新しいフランス学

FRENCH BLOOM NET 年末企画(2) 2013年のベスト映画

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恒例の年末企画、第2弾は2013年のベスト映画です。FBNのライター陣の他に、雑誌『ふらんす』編集長 Mlle Amie さん、ヒップホップデュオの Small Circle of Friends さん、高速増殖炉のもんじゅ君にも参加していただきました。ちなみに老舗仏映画雑誌『カイエ・デュ・シネマ』のベスト10は、1.「Stranger by the Lake(英題)」(アラン・ギロディ監督)2.「スプリング・ブレイカーズ」(ハーモニー・コリン監督)3.「アデル、ブルーは熱い色」(アブデラティフ・ケシシュ監督)4.「ゼロ・グラビティ」(アルフォンソ・キュアロン監督)5.「罪の手ざわり」(ジャ・ジャンクー監督)6.「リンカーン」(スティーブン・スピルバーグ監督)7.「La jalousie(原題)」(フィリップ・ガレル監督)8.「Nobody’s Daughter Haewon(英題)」(ホン・サンス監督)9.「You and the Night(英題)」(ヤン・ゴンザレス監督)10.「La bataille de Solférino(原題)」(ジュスティーヌ・トリエ監督)でした(映画.comさんより)。また仏雑誌、Les Inrocks が ’La vidéo qui nous rappelle pourquoi on a aimé le cinéma en 2013’ と題して、2013年の映画のワンシーンを高速でつなげて見せてくれています。

Mlle Amie(白水社『ふらんす』編集長)

グザヴィエ・ドラン監督『マイ・マザー』J’ai tué ma mère (2009)
■若く才能あふれるドラン19歳の監督デビュー作。どこを切り取ってもそのままイメージビデオとして使えそうなくらいに作り込まれたお洒落な映像と音楽が印象的。むき出しの思春期を発散しまくりの(監督ドラン演じる)主人公に、胸の奥をひっかかれた。あう。
フランソワ・オゾン監督『17歳』Jeune et Jolie (2013)- 2014日本公開
■登場人物の女性たちの台詞のはしばしに表れる「女の深層心理」の拾い上げ具合が絶妙。さすがはオゾン姐さんね……と唸ってしまった。成熟した女性になる手前の中性的、植物的、蝋人形的な存在感をたたえたヒロインを、マリーヌ・ヴァクトが見事に体現。youtu.be/D2ozrlLuyRA
ミシェル・ゴンドリー監督『ムード・インディゴ〜うたかたの日々〜』L’Écume des jours
■ゴンドリー監督らしい手触りのある「特撮」によって、ボリス・ヴィアンの現代のおとぎ話のような世界観を忠実に映像化。キラキラした絵空事の世界をゆるやかに漂っているうちに、気づけばなまなましいほどの「生きることの問題」の渦中に押し流されている感じがたまらない。原作を読む前に観ても、後に観てもいい。

MANCHOT AUBERGINE(FBNライター)

1. 『白夜』ロベール・ブレッソン
2. 『ポルトガル、ここに誕生す〜ギマランイス歴史地区』アキ・カウリスマキ / ビクトル・エリセ / ペドロ・コスタ / マノエル・ド・オリベイラ
3. 『あの夏の子供たち』ミア・ハンセン=ラヴ
■1.は長年見る機会に恵まれなかった幻の映画。去年の年末に映画館で見た。あまりに良かったのですぐにもう一度見に出かけた。一年たったいまも、いくつかのシーンをよく思い出す。夜の街角に生物的なぬめりをたたえてたたずむシトロエンDS。橋の下の暗闇から突如姿を現す黄金色に輝くバトムーシュ….。心の奥底にほんのりと明かりがともるような気のする、暖色系のブレッソン。
■2.は4人の監督によるオムニバス。このラインナップを見て即座に映画館に駆けつけなかった映画ファンを私は信用しない。最後のオリヴェイラ編だけは軽く流した感じがあるが、それ以外の3人の作品は短~中編とはいえども密度の濃い力作揃い。エリセ20年ぶりの作品(短編を除く)という意味でも大いに価値のある映画。youtu.be/7_69yUhnkZw
■3.は今年公開の映画ではない。私が今年勝手に「発見」しただけ。TV5で放映していたのを見て、この若い女性監督のみずみずしい感受性と落ち着いた演出(とりわけ子供の扱い方)に大いに驚かされた(それまでは名前も知らなかった)。他の長編2作もDVDを購入して鑑賞。いずれも傑作だった。この人は絶対のおすすめです。youtu.be/JzlQOsnavE4
■追記・番外:このベスト原稿を書いたあと見た映画が今年のダントツのベストだった。ギヨーム・ブラックという若い監督の『女っ気なし』。明らかにエリック・ロメール――とりわけ『海辺のポーリーヌ』――を意識した作風だが、ロメールを凌駕している面もあると思わせるほどの傑作だった。徹底的にさえない男の役を演技とは思えない演技で好演した主演のヴァンサン・マケーニュも素晴らしい逸材。youtu.be/OqRErfD-U9E

exquise(FBNライター)

『ホーリー・モーターズ』レオス・カラックス
■久々のカラックスの新作は、「なんじゃコレは!?」というハジけにハジけた映画、というのが第一印象だったけれど、よくよく考えてみれば、偉大なる映画界の巨匠たちへのオマージュが散りばめられた、映画のための映画だった。もはや監督の分身であるドニ・ラヴァンなくしては成り立たない作品。youtu.be/NWu9WjEcdbk
『ムード・インディゴ うたかたの日々』ミシェル・ゴンドリー
■映画から観た人は、やり過ぎと思われるかもしれないが、原作を読めばかなり忠実にボリス・ヴィアンの世界が映像化されていることがわかる。それだけこの作品とゴンドリーのセンスがぴったりだったということだ。主演のロマン・デュリス、オドレイ・トトゥをはじめ、ニコラ役のオマール・シーなどキャストも皆すばらしい。
『白夜』ロベール・ブレッソン
■1971年の作品だが、 ニュープリントで再公開されたものを今年の最初にスクリーンで観た。『ムード・インディゴ』がヴィアンの世界を忠実に再現しているとすれば、こちらはドストエフスキーの饒舌な作品を、当時のパリを舞台に置き換えて、見事にブレッソン独自の寡黙な作品へと変貌させたものである。しかし70年代パリの風俗を含め、何気ないショットに至るまでなぜこうもカッコよくキマるのか!マルト役のイザベル・ヴェンガルテンの硬質的な美しさも際立つ。www.byakuya2012.com/#id77

もんじゅ君(高速増殖炉)

風立ちぬ(宮崎駿監督)
■薄々自覚しながらも戦争になんとなく協力していくリベラル、というのがいま観るべきテーマな気がしました。戦争に向かう時期にかぎらず、社会の要請と自分のやりたいこととの重なりを見つけて自己実現するほかないのだ、ということを考えさせられる作品。ナウシカ、ラピュタ、魔女の宅急便、もののけ姫……、これまでの名作はみんな思春期の女の子にがんばらせすぎだったので、男の人が主人公のファンタジーなところもとてもよかったです。
めめめのくらげ(村上隆監督)
■興行成績はあまりふるわなかったようですが、キャラクターの造形のうつくしさはなんといってもすごかったです。村上隆さんとおなじ怪獣映画世代の方には、より迫るものがあるのでは。youtu.be/ySHJaR7cemo
バンビ(ディズニー映画・1942年)
■色のうつくしさが圧倒的。そのころの映画音楽の例にもれずオーケストラだけで風も雨も雷も表現しているのですが、ひとつひとつの音がきれい。当時の圧倒的な豊かさの差を見せつけられる思い。それを見せつけることも目的のひとつだったのでしょう。古いディズニー映画を観ると、日本のアニメやマンガもまた違って見えてきます。今年はピノキオ(1940年)、ダンボ(1941年)、バンビなどむかしのディズニーを観返したのですが、ただ「人形かわいい」「動物かわいい」ではなくて「人間に虐げられている」ところがポイントだと思います。暗さもしっかりある。youtu.be/nLvX-erABqY PROFILE:福井県にすむ高速増殖炉。2011年の原発事故をきっかけに、みずからの危険性にめざめて情報発信を始める。わかりやすいニュース解説で人気に火がつき、ツイッターのフォロワーは10万人を超す。著書『おしえて! もんじゅ君』、代表曲『もんじゅ君音頭』など、原子炉でありながら文筆やイラストから楽曲までと、マルチに活躍中。

不知火検校(FBNライター)

1.『風立ちぬ』(宮崎駿監督)
■これは今年2度観に行った唯一の映画です。この映画については既にFBNでも報告をしましたが、とても1度観ただけでは語り尽くせない作品だと感じました。様々な場面にこれまでの宮崎作品のイメージが凝縮されるように表現されています。同じく2度観に行った配偶者は「この映画の中では最初から最後まで風が吹いている」と語っていましたが、そんなことを含めて、観る度に新しい発見がある映画だと思います。引退が本当に惜しまれる作家です。⇒FBN記事:真の「作家」の去り方―宮崎駿『風立ちぬ』を観て
2.『最後のマイ・ウェイ』(フローラン=エミリオ・シリ監督)

■この映画は映画史的に重要なものでは全くないと思いますが、クロード・フランソワという稀有な歌手をフィルム上に甦らせた貴重な試みとして記憶されるに値するものだと思います。主演俳優ジェレミー・レニエは完全にフランソワに自己同一化したかに見えるほどで、凄まじい演技だったと思います。加えて、フランス・ギャルやジョニー・アリディなどの全盛期を見事に再現していて、フレンチ・ポップス黄金時代の華やかさを肌で感じられる映画だと思いました。
3.『三人のアンヌ』(ホン・サンス監督)
■この映画を観た人はそのご都合主義的な映画作りの姿勢に呆れる一方で、その限りない自由な姿勢に快哉を叫んだのではないでしょうか。役者は同じで、似て非なる物語が3度繰り返されるというストーリー。こういう映画に主演するイザベル・ユペールは、さすがに現代フランスを代表する女優だけのことはあり、監督の力量を見極める審美眼には恐れ入るばかりです。ホン・サンスはしばらく見逃せない作家となるでしょう。youtu.be/RGXAnckVF_s
■その他、『マリー・アントワネットに別れをつげて 』(ブノワ・ジャコー監督)、『シルビアのいる街で』(ホルヘ・ルイス・ゲリン監督)などが印象に残りました(後者は数年前の作品ですが)。日本初公開の旧作である『モスクワ・エレジー』(アレクサンドル・ソクーロフ監督)、『恐怖と欲望』(スタンリー・キューブリック監督)の2本は、巨匠の足跡を知るための必見の作品だと思います。多くの日本映画が守りに入っているなかで、『リアル~完全なる首長竜の日』(黒沢清)のような冒険をする作品が少ないのが残念です。

bird dog(FBNライター)

■今年も映画館にはほとんど行けずじまい、DVDも数本程度。そんななか、珍しく時間があって見た『オン・ザ・ロード』は、アメリカ文化にとって、「移動」こそが「リアルなもの」に到達する夢そのものなのだということを感じさせてくれました。見終わった後、1週間ぐらいボブ・ディランを聞かずにはいられませんでした。“You ask me why I don’t live here / Honey, I can’t believe that you’re for real.” (On The Road Again)

Small Circle Of Friends(アーティスト)

■オードリー・ヘプバーン没後20年でデジタルリマスターされた 「ティファニーで朝食を」 「パリの恋人」 「麗しのサブリナ」 が、新しい作品で無くとも蘇った彼女を映し出すうれしい出来事でした。GIVENCHYの衣装に、リチャード・アヴェドンがヘプバーンを創造する。考えただけでも痺れる組み合わせ。ガーシュウィンの S wonderful で Fred Astaire と踊るヘップバーンの場面は何度観ても切なく、幸せ感じる。www.screenbeauties.com/audery
PROFILE:サツキとアズマの二人組。1993年、福岡にてスタート。1998年より拠点を東京に移し、Small Circle of Friendsとして10枚のアルバムをリリース。10枚目のアルバムは2012年10月10日発売の『Superstar』。そして2013年12月、20thを迎える今年「スモサの20」と題して、様々なイベントを展開! www.scof75.com

cyberbloom(FBN管理人)

辻仁成監督 『その後のふたり Tokyo Paris Paysage 』
tokyoparispaysages01■この映画は2月に大阪・十三のシアターセブンで見た。その日は辻さんご自身が舞台挨拶に来られ、そのあと控室で直接お話をする機会を得た。辻さんの小説も恋愛をテーマにしたものが多いが、それは突飛なバリエーションを描くことではない。むしろわかりやすい同じテーマを反復して、人間の真実を思い出させることだ。辻さんは単線的な物語に収斂させるのではなく、感情の襞を多面的に見せ、見る者の内側にも様々な感覚や感情を喚起しながら、イメージを積み重ねていく。ところで、大資本による映画が大手をふるう中で、小さな手作りの映画が排除されていく現状がある一方、技術の進歩、特に小型のデジタルカメラによって映画を撮るコストが格段に下がった。高性能デジタルカメラの革新性について熱く語る辻さん姿が印象的だったが、『その後のふたり』を撮った目的のひとつは、低予算で映画を作る技術的なシステムを確立することだと言う。それは同時に共感と人間力をベースにした実験でもある。報酬によって人を動かすのではなく、ボランティアのスタッフの自発性に賭けるしかないからだ。youtu.be/QMX9I_9Hxfo
『宇宙戦艦ヤマト2199』
■子供と一緒に見た。アニメは重要な親子のコミュニケーションツールだ。私はいわゆるアニメ第1世代に属しているが、中学生時代に刷り込まれたものは未だに尾を引く。昔のバージョンは「愛」を叫び、波動砲をぶっ放せばすべてOKって感じで、突っ込みどころ満載だったが、『2199』は全く別物だ。ストーリーもかなり複雑で、見るたびに消化不良を起こした子供に質問攻めにされた(こういうのにはまられても困るんだが)。ヤマトの中に内部抗争があり、ガミラスの内部でもクーデターが起こる。女性キャラが格段に増えて数の上で民主化している。「心を持つロボット」のような、古典的なSF的葛藤も随所に盛り込まれ、また思わせぶりに中原中也が引用される。もちろんそれだけでは陳腐だが、それが人間の知覚をはみ出るようなリアルなCG映像を伴っていることが今までなかった経験なのだろう。よくできた作品だ。昔のファンが今の森雪やスターシャに萌えあがれるのかという課題が残されるが、ヤマトの「2199版化」はまだまだ続く。youtube/51utm_LNX8E
■去年の『最強のふたり』に引き続き、今年もフランス映画は話題豊富だった。まだ挙げられていない今年のフランス映画のヒット作といえば、『タイピスト』と『大統領の料理人』だろうか。『タイピスト』はフランスの50年代を舞台に、当時実際にあったタイプライターの早打ち大会で優勝することを目指すヒロインを描いた作品だが、瞬く間にファッションに敏感な幅広い層の女性の心をつかんだ。小規模公開で始めた劇場も多かったが、毎週のように公開する劇場が増えていった。雑誌で50年代ファッションの特集が組まれ、2001年にブームを巻き起こした『アメリ』に比較されることも多かった。仏語クラスの映画好き女子たちの人気はやはりこの『タイピスト』と『うたかたの日々』に集まっていた。ところで、『大統領の料理人』はとにかく料理が美味しそうだった。行きつけの神戸元町のブラッスリーが映画とのコラボ企画をやっていて、映画に登場した「サーモンのファルシ」を用意していたのだが、パンフレットを握りしめた映画を見たばかりのお客さんが次々とやってきて、目を輝かせて注文していたのを目の当たりにした。映画に出てきた料理が、見た直後に食べれるとくれば、それは至福の瞬間だろう。youtu.be/GQdYgriw-n8

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noisette(FBNライター)

『いのちを楽しむ―容子とガンの2年間』
いのちを楽しむ〜容子とがんの2年間 [DVD]■40歳でガンを告知された時から「お医者任せではなく、自分の治療法は自分で納得がゆくまで調べて選択する」姿勢を貫いた渡辺容子さんの最期の2年間の闘病の記録。彼女の主治医は『患者よ、がんと闘うな』で知られる近藤誠医師。この映画にガンの末期治療についての最新情報を求めた人も多いと思うが、むしろ私たち一人一人にどのように生きて死にたいかを問いかけるものである。ブログを通して知っていた方々を実際にスクリーンの映像で目の当たりにするのは、何だか奇妙な、それでいて懐かしいような感慨を抱かせた。いよいよ死期を悟った容子さんは、長いあいだ自分の信念や行動を綴ってきたブログで、「容子看取りプロジェクト」と題したユニークな「お願い」をする。実は私、このプロジェクトに応募し、参加するはずだったのだが、彼女の容態が急変し、その約束は叶わなかった。しかしこの映画を通して、容子さんが生きている間にどれだけ回りの方に対して徳を積まれ、愛されていたのか、より一層理解できたのだった。youtu.be/53q32nmaiXg

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当サイト の管理人。大学でフランス語を教えています。
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