フランスからグローバリゼーションとオルタナティブを考える新しいフランス学

Je suis comme je suis—ステファニー・ズウィッキーのわたし流スタイル

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フランスの女性はみんな華奢でスリムでシック―そんなイメージをお持ちでは? 日本に限らずアメリカでもこのイメージは揺るぎないものと信じられていて、「フランスの女性に学ぶステキなライフスタイル」というようなタイトルの本が書店に並んでいます(「フランスでは毎朝、ふくよかな女性が牛乳の空き瓶のようにトラックで回収される」という趣旨の一コマ漫画を見たのもアメリカの雑誌でした)。しかしこのイメージ、ただの「幻想」でしかありません。フランスには、プラスサイズの服を着る女性が、あなたの思う以上にたくさんいるのです。

統計によれば、15歳以上のフランス女性の実に42%が肥満の問題を抱えているそうです。インターネットのおかげでどの国のリアルな情報も簡単に手に入るようになったはずなのに、どうして知られていないのでしょう?
フランス映画やパリ・モードが提示するフランスの女性達が「幻想」を体現する人ばかりということもありますが、プラスサイズの女性達の声がなかなか聞こえてこないという状況もあるのだと思います。

そんな中、異色ファッション・ブロガーとして注目を集めているのがステファニー・ズウィッキー。スイス生まれのパリに住む30代の女性です。
プラスサイズの体型ながら、色を楽しみアクセサリーを上手に使ってキュートにも大胆にも変身する着こなしはフレンチ・シックそのもの。フランス版「ELLE」誌にも取り上げられる程です。
そのサイズゆえにアイテムにかなり制約があるはずですが、そんなことはみじんも感じさせず「装う楽しみ」を発信。世界中でたくさんの読者を獲得しています。
フランスでは、コメンテーターとしてテレビ出演するなど、ブログ以外のメディアにも活躍の場を広げている、旬の人なのです。

ステファニーのモットーは「スタイルは体型じゃない、あなたの心持ち次第」。
彼女がこの境地に至るまでの道のりは平坦ではありませんでした。

小学生のころ医者に「肥満児」の宣告を受けてから、体重に振り回される人生がスタートします。ありとあらゆるダイエットを試みたそうです。
他人の視線が気になるティーンエイジャーの頃には、天国と地獄を経験しました。「ちょっとぽっちゃり」な見かけだった時は、大人っぽいグラマーギャルとしてモテモテに。有名美人コンテスト”Miss OK”のスイス大会で第2位に選ばれたこともありました。
でも、体重が増え続け体型が変わると、向けられる視線は賞賛から嘲笑に変わります。日々太っていることを呪い、苦しむステファニーに、手を差し伸べてくれる人はいませんでした。また不幸なことに、誰よりも悩みを聞いてくれるはずの母親が、全く頼りになりませんでした。彼女自身も同じ悩みを抱えていて、自分と同じように太ってゆく娘を受け入れられなかったのです。無茶なダイエットをしていると気付いても、だまって見ているだけ。あきらめなさい、ステファニー…。

1年で63キロやせられる、という医者の口説きにのせられて、ステファニーはとうとう減量手術に踏み切ります。胃にバンドを取り付けてサイズをコントロールし、摂取する量を減らせるようにしたのです。術後は食べる喜びを放棄し、レストランへお誘いも全て断ってカロリーだけを考える生活を送りました。ついには36キロ体重を落とす事に成功。ぐっとスリムになった彼女を、回りは褒め讃えました。
「すごい!」「きれいになったね」「どうやってやせたの?」
しかし、気持ちは晴れませんでした。みんなにとってスリムになったこの体型だけが大事で、私という存在は「影」でしかないの?…。「太っていたときの私」が結果的に否定されたことにステファニーは打ちのめされました。うつになり、「消えてなくなりたい」とさえ思いつめます。

しかしこのうつの治療を受けたおかげで、ステファニーは心の病の原因となった「体重と自分」の問題と正面から向き合うきっかけをつかみました。そしてついに、「プラスサイズの私」をありのままに受け入れることができるようになったのです。
もともと好きだったファッションへの情熱も復活。おしゃれを前向きに楽しむこともできるようになると、みんなとシェアしたいことがたくさんあることに気がつきます。地味な扱いのプラスサイズの服でもステキな着こなしができること、気の利いたブティックのこと、最近見つけたかわいいドレスのこと!ブログを始めたのは自然の成り行きでした(プラスサイズの女性のおしゃれ心を無視し続けるファッション業界に物申したい気持ちもあったようですが)。

メディアへの露出も増え、プラスサイズの女性を代表する存在として扱われる事も増えてきましたが、ステファニーの基本姿勢は変わりません。誰かのために活動しているのではない、私にできるのはただ、他人からどう見られようと私らしくあること―。サイズゼロの彼女達のように何でも着こなせるわけでなく、ジーンズをアイテムに取り入れたスタイルはあきらめたけれど、私がうれしくなる装いで日々楽しんでいる。ほら、私を見て!着道楽と自己顕示欲という表現では片付けられない、いろいろあった後に到達したピュアな喜び―それこそがステファニーのブログの真の魅力なのです。

ポジティブな見方へ変わることを促した原風景について、ステファニーは語っています。それは、17歳の頃たまたま見たおバカ系トークショウの一場面。数名のとってもふくよかな女たちが着飾ってレッドカーベットを歩くという趣向で、視聴者の笑いを誘うための企画なのが見え見えでしたが、登場した女たちの堂々とした姿に思わず見入ってしまったそうです。体型に引け目を感じるどころか、いろんな意味で盛り上がる観客を気にもかけず、顔を上げてポーズを取り、歩く彼女達。「私は私よ!」
—そのとき感じた、霧が晴れたような気持ちを素直に受け入れるまでだいぶ回り道しましたが、今自ら用意したレッド・カーベットを生き生きと歩く彼女がいます。

ステファニーのブログはここで見ることが出来ます。
www.leblogdebigbeauty.com/en/faq/

ステファニーが出演したファッション・ブランド、マリナ・リナルディのPRフィルムです。おしゃべりするステファニーも魅力的。
youtu.be/QP3bnQ2QCF4

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GOYAAKOD=Get Off Your Ass And Knock On Doors.

大阪市内のオフィスで働く勤め人。アメリカの雑誌を読むのが趣味。 門外漢の気楽な立場から、フランスやフランス文化について見知った事、思うことなどをお届けします。