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『クーリエ・ジャポン』8月号&9月号をまとめてナナメ読み!

text by / category : 本・文学

東大で最も読まれているという触れ込みの『クーリエ・ジャポン』。確かに面白く、ためになる記事が多い。私は大学の図書館に入っているのを読むことにしているので、借りて熟読できるのはバックナンバーになってから。しかし2、3カ月の遅れなど問題ない。もう11月号が出てしまったが、未だホットでアクチュアルな記事を選んでみた。キュレーション雑誌のさらなるキュレーション!好評なら続くかも。

COURRiER Japon (クーリエ ジャポン) 2012年 09月号 [雑誌]COURRiER Japon (クーリエ ジャポン) 2012年 08月号 [雑誌]

グーグル翻訳も自由に使ってもよいデンマークの寛容すぎる試験:デンマークでは試験に辞書や参考書を持ち込むことが20年以上前から認められていて、今では試験でネットの検索が認められる。「カンニングと参照は違う」と言う認識。試験で問われるのは暗記能力ではなく、考える力。試験も日常と同じ条件でやらなければ意味がないと。ハーバードでの大量不正、京大入試のケータイカンニングが大問題になっていたが、古い形式を考え直す時期に来ているのだと思うが、それを評価する側の問題でもある。
★「静かな個室でひとりで勉強して、何も参照できない試験会場で黙々とひとりで問題を解く」という「勉強‐試験モデル」は時代遅れなのかもしれない。少なくとも現実において対応する状況がない。一方で企業などでグループワークの重要性が増し、知識や思考力だけでなく、他者の視座を持ちつつ、交渉する技能が求められている。その場合、他のことを何もやらずにお受験に邁進してきた子供は経験値の低さゆえに使い物にならない。

アメリカで男性の看護士や歯科衛生士が急増:元々女性が大半を占めていたピンクカラーの仕事を男性が選んでいる。この傾向は金融危機以前から見られ、不景気だけが原因ではなく、価値観やジェンダー意識の変化がある。それが女性の仕事を奪っているわけではなく、この種の雇用が増えている(つまり対面的なサービス業)。その仕事を選んだ理由として家庭で過ごす時間が多く、ストレスが少なく、かつやりがいを感じられる。
★アメリカではリーマンショックの際に女性の失業率は男性の失業率ほど下がらず、NY Times の女性記者はリーマンショックを「男性不況」と呼んだほどだった。「これは女性の仕事だ」と忌避する者は新たな成功を逃すのと同じで、新たな職業訓練を受 けるよりは従来の「男らしさ」を忘れるべきだとリチャード・フロリダは書いている。少なくとも言えることは、製造業の凋落と、それに続く知識産業とサービス業の勃興 で、労働市場では男性よりも女性が好まれるようになっている。日本のように男女の役割に関して固定観念の強い社会は変化になかなか対応できないことになるだろう。

スポンサー企業の宣伝費がイタリアの世界遺産を救う:財政危機の真っただ中のイタリアで国が文化遺産を保護する余裕はない。イタリアは最も世界遺産が多い国で、年間4500万人の観光客が訪れ、観光産業はGDPの10%を占める。文化遺産のスポンサー企業を募り、その商業的利用権を売って保全費用に充てる。コロッセオは皮革ブランドがスポンサーになり、3300万ドルをかけた補修が始まった。
★フランスも事情は同じで、政府からの補助金も削減され、財政的に厳しい状態に置かれている。それゆえ独自のアイデアで財源を確保しなければならない。ヴェルサイユ宮殿も例外ではなく、2010年に行われ、物議をかもした村上隆展のような注目されるイベントがないと宮殿の維持管理費をまかなえないのも現実。ヴェルサイユ宮殿では企業の資金による修復も行われていて、あるコニャックのブランド会社の出資によって天井の壁画が修復された。資金提供している個人もいる。「これは私の寄付で直したのよ」と庭園の彫像を指差すマダムが France 2 のニュースに登場し、彫像に貼られた小さなパネルには彼女の名前が記されていた。

米国人が最も飲むお酒は36%がビール、35%がワインという調査結果:ビールの愛飲者は10年で10%減少したが、ワインは50%増。米国人はワインをカジュアルに楽しむ方法を学び、一昨年から仏伊を抜き、世界一のワイン消費国に。
★一方、フランスではアルコール離れが著しく50年前に比べワイン消費量は半減している。アメリカだけでなく、さらに中国でもワイン消費量が伸びている。今や世界で、ワインを初めとする高級食材の旺盛な消費を牽引するのは、中国都市部に住む中産階層。

「働かなくても楽しめるギリシャ人、セックスも愉しめないドイツ人」というシュピーゲルの記事:ドイツ人が人生を楽しめないのは完ぺき主義と嫉妬心による、とドイツの心理学者。ドイツ人の8割が最高の喜びを味わうためにはその前に何かを成し遂げることが必用だと、と答えた。そしてギリシャ人のように「達成感がなくても楽しめる人々」(笑)に嫉妬するのだという。しかしギリシャ人の真似はできないというジレンマ。ドイツ人は人生を楽しめと言われるとそれがプレッシャーになるような人々のようだ。
病気ならば休暇の取り直しもOK.:「長期バカンス中に病気になった労働者はその日数分の休暇を再取得する権利がある」と欧州司法裁判所が判断。あくまでバカンスはリラックスし、レジャーを楽しむためのモノ。欧州危機の最中にもかかわらず、この決定はEU加盟27か国に適用される。しかし多くの失業者にとっては無関係という話も。
ワシントンで教育長をつとめたミシェル・リーをイギリス教育相がアドバイザーに:彼女は公教育の質を上げるために徹底した評価主義を導入した人物。教師の能力は学校コミュニティーの貢献や成績アップによって評価され、結果を出さない校長を解雇し、成績の上がらない学校を閉鎖した。逆に優秀な教師には高い報酬を約束。一方授業が試験対策に偏ったり、学校ぐるみで答案の改竄があったり、弊害も大きかったと言われる。そのうち教育改革に熱心な「維新の会」のアドバイザーとして日本にも来るかも。
おひとり様大歓迎、NYでINVITE FOR A BITE という女性専用のサービス:ひとり様同士が食事の約束をできるSNS。「男漁りをしている」とか「さびしい女だ」と思われるのがいやな女性に大好評だとか。http://inviteforabite.com/
カトリック教国のフランスの宗教事情:フランスで去年11年の調査でフランス人の36%が神を信じると答え、一方で自分は無神論者である、何を信じるべきか迷っていると答えたのが34%に上る。さらには自分で教義を自分でアレンジして自分なりの形で信仰を持っている人も多いようだ。
パリのラブホテル、レアールの「クラブ88」:時間制のホテルはフランス初らしい。1時間25ユーロ、朝9時から翌2時までオープン。ウェブ予約も可能。http://www.lovehotelaparis.fr/

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posted date: 2012/Sep/25 / category: 本・文学
cyberbloom

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