フランスからグローバリゼーションとオルタナティブを考える新しいフランス学

FRENCH BLOOM NET 年末企画(4) 今年の注目ニュース&ベストイベント

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最後は今年の重大ニュース&ベストイベントです。exquise さんがベスト美術展、おぎのんさんがベスト公演(バレエ)、bird dog さん、Jaidin さん、cyberbloom が今年の注目ニュースをお届けします。みなさん、良いお年を。そして来年も、FBNをご贔屓によろしくお願いします。

ベスト展覧会(exquise@kabcat FBNライター)

「現代美術のハードコアはじつは世界の宝である展 ヤゲオ財団コレクションより」

2014exquise01■今年も、基本日帰りで行ける限界まで足をのばして美術館やアートフェス見学を楽しんだ。美術館全体が経済的に厳しいなかでも、兵庫県立美術館での「ポンピドゥー・センター・コレクション」や、国立国際美術館(大阪)での「アンドレアス・グルスキー展」、金沢21世紀美術館での「レアンドロ・エルリッヒ展」など面白い企画展がいくつもあった。なかでも名古屋市美術館の「現代美術のハードコアはじつは世界の宝である展 ヤゲオ財団コレクションより」 が最も見応えある展覧会だった。sekainotakara.com
■ヤゲオ財団とは、台湾の大手電子部品メーカーのCEOピエール・チェン氏が設立した非営利組織で、アンディ・ウォーホル、フランシス・ベーコン、ゲルハルト・リヒター、そしてグルスキーといった、現代美術界の名だたる面々や、中国の力ある現代作家たちの、世界有数のコレクションを有している。ほとんどこの団体に関する知識がないまま展覧会に行ったのだが、会場に入るなり、その一つ一つの作品のスケールの大きさと、コレクションのセンスのよさに鳥肌が立ってしまった。実際にチェン氏の自宅やオフィス(建物自体がすでに芸術品)に作品が飾られ、生活空間に無理なく収まっている様子を見ることもできる。会場での解説も非常に面白く、マーケティング観点から美術作品を語る、という従来の展覧会にはあまり見られない試みもされていて、作品の実際の価格も提示されている(当然目が飛び出るようなお値段)。これだけの作品を短期間に収集したチェン氏の眼力と、それからもちろん資本力に驚かされることしきり。ああ、持つべき人がお金を持つと違うのねえ〜と素直に納得するのだった‥。会場では作品購入を疑似体験できるゲームコーナーもあり、プチCEO気分にもなれます。来年は広島や京都にも巡回するので、現代美術に興味がある方はぜひ訪れてみてください。私ももう一度観に行こうかな。

ベスト公演(おぎのん:演劇批評家)

L.A.Dance Project 『クインテット』(W・フォーサイス振付)、彩の国さいたま芸術劇場、11月8日‐9日

■今 秋、パリ・オペラ座バレエ団の芸術監督に就任したバンジャマン・ミルピエ。彼が2012年に設立したダンスカンパニーL.A.Dance Projectが初来日した。3作品が上演され、ミルピエ自身の振付の『リフレクションズ』、エマニュエル・ガット振付の『モーガンズ・ラスト・チャグ』 もなかなかだったが、やはりウィリアム・フォーサイス振付の名作『クインテット』が圧巻だった。
■ホームレスの 老人が《Jesus’ Blood Never Failed Me Yet》と口ずさむ声をループさせ続ける現代音楽家ギャビン・ブライアーズの曲『イエスの血は決して私を見捨てたことはない』が流れるなか、男女5人のダ ンサーがさまざまな形でペアを組んで踊っては離れていく。バレエの文法を解体した動きが舞台上のいたるところで同時多発的におこなわれ、未知の形象が次々 と生まれては即座に消え去る。その認知と忘却の絶え間ない反復によって観る者の意識は徐々に覚醒していく。かつて目を見開いて世界を観察した幼いころに戻 るかのように。
■フォーサイスがダンサー5人と共同して作り上げた『クインテット』の初演は1993年10月。 当時闘病中であり翌年の2月に32歳の若さで亡くなる妻(そして大事なダンサー)のトレーシー=ケイ・マイヤーに捧げた作品であるとも言われている。ま た、共同創作者のなかに、フォーサイスの後のパートナーとなるダナ・カスパーセンがいたのも重要な事実で、同じく亡き妻に捧げたとされる95年の作品『エ イドス:テロス』においてもカスパーセンは決定的な役割を果たすことになる。
■このようにフォーサイスにとって 個人的な思い入れがあるだろう『クインテット』だが、今回上演された作品はL.A.Dance Projectのためにフォーサイス本人の手で再振付されたものだという。そして、そのせいかどうか、若いダンサーたちからは作品に備わる哀感とともに生 命の輝きのようなものが強く印象づけられた。

bird dog(FBNライター)

イスラム国

■「イスラム国」の出現は衝撃的でした。グローバリズムによって国民国家の有効性が消失した後、ナショナリズムの空隙を埋めるものとして宗教が台頭してきたことを、端的に示しているように思います。フランス人も複数参加していることが確認されています。「国際秩序」が、諸国家による平和的な資源分配を意味するとすれば、超国家的な「イスラム国」は、確かに国際秩序に対する挑戦です。

スーパーグローバル大学

■今秋、「スーパーグローバル大学」30校が決定されました。英語による授業を拡大し、優秀な留学生を確保するとともに、日本人学生の英語圏への留学を支援し、「世界のどこでも活躍できる」人材を育成する、という目的に特化した大学を選定したもので、10年ほど毎年数億円の補助金がつきます。グローバル化戦略で英語のみを重視するのは、「国際化」=「英語が話せる」という、一昔前の勘違いの再現か、とその周回遅れぶりが気になります。ネットでは「文科大革命」と揶揄されていますが、その成果や如何。

原子力発電所

■今年はとうとう一年にわたって、国内の原子力発電所がすべて停止しました。それでも国民生活が破綻しなかった、という事実は重大だと思います。再稼働は時間稼ぎにすぎません。今後、原発が必然的に電力会社の不良債権と化していく時代をどのように制度設計するべきか、真剣に議論しなければなりません。福島第一原発では、汚染水処理が難航し、廃炉の次の段階へなかなか進めないなか、4号機の使用済み核燃料の取り出しに進展があったのが、せめてもの救いでした。

 Jardin(FBNライター)

国民国家と民族1 – 極右の台頭に揺れ動いた欧州

■今年の欧州は、フランスも含め、極右勢力が再び台頭した1年であった。特にフランスでは、マリーヌ・ルペン率いる極右政党「国民戦線」が、5月末の欧州議会選挙で「二大政党」と言うべき社会党とUMPの地位を脅かす得票を獲得した。どの国においても、極右政党の掲げる政策は、あらゆる分野で非現実的かつ過激だ。それでも人気が集まるのは、国民の不満が高まっているからに他ならない。普通の薬が効かなくなった患者が、怪しい毒劇薬に頼る光景に近いのだろう。しかし、極右という毒薬は、呷ったが最後、新たな混沌しか生まない。従来政党には、今こそ国民の声と向き合い、「極右の罠」から国民を護ることが求められている。

国民国家と民族2 – スコットランド独立運動の喧騒

■近代国家の基本ともいうべき「国民国家」(ネイション・ステイト)の枠組みは、英仏が発祥だ。今年は、その国民国家の枠組みを突き動かす動きがあった。スコットランド独立運動に関わる住民投票は、若い世代を中心にスコットランド人のアイデンティティを掻き立て、中央政府に危機感を抱かせるほどの盛り上がりを見せた。英国は連合王国(同君連合)に過ぎない。今後いっそう民族・自治を尊重した政策を進めなければ、今回は阻止されたとはいえ、また独立の気運は高まるだろう。日本にとっても他人事ではない。アイヌ、沖縄…日本とて多民族国家なのだ。民族の多様性を尊重した国家のあり方を模索すべき時は近いと筆者は思う。

サルコジ前大統領政界復帰!

■11月末に入ってきた「サルコジ前大統領政界復帰」のニュースも私的にはかなり驚いた。オランド現大統領に2012年の大統領選で敗れた後、一線を退いていたサルコジが、野党UMPの党首として復活するというのだ。2017年の大統領選で雪辱を果たしたいようだ。オランド政権の支持率が低迷する中、次回大統領選は確かに野党に有利になるかもしれない。しかし、サルコジは政治資金スキャンダルで現在訴追中の身。政治家とスキャンダルといえば、かつてドヴィルパン元首相が、「クリアストリーム」事件裁判で無罪を勝ち得て復活、時の人となった姿が思い出されるが、サルコジは「2匹目のドジョウ」にありつけるか。来年以降注目のニュースだろう。

人種の溝・銃社会の病理に絡め取られるアメリカ

■8月に、アメリカ・ミズーリ州ファーガソンで黒人青年が白人警官に射殺された事件は、アメリカ国内の黒人社会を憤激させ、大統領や司法長官が事件に言及・介入する大事件に発展した。この事件は、アメリカ国内の人種間の溝が未だ根深いこと、そして銃社会の病理(銃社会に対応するために重武装化した警察が、その武装により市民を排撃する光景)を世界中に晒すものとなった。「人種間の溝」といえば、欧州では極右勢力の台頭等により、移民に対する風当たりが再び強まろうとしている。日本でも、レイシズムの台頭が懸念されているところである。レイシズムに惑わされてはならない、私たちはこれを一層肝に銘じるべきではないだろうか。

ジョージ・クルーニーついに結婚!

■最後は芸能の話題から…ハリウッド一の大物独身貴族だったジョージ・クルーニーがついに結婚、独身生活に終止符を打った。筆者が愛してやまない海外ドラマ『ER』のダグ・ロス役でブレイクしたと言われるクルーニー。若い頃は白髪混じりで老け気味だったのだが、それが歳を重ねてダンディな中年と良い塩梅になってくるから、不思議なものだ。最近ソニー・ピクチャーズが金正恩暗殺計画を題材にした映画”The Interview”で話題をさらっているが、かつてパラマウントが制作した映画『チーム・アメリカ』では、その人気の裏返しか金正日とともに悪役にされていたクルーニー。政治活動も含め、今後一層の活躍に期待したい。

 cyberbloom(FBN管理人)

1. ニューヨークでフランス語教育熱高まる

■ 11月28日のFrance24の記事によると、アメリカでバイリンガル教育の機運が高まっている。特にフランス語だ。NYでは2006年まで公立学校のフランス語のクラスが皆無だったが、今は10校でフランス語が学べ、卒業時には英語と同じように流暢にフランス語が話せるようになるという。今年3月に出た「2050年にはアフリカの人口増加のおかげで、フランス語は世界で最も話される言語になる」というレポートの影響で、ポスト中国のアフリカを見据えて、親たちが学校にロビー活動をして、プレッシャーをかけている。ニューヨークでフランス語を話す家庭は1%にも満たないが、フランス語の人気はそれに不釣り合いなほど高く、憧れの対象ですらあるようだ。もうひとつフランス語に関わる重要なニュースは、ネット学習サイト、カーン・アカデミーのフランス語版が完成したこと。これはアフリカのフランス語教育のインフラとして重要な役割を果たすだろう。今年はエボラ出血熱の流行でアフリカのネガティブなイメージがクローズアップされてしまったが、その背後でアフリカは確実に成長している。

2. フランスは終わった?

■イギリス百貨店チェーン幹部の「フランスは終わった…硬直的で絶望的、それに落ち目だ…何もうまくいってないのに、それを誰も気にしていない」という「フレ ンチバッシング」が問題になり、発言した本人は謝罪。イギリスがフランスをディスるのは昔からよくあることだが、近年のフランス批判の中身を実際に精査すると、①フランス人は怠け者…実は英サラ リーマンよりも生産性が高い。②フランスは赤字国…実は英6%に対して、仏4.3%と赤字幅が小さい。③起業家が数が少ない… 実は仏の方が多い。④仏は国際競争に弱く、研究投資が少ない…これも仏の方が多い。結局フランスがうらやましくて叩いているのではないかという結論に(笑)。そしてフランスのヴァルス首相がノーベル文学賞のパトリック・モディアノ氏に続き、ジャン・ティロール氏が経済学賞を受賞した際に「Quel pied-de-nez au french bashing ! フレンチバッシング、ざまあみろ!」とツィッターで反撃。

3. 欧州会議で国民戦線が首位

■5月22~25日に投票が行われた欧州連合の欧州議会選挙で、フランスの極右政党・国民戦線が仏有権者の4分の1余りからの支持を得て同国の首位政党となり、仏政界に激震が走った。マリーヌ・ルペン党首が率いる反移民・反EU政党が26%の得票を確実にし、フランスが欧州議会に保有する74議席中の3分の1を 国民戦線が占めることになった。フランス経済低迷の責任はEUにあるとするEU懐疑論と現政権への怒りと失望という2つの流れに後押しされた国民戦線は、保守中道の連合政党・国民運動連合(UMP得票率20.6%)を抑え、首位に躍り出た。この欧州議会選で国民戦線は、フランス全土で行われた選挙としては過去最高の支持率を獲得した。一方、フランソワ・オランド大統領の社会党の得票率はわずか3.8%で、3位に。3月30日に行われたフランスの統一地方選挙でも国民戦線は計1400議席超を獲得し、11の自治体で首長に選出。直後に行われた日刊紙パリジャン(Le Parisien)の世論調査では、回答者の60%近くがFNを主流派政党とみなすべきだと考えている一方で、FNから首長や地方議員が選出されることは行き過ぎで「悪いこと」だと62%が考える、矛盾した結果が出た。

 4. パリで深刻な大気汚染

■ 3月、深刻な大気汚染のため、パリの空が灰色にかすんだ。フランスでは数日間、約30県で大気汚染警報が最高レベルに達し、担当閣僚 が「政府にとって緊急かつ最優先の課題」と発言する事態にまで発展。11日には、仏NGO「国境なきエコロジー」が、パリの裁判所に大気汚染訴訟を起こした。こうした中、パリでは約20年ぶりに自動車の走行制限が実施された。パリ市内と周辺22の地区では、奇数日には奇数ナンバーの車だけ、偶数日付なら偶数ナンバーだけが通行可能となった。違反者には22ユーロの罰金。電気自動車、ハイブリッド車、3人以上が同乗した車両は規制の対象外。また4日間、パリ市のメトロやバス、レンタル自転車・自動車が無料になった。4月、アンヌ・イダルゴ氏が初の女性市長としてパリ市長に当選したが、レンタル自転車 Vélib’、レンタル電気自動車 Autolib’ に続いてレンタル電動スクーター Scootlib’ も稼働させると選挙運動中に公約していた。

5.新しい美術館と再開する美術館

改修工事で閉館していたパリのピカソ美術館が、ピカソの誕生日となる10月25日に再オープンした。ピカソ美術館は改修のため約5年前に閉館。改修により展示スペースはこれまでの3倍に拡大される。年間入館者は最大で 100万人と予想されている。また、パリのブーローニュの森に、フォンダシオン・ルイ・ヴィトンが開館。同館はルイ・ヴィトンやモエ・エ・シャンドンなどを傘下に収めるLVMHグループが設立した現代アート施設で、フランク・ゲーリーが設計し、10年以上の年月をかけて作られた。150年のあいだ一般公開されず、そのおかげで光と損傷から守られていたフォンテーヌブロー宮(城)の皇帝の劇場が、アラブ首長国連邦のファンドのおかげで修復され、観光客はナポレオン3世のために造られた至宝を間もなく見ることができる。しかしこの劇場の名前はナポ レオン3世の記憶を喚起することはないだろう。なぜなら劇場の修復のために出資したアラブの首長の長い名前 Cheick Khalifa Bin Zayed Al Nahyan がつけられるからだ。しかしファンドが劇場のために1000万ユーロを拠出しなければ、修復できなかったことも事実だ。そういえば、来年、ルーブル美術館アブダビ分館(Louvre Abu Dhabi )が開館の予定。フランス文化を支えるオイルマネー。
www.museepicassoparis.fr/
www.fondationlouisvuitton.fr/
louvreabudhabi.ae/

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当サイト の管理人。大学でフランス語を教えています。
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