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FRENCH BLOOM NET 年末企画(1) 2017年のベスト音楽

text by / category : 音楽

恒例の年末企画。第1弾は2017年のベスト音楽です。今回は FBN のライター陣の他に、マニアックなフランス音楽とフランス語のツィートでおなじみの福井寧(@futsugopon)さん、ヴィアネやブリジットのライナーノーツでお馴染みのフランス系ライターの丸山有美さん、ライミュージックの紹介者として知られる世界音楽研究家の粕谷祐己さん、POISON GIRL FRIEND の nOrikO さん、神戸で100回を超えるライブを終えたばかりのフランス語で歌うシンガー、小関ミオさん、ヒップホップデュオ Small Circle of Friends のサツキさん、音楽プロモーターのわたなべさんにも参加していただきました。

福井寧(@futsugopon)

Albin de la Simone – L’un de nous
■2003年にアルバムデビューした1970年生まれの男性シンガーソングライター、アルバン・ド・ラシモーヌはバンジャマン・ビオレやヴァンサン・ドレルムよりも少し年上で、プロデュースやアレンジでの活躍が目立ちますが、ソロアーティストとしてはこれまであまり注目を浴びてきませんでした。デビュー当時から才能があると思われていたものの、才能を隠すような自己韜晦的な作風が惜しいと感じていました。その作風が徐々にパーソナルな感触の歌に変化してきて、今回の5作目のアルバムがようやく高い評価を得ることになりました。音数が少ないアレンジで、心に沁み入るようなメランコリックな歌を歌います。ジャケット写真はソフィー・カルによるもの。
Le grand amour  youtu.be/1187SR4cBkw
Pomme – À peu près
■ポムは本名がクレール・ポメ(Claire Pommet)で、1996年リヨン生まれの若手女性フォーク歌手。去年4曲入りのEP、En cavaleでデビューし、これが初のフルアルバムになります。幼少の頃から音楽教育を受けたポムは、ギター、チェロ、オートハープ(ジョン・セバスチャンも弾いていた竪琴)を弾き、憂いを帯びた声で歌います。アルマ・フォレールやクルーと同じく米国のフォークカントリーへの憧れを強く感じさせる女性歌手の一人です。ベン・マズュエ、ベンセ、ジャン・フェルジン(ムスタング)などが詞曲で参加していますが、自作曲が非常にいいです。YouTubeのチャンネルComité des reprisesで知られるワックスことバンジャマン・エキミアンのプロデュース。
La lavande youtu.be/eKS4iVTvZr0
Tim Dup – Mélancolie heureuse
■ティム・ダップ(デュップではない)は本名がティモテ・デュペレー(Timothée Duperrey)で、1994年パリ近郊生まれの若手の男性歌手。去年EPデビューして注目を浴び、今回初めてのアルバムを出しました。昔ながらのシャンソンを聴いて育ったということで、育ちのよい子供らしさが抜けない顔つきですが、その歌にはエディ・ド・プレトと同様のヒップホップを通過した新しい世代の表情が感じられます。パヴァーヌことダミアン・トロンショとティム・ダップが二人だけでつくった、きわめて簡素でアンビエント的なエレクトロサウンドが、言葉数の多い「幸福な憂鬱」の歌世界によく合っています。マニア向けのヴィアネという趣。
Le soleil noir youtu.be/SdF-Sh9Qixg
■2017年のフランスは、オレルサン、ロムパル、ヤサント、ヴァルドなどのラッパー、チャイニーズ・マンやローンなどのエレクトロミュージシャンが面白い音楽を届けてくれましたが、ここで選んだ3枚はあまりこの時代の流れとは関係のないシンガーソングライターばかりになってしまいました。エチエンヌ・ダオが円熟を見せた新作、バンジャマン・ビオレのブエノスアイレスからの2作目Volver、ジュリエット・アルマネとフィッシュバックのデビュー作、マドモワゼルKやリザ・ポルテリの新作などもよかったです。テラピー・タクシー、グラン・ブラン、ルカン・シャグラン、アモール・ブリッツなどの新しいグループにも注目していきたいと思っています。
@futsugopon
1967年生まれの日仏通訳・翻訳業。アフリカでの通訳の仕事が一段落したので、現在は語学スクールの開校を画策中。www.proz.com/profile/1317506

nOrikO(POISON GIRL FRIEND)

Charlotte Gaisbourg “Rest”
2006年に発表された、”Air”とのコラボレーションであるシャルロット・ゲンズブールのセカンドアルバム「5.55」はその後10年以上に渡り私の愛聴盤となっておりますが、今年の9月に先行シングルの”Rest”を聴いた瞬間に、今度は見事な”Daft Punk”とのコラボに仕上がっており、アルバムの発売を心待ちにしていました。アルバムとしての「レスト」は、ポール・マッカートニーも曲を提供していることもあり、かなりヴァラエティに飛んだ作品となっていますが、シャルロットの無機質な声がフランス人の若手エレクトロ・プロデューサーDJ SebastiAnとの融合により、一段と磨きがかかっています。また10年聴き続けそうです!
https://youtu.be/DTR3IPJwGcA
Carla Bruni “French Touch”
日本では、サルコジ夫人としての知名度の方が高いのでしょうか。先日私が開催しているクラブイベントで、DJ交替のタイミングで今回のアルバムに入っているディペッシュ・モードのカヴァーである“Enjoy the Silence”を流した瞬間、それまでざわざわしていた会場が一瞬シーンとなり、誰もが彼女の歌声に聞き惚れた。カーラ・ブルーニだよ、と云っても知らない音楽関係者多数。サルコジ夫人というと、納得していただけました。2002年に発表された彼女のファーストアルバム、”Quelqu’un m’a dit”は、フランスではおそらく一家に一枚は普及しているだろうと思われるほど、ロングランのヒット。5年ぶりとなる今作品は、全編英語のカヴァー。ABBAやストーンズの曲も。
https://youtu.be/k4Awxsw4vCc  
Benjamin Biolay “Volver”
誰がなんと言おうとも、どんなに女ったらしで性悪オトコであろうとも、私はずっとバンジャマン・ビオレのファンです。2001年にフランスの音楽番組で耳にして《これは男版POiSON GiRL FRiENDかもしれない!》と、すぐさまファーストアルバムを入手して、どちらかというと好きよりも、彼の才能に嫉妬するほどでした。ピアノもヴァイオリンもトロンボーンも熟す、コンセルヴァトワール出身の彼のマルチプレイヤーぶりにはもちろん足元にも及ばないですが、これほどまでに自分の頭の中にある音世界を具体的に音にしているミュージシャンを私は知らない。キアラ・マストロヤンニと離婚し、カトリーヌ・ドヌーヴによって、一時期フランス音楽業界を干されてしまったという噂もありましたが、今回和解したのか、お二人の美しい声も聴けて嬉しいです。
https://youtu.be/PhlPLDAJ_ao
POiSON GiRL FRiEND→1992年、ビクターよりCDデビュー。2000年から2004年まで、フランスのストラスブールへ渡り、フランスを学ぶ。帰国後の2006年からライヴやDJ活動を再開。そのテクノとフレンチ•ポップスとの融合ともいわれている音世界は20年経っても不変である。本年は、2018年、テクノミュージシャンとのコラボアルバムをリリース予定の中から先行シングル、”Paradise”を配信。

小関ミオ(シンガー)

Orelsan – La fête est finie
初めてパリ行った時、いつかこの人に道端でばったり会ったらなんて話そうか妄想したり、いつかご本人に聴いてもらおうと彼の作品「La terre est ronde」の日本語バージョンをせっせと作ってみたり(今も温め続けてますが笑)、声、リリック、世界観、センス、大大大好きなアーティストOrelsan。今回は2017年待望の新作「La fête est finie」から「Basique」をレコメンドします!世の中全てSimple。的を得た皮肉が心地いいリリックの爽快感。何より、進化を止めないOrelsanのビデオワークがかっこよすぎる1曲です。
youtu.be/2bjk26RwjyU
Julien Dore – 「&〜愛の絆〜」
この人が作品で見せる抜け感と美的感覚が素晴らしく好きです。スター Julien Dore!今年は待望のジャパンデビュー。二度の来日タイミングには、幸運にもインタビューをするチャンスもありました。 かつての日仏音楽シーンの勢いを取り戻すことは不可能かもしれないけど、自分に出来ることはどんどん挑戦していきたいと語ってくれた真っ直ぐな眼差しが心に焼き付いてます。今年5月に発売された「&〜愛の絆〜」から「Sublime & Silence(崇高にして無言)」は MV も崇高。絵コンテや脚本も全て Julien 自身が手がけています。シリアスで悲しい曲も楽しく聴いてほしいんだ。音楽は楽しいものだから。という Julien の MV はフレンチユーモアたっぷりで壮大な映画を見ているよう。すごいなぁ。。好きだなぁ。
https://youtu.be/I38ea3GoHXQ
POOM – My Licorne & Me
つい最近、レコードバーに行った時にふとかかっていたこの曲。あまりにも気だるくて、あまりにもいいムードで、お酒が一気に美味しくなったのは、アルバム「2016」に収録されている POOM の「My Licorne & Me」という曲でした。昔の AIR を彷彿とさせるような、懐かしくて新しい、朝まで目をつぶって踊っていたくなるようなサウンドです。古いシャンソンのカバーもしているセンスも好き!
youtu.be/bHOmV2-EKO0
小関ミオ:幼少からフランス語を勉強し、フランス語で作った最初のデモをきっかけにシンガーとしてのキャリアをスタートさせる。ENVIE 名義で作詞作曲家として多くの詞曲提供を手がける。2016年から活動の場を神戸に移し、神戸路地裏名店ツアーと同時に兵庫県内での100本ライブ《HYOGO 100 LOVE♡LIVE》を展開。現在も精力的にライブ活動を行っている。アルバムに「Je t’aime」「Before Monday」、そして全フランス語詞のアーバンチューン『DANSER DANSER(ダンセダンセ)』を11月に発表。

丸山有美(ライター)

〈きみへのラヴソング〉原題:Idées blanches、ヴィアネ Vianney
9月に行なわれた来日コンサートでは、会場に集まったフランス人の多くが小中学生のお子様連れのファミリー客だったことにびっくり!ギター1本と歌で勝負する潔さ、飾らない人柄が溢れる等身大の歌詞で、フランスのお茶の間の人気歌手であることを遠い渋谷の空の下で証明してくれたヴィアネくんでした。
https://youtu.be/eLYyCFuPCX8
〈Carrément Carrément〉、ザ・ピルエット The Pirouette、2016年
>80年代エレクトロポップが大好物なら、ミレニアル世代のエリ&ジャクノとも呼ばれる仲良しカップル、レオとヴィッキーのデュオにグッとくる向きも少なくないはず!ゆる系スタイリッシュなピコピコサウンドとこぎみよいリズムで繰り出されるフランス語の歌は、肩肘張らない脱力感がクセになる♪
https://youtu.be/JFLNerlWJXw
〈Rest〉、シャルロット・ゲンズブール Charlotte Gainsbourg
父セルジュ・ゲンズブールの死から26年。多くを語ってこなかったシャルロットがようやく父への思いと向き合い、自ら歌詞を書いたことで話題のアルバムは翳りと深い愛に満ちています。タイトルチューン Rest は、心の澱からあらゆる別離の記憶をそっとすくい上げて痛みを癒してくれるような繊細で美しい一曲。
https://youtu.be/DTR3IPJwGcA
丸山有美(まるやま・あみ)
自称フランス便利屋(編集・翻訳・ライター…etc)

粕谷祐己(世界音楽研究家)

Toto Bona Lokua, Bondeko
Bondekoはfraternitéを意味するリンガラ語。この言葉はコンゴのものなのでアルバムもロクア・カンザ中心かというと、そうではないです。2004年にアルバムを出したこのトリオの久しぶりのセカンドアルバムですが、三人の中で一番充実しているのは疑いなくジェラルド・トトです。リシャール・ボナも少し引いてジェラルドを前面に押し出してくれていますね。ジェラルドが1998年に出したソロアルバムLes Premiers Jours(邦題は『はじまりの日々』となってますが、寒い季節が終わって太陽の季節がやってくる、その「最初の陽光」って意味です)は知る人ぞ知る名盤で、そのアコースティック主体の音は今聞いても全く古びていません。ネットのコメントも多くはありませんでしたが「晴れた日曜の朝、ベッドの中で聞いたら最高。ああなんて心地いい・・・」というようなことを書いている人がいて、全く同感だと思ったものです。マルチニク系の彼の音楽はわたしにはジャンル分け不可能です(実は彼はわたしの友人なのですが、あまり自分のことを話さない奴なのです)がBondekoは彼の持ち味が十分に生かされたアルバムです。なおNo Format ! レーベルは50ユーロ出したらその年リリースの全CDを送ってくれる、というのをやっています。良質の音楽を支える試みですね。
BKO Quintet, Mali Foli Coura
2014年にアルバム・デビューしたこの5人組ですが、個人的にはファーストのBamako Todayから、アフリカ音楽が「ワールドミュージック」になるうちに薄められていったもの、つまり暗くてするどい「呪術的なもの」を感じさせられました。内戦状態となったところへ原理主義勢力も入り込んできてめちゃくちゃになってしまった北部マリに住む友人に « Comment ça va ? » と安否を問う声には、「死」との深い関わりをもった原初的な音がふさわしい、ということです。このあたりが「ネオトラディショナル」と呼ばれるゆえんなのでしょう。フランス人メンバーでグループのかなめ、エメリック・クロールはこのセカンド・アルバムに、より普遍性を持たせ、幅の広い音楽性を具体化しています。
Klô Pelgag, L’Etoile Thoracique
「フレンチ系美少女」ニーズというものが常に潜在的に日本のおじさま族の中にあると思うのですが、カナダ・ケベック州出身のクロさんはフランス本国におけるその不在を埋めるひとと期待されたか、今夏の「スキヤキ・ミーツ・ザ・ワールド」を機に日本でも人気爆発です。しかしこのひとの本領は「詩」なのではないでしょうか。日本盤に粕谷とかいうひとによる(汗)歌詞の全訳が付いたファーストアルバム『怪物たちの錬金術』L’Archimie des Monstres でやたら身体性にこだわったクロさんはこのセカンドで彼女の故郷、カナダ・ガスペジー滞在からアンドレ・ブルトンが生みだした『秘法十七番』Arcane 17 に繋がる詩の世界を展開しているのでしょう(クロさん本人は「ブルトンなんて読んでません」と言っているのですが…それが本当だったらそれは単に、ブルトンが『ナジャ』で開いた暗合の世界が現代のわれわれをも巻き込んでいる、ということ)。このアルバムは破格の好条件で録音されているということもあり(彼女は、バックグループのみならず、多くのひとから好感を集めてそれをパワーにしていますね)、音的にはファーストよりずっと豊かになりました。クロさんのCDは大阪・茶屋町のタワーレコードでもバカ売れしたという話をきいています。
粕谷祐己(または雄一。かすや・ゆういち)。フランスの作家スタンダールの研究から始めて世界文学をかいま見、アルジェリア・ポップ「ライ」から始めて世界音楽を渉猟する金沢大学国際学類教員。大学院でご一緒に「ワールドミュージック」研究しませんか?
blog.goo.ne.jp/raidaisuki

サツキ(Small Circle of Friends)

ピエール・バルー Pierre Barouh
限りない宇宙 - ピエール・バルーからの「おくりもの」
“Sur une boule qui roule dans l’infinie ” en hommage à Pierre
2016年12月に亡くなったピエール・バルー。その年は、自信のレーベルSARAVAHレーベルの50周年。そんな時を待っていたかのような出来事は、さらに忘れられない存在になったことは言うまでもなく、2016年に発売されたBar Music 店主セレクトの「Bar Music × SARAVAHPrecious Time for 22:00 Later 発売記念で私自身、DJ でピエール・バルーくくりのセレクトをした事もあいまって、もちろん大 fan だったけれど「こんなに悲しくなるのだ」と思っていた矢先2017年に発売になった、まさにピエール・バルーからの「おくりもの」は、悲しみをも超えるリリースでした。その後、サラヴァ世界地図~ピエール・バルーとの旅  Vol.1「旅人たちの歌」そしてサラヴァ世界地図~ピエール・バルーとの旅  Vol.2「自由への散歩」と発売されます。ピエール・バルーが主宰する、フランスで最も自由で歴史あるインディ・レーベル”サラヴァ”がピエール・バルーを亡くしてもなお生き続ける証のようでした。選曲・解説は牧村憲一さん。もっともピエール・バルーを知り得る日本人だと認識しているけれど、その選曲の私如きが失礼ながらも「そこ、それ!」と小気味良いセレクトに曲順も痺れる一枚です。
Jamila Woods『Heaven』
http://www.jamila-woods.com 2016年。
SoundCloudにてフリーダウンロードでリリースされた本アルバム。その時期がちょうどNoname『Telefone』と同じで、当初はどちらかといえばNonameの方を良く聴いていました。(今思えば、昨年2016年のFBNの年末シリーズにあげていましたね)だけど2017年になって、このアルバムをあらためて聴いていくうち、次第にフィットしていく頃、アナログ発売になり、面白いタイミングでフリーダウンロード音源とアナログを聴き進めることになるのです。フィジカル化にあたって、全体のミックス、マスタリングがやり直されているのはよくある事だけど、曲が進むごとに楽しいようにいくつかの曲ではアレンジが変わっていたり、多分だけどこれレコーディングをやり直した?と思う曲も。どちらが好みかという事よりも、そのバイタリティと熱量が素晴らしく充分伝わってくる。それはここ数年 Chance the Rapper を中心にシカゴの若い才能が次々に現れてくる事に対して感じるのと同様に、Noname、Saba、Smino、RavynLenae、MonteBooker、、。ちょっと興味をもった人たちが皆シカゴだったというおまけもついて、興味はつきません。Jamila Woods の『Heaven』はポジティブで優しい感触を持った素晴らしいアルバム。マスターピース!ちなみに2018年1月23日(火)に Billboard Live Tokyo にて来日公演がある事を添え。あー行きたい。
Samiyam『Pizza Party』
https://www.stonesthrow.com/samiyam
ミシガン州出身、myspace 上で知り合ったフライング・ロータスの言葉で LA に移り住む、今 LA シーンで最も注目される若手プロデューサーの彼。2008年リリースの CD-R 作品『Rap Beats Vol.1』からマイペースに独自の「ビートミュージック」を生み出し続ける Samiyam。特に難しいことはしていないのに、他の人には真似のできない作風は、一聴すると地味にも感じるけど、聴けば聴くほどストップボタンが押せずに繰り返し聴いてしまう..。 特に前作、前々作はサンプリングをメインにしていたけれど、今作はシンセサウンド中心になっていて、2011年のアルバム『Sam Baker’s Album』に近い感触があり、どちらかといえばこちらの方がより好みです。彼の摑みどころのないメロディーセンスが遺憾なく発揮されているように感じてとても愉快。そんな変わらない作風を持つSamiyamですが、今回驚いたのは彼の音の特徴でもあった「音圧の高さ」が無くなっていることでした。聴感上では5dbくらい音量を低く感じる。この変化はおそらくマスタリングを担当した『Jonwayne』の判断、助言によるものと推測します。そのことで「疲れない音」、つまり更にエンドレスにイアフォンを揺らし続けることになるのです。そしてSamiyamが「何をやっているか」がより見えてくることがうれしい。そんな事を想像しながら聴ける音こそさらに興味を引くことになっていくのですね。Samiyam、素晴らしくかっこいいです。
Bar Music 2017 : Portal To Imagine Selection
中村智昭(MUSICAÄNOSSA/Bar Music)
2013年秋に新レーベル「ムジカノッサ・グリプス」をスタートし以来、毎年年末にリリースされるコンピレイションCDシリーズ「Bar Music 2013」から5枚目『Bar Music 2017』。 「年を追うごとに、さらに増す…」と書き始めたいところだけど、もう2013年のシリーズからトップスピードでセレクトされる音は、呆れるほどの SPECIAL が詰め込まれリリースした瞬間から、次は?と興味が湧く。きっとそれは、「世界に溢れるほどの音があって、一生で聴ける音など限られてる。だったら、好きな音だけ聴いて過ごしたい」そう思う願いが叶えられ続けている証だからだと思います。この時代に生きて、同じ時代を聴き過ごす友がこんな側にいることをとても幸せに思う。そんなアルバムです。
http://barmusic-coffee.blogspot.jp/2017/12/bar-musiccd7epbar-music-2017-cd7inch.html
Small Circle of Friends
ムトウサツキとアズマリキの二人組。1993年、united future organizationのレーベル”Brownswood(日本フォノグラム)”よりデビュー。以来、11枚のフル・アルバムをリリース。自身のレーベル「75Records」より2016年、11枚目のCDアルバム『Silence』をリリース。4曲目「サマーソング」は、オランダのpopマエストロ「Benny Sings」をフィーチャー。7インチアナログとして6/21にMUSICAÄNOSSAレーベルより発売しました。そして、待望のSmall Circle of Friendsのインストルメンタルシリーズ『STUDIO75』の4枚目「Over Your Shoulder」を2017年10月25日に発売!代表曲「波よせて」は2017年20thを迎えました。

goyaakod(FBNライター)

Last Train “Weathering”
今年のSummer Sonicにも参戦した、フランスのシンセレス・ギターバンドの一枚目。詰め込まれているのは、今時なかなかお目にかかれない、豪速球のストレートなロック!半世紀近く前のロック・クラシックスの影は見え隠れするものの、ここで鳴っているのは過去への憧れではなくリアルな「今」の音。結成から十数年、場数を踏んだライブバンドでもあり、小さなハコからロックフェスまで音の力だけで聴衆を動かしています。ギミックもシニシズムもなし、ご意見無用でウケることよりひたすらカッコいい音を出すことに執心している四人。実はまだ20代前半なんです…。 ライブの音には、タイトな編成で見境なく飛ばしていた80年代のルー・リードのバンドの音に通じる音圧と緊張感を彷彿とさせるところもあって、個人的にうれしい。あ、全曲英語で歌ってます。
https://youtu.be/i9Obwg2dV_4

わたなべまさのり(ビー・アンクール・ドットコム株式会社)

EXPOSURE (プロジェクト)/Esperanza Spalding
完成したアルバム配送中につき、アルバムのための全作曲/全録音が行われた連続77時間のライブストリーミング映像/音声での評価。
SCHUBERT (アルバム) 及び Portraits de Femme (リサイタル)/Natalie Dessay, Philippe Cassard
カーテンコールが何回か続く中、独りで出て来た Natalie さんを追いかける様に出て来た Cassard 氏の手に大きな花束が。よくある”お定まり”の花束贈呈かと思いきや「共演者が持ってくるのは珍しくない?」と奇妙に思ったのも束の間、花束を手渡すなり間髪いれず再びピアノ椅子に座った Cassard 氏が満場の拍手の最中に演奏開始。ハッピーバースデイ!!なんと、それに合わせて聴衆が歌って!総観客数を考えれば控え目な歌声と言わざるをえませんが、それがかえって自分の耳には(日本では)リアルに聞こえて。”事前に仕込まれた”歌声ではなく。あ、フランス語で歌ってる人が大勢いたようには聞こえなかったですが、まぁそうですよね(笑)。
https://youtu.be/hgJHHX98iwA
The Voyager Golden Record (40th Anniversary Edition)
反則!!(笑)リイッシューでオリジナル未収録の内容は無し。でも一般に入手可能なものとしては初制作なので(笑)。音楽もたっぷり入ってるし(笑)。

exquise(FBNライター)

Amy Winehouseの楽曲
恥ずかしながら、ドキュメンタリー映画 「AMY エイミー」を見るまで、6年も前に亡くなったこの歌手の曲を聴いたことがなかったのだが、今回映画で歌う彼女の姿を見て、アルバムをほとんど買ってしまった。彼女の声は決して品がいいとは言えないけれど、彼女のこれまで経験の生きざまがもろにあらわれた生々しさがあり、誰にもまねできないものだ。
『Imani Vol.1』(Blackalicious)
すごく好きなヒップホップ・デュオなのに、新作が2年前に出ていたのに気づかなかったとは情けない‥ このアルバムは実に10年ぶりに作られたもので、その10年間にMCのギフト・オブ・ギャブは腎臓を悪くして移植手術まで受けていたのだった。けれども本作は、そんなことをみじんも感じさせない力強く、クオリティの高い仕上がりになっていて、聴くたびにこちらがパワーをもらっている。
『Sacred Hearts Club』(Foster the People) 
こちらもひいきのバンドの3作目は、やっぱりポップでツボつきまくりのアルバムだった。キャッチーで楽しい曲の中身はあいかわらず手の込んだつくり。来日公演行きたかったな〜

タチバナ(FBNライター)

Klô Pelgag – Les Animaux
21世紀向けに最適化されたニューウェイブ女性ボーカル物のような味わいのクロ・ペルガグ。10代の頃はプログレバンドGentle Giantのファンだったそうな。そんなご本人がyoutubeにMVをどんどんアップするものだから、映像とともに音楽が味わえるのはよいのだけれども、これはこれでまぎらわしい。粕谷さんもご指摘のとおり、彼女の歌は歌詞がかなり重要。しかしMVは歌にあまり対応していない。むしろシリアスな歌におふざけ映像が重ねられていることもしばしば。クロ・ペルガグは、自曲に、MAD動画をくっつけてしまうユーチューバーだと考えた方がよい。そういうわけで、ひとまず歌詞の対訳とともに彼女の歌を味わっておくと、映像と合わせて2倍楽しめるのである。
https://youtu.be/_2SSBokEDD0
Daiki Tsuneta Millennium Parade – Onibi
ケベックのアーティストがフランス語で歌うのは不思議ではない。しかし日本のアーティストもまたしかりなのだ。米津玄師らの猛プッシュもあって『Tokyo Rendez-Vous』が今年になって一気に注目を集めた感のある常田大希。そんな彼のソロプロジェクトでは、ラッパーのJua(ハワイ生まれの日本/フランス/カメルーンのクオーター)が、フランス語のラップを披露している。本作収録のアルバム『http://』は、ほかにも英語の曲や中国語の曲が混ざっており、今どきの日本の都市風景を切り取ったような趣がある。
https://youtu.be/5w5GlVfv57k
パスワードの人 – 「惡の華」
昨今の若年層はどんな形でフランス文学に触れるのかと考えると、押見修造がかなり貢献していそう。都内で活動するインディーズバンドが今年リリースした本作では、ボードレールの「夕べの諧調」( « Harmonie du soir »)がまるごと朗読されている。さほど“おふらんす”を気取らずに、このくらい自然にフランス語を放り込んで来る感性は面白いのではないかと。とはいえ、彼女らの代表作は今のところ、大天使サリエルを題材にしたMV「sari」の方なのだろう(リンク先参照)。ドビュッシー好きのメンバーもいるらしい。
https://eggs.mu/artist/passnohito/



posted date: 2017/Dec/21 / category: 音楽
cyberbloom

当サイト の管理人。大学でフランス語を教えています。
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